ウェルテルの陰謀 -美少女と美少年(?)に囲まれた俺の運命やいかに?ー

凪子

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第三章

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「私は……私には、援助交際をしている人がいました」

みっともなく震える声は先細りになった。

真啓はまどろっこしい口調を聞きながら、話の続きを予測した。

「相手は高校生でした。関係を持った後、教師であることがばれ、ほどなく私は脅されるようになりました」

予測どおりだった。

最近の高校生は抜け目ない。この程度のおっさんなど、ひとひねりだろう。

「それと、私を拉致したことが何の関係があるんだよ」

軽蔑と嫌悪の念を露わに、公香が鼻を鳴らす。

「それが……その相手の高校生が要求してきたのは、金だけではありませんでした。あなたを拉致し、誘拐して、ラブホテルまで連れてこい、と」

公香の動きがぴたりと止まった。

その表情が傍目にも分かるほど白く変わったのを見て、輝男はひっと声をあげた。

眼を泳がせながら、言い訳がましく言い募る。

「わ、わ、私はと、当然断りました。断りました。だけど、言うことを聞かなければ証拠の写真を学校にばらまき、教育委員会に提出すると言われて、」

情けない。

楓の目がありありとそう言っているのが、真啓にははっきりと分かった。

三上輝男は、見るからにどこにでもいそうな凡庸な中年男だ。日本人の容姿・性格・暮らしぶりなどを完璧に均した
らでき上がるような、ごくごく平凡なおっさんだ。

俺もいつかそうなるのだろうか。

些細な美点はことごとく失われ、悪点ばかりが肥大し、厚かましく老いさらばえていくのだろうか。

凍えそうな非難と侮蔑の視線から少しでも身を避けようとするように、輝男は背中を丸めた。

「本当に……」

輝男はテーブルの上に両手をつき、額をこすりつけるようにして言った。

「本当にすみませんでした。許されることではないと分かっています。でも」

仕方なかった。

そんな心の声が聞こえてくるようで、真啓は胸に不愉快な気持ちが襲い来るのが分かった。

そうやって頭だけ下げて言い逃れしながら生きていくのか、本当の意味で反省も感謝もすることができない人生を。
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