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第三章
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ポケットの中に入っていた紙には、こう書かれてあった。
《新宿のクラブ『凛花』。そこに椎名優という源氏名の女の子がいる。金は僕が先に払ってある。楽しんでおいで》
どうにも解せないのは、あの男がここまで協力的なことだ。
真啓をさらって痛めつけたものの、殺すこともしない。
それどころか、あの誘拐事件の情報を提供している。
一体、何が目的なんだ。
不気味な思いで真啓はクラブへと足を運んだ。
そこは、ドラマなんかで見る、キラキラとした装飾過多な店とは少し違っていた。
赤い絨毯が敷かれ、一つひとつの席が個室のように分離している以外は、ただのバーのようだった。
ご指名はと訊かれ、おっかなびっくり、「椎名優さんを」と答える。
席に案内されると、ヘルプだと名乗る女性が数名ついた。
どの人も美しく、スタイルがよくて、抜群に話がうまかった。
彼女たちいわく、椎名優はこのクラブで一、二を争う売れっ子で、彼女を指名する客は多いらしい。
公香が来たら喜ぶだろうな。
真啓はそんなことを思って、少し笑う。それくらいの余裕がまだあった。
「失礼します」
鈴を振るような声とともに入ってきた、深紅のドレスの『椎名優』と対面する、そのときまでは。
ヘルプの女の子たちを全員下がらせ、二人きりになると、椎名優は真啓の隣に腰かけた。
抜けるような白い肌に深紅のドレス、高く結いあげた髪、きらきら光る爪。
そのどれもが、非日常を思わせると同時に彼女にしっくりと馴染んでいた。
小作りな顔はどこか蟲惑的で、一つひとつのパーツの整った、文句ない美人だった。
それでいて、どこか少女めいたあどけなさも残っている。
だが、真啓が息を呑んだのは、彼女の美しさに気をとられたからではなかった。
「……都築さん?」
彼女が、別人のように華やかであるものの、まぎれもなくクラスメイトだったからだ。
椎名優――都築理紗は、薔薇のようにあでやかに微笑んだ。
《新宿のクラブ『凛花』。そこに椎名優という源氏名の女の子がいる。金は僕が先に払ってある。楽しんでおいで》
どうにも解せないのは、あの男がここまで協力的なことだ。
真啓をさらって痛めつけたものの、殺すこともしない。
それどころか、あの誘拐事件の情報を提供している。
一体、何が目的なんだ。
不気味な思いで真啓はクラブへと足を運んだ。
そこは、ドラマなんかで見る、キラキラとした装飾過多な店とは少し違っていた。
赤い絨毯が敷かれ、一つひとつの席が個室のように分離している以外は、ただのバーのようだった。
ご指名はと訊かれ、おっかなびっくり、「椎名優さんを」と答える。
席に案内されると、ヘルプだと名乗る女性が数名ついた。
どの人も美しく、スタイルがよくて、抜群に話がうまかった。
彼女たちいわく、椎名優はこのクラブで一、二を争う売れっ子で、彼女を指名する客は多いらしい。
公香が来たら喜ぶだろうな。
真啓はそんなことを思って、少し笑う。それくらいの余裕がまだあった。
「失礼します」
鈴を振るような声とともに入ってきた、深紅のドレスの『椎名優』と対面する、そのときまでは。
ヘルプの女の子たちを全員下がらせ、二人きりになると、椎名優は真啓の隣に腰かけた。
抜けるような白い肌に深紅のドレス、高く結いあげた髪、きらきら光る爪。
そのどれもが、非日常を思わせると同時に彼女にしっくりと馴染んでいた。
小作りな顔はどこか蟲惑的で、一つひとつのパーツの整った、文句ない美人だった。
それでいて、どこか少女めいたあどけなさも残っている。
だが、真啓が息を呑んだのは、彼女の美しさに気をとられたからではなかった。
「……都築さん?」
彼女が、別人のように華やかであるものの、まぎれもなくクラスメイトだったからだ。
椎名優――都築理紗は、薔薇のようにあでやかに微笑んだ。
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