ウェルテルの陰謀 -美少女と美少年(?)に囲まれた俺の運命やいかに?ー

凪子

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第三章

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「こんばんは。何飲みます?」

近くにあったグラスに氷を入れると、適当に割ってドリンクを作りだす。

実に手慣れた、美しい所作だった。

俺は悪い夢を見ているのではないか。

ひどい目まいがする。言葉は喉の奥にひっかかって何も出てこない。

そんな真啓を見て、理紗はくすくすと笑い声を立てた。

「やだ、どうしたの?そんなに怖い顔して」

「君が……」

ようやく出てきた声は、ひどく上ずっていた。

「君が公香を誘拐させて、暗示をかけようとしたのか」

「何のお話?」

「とぼけないでくれ」

理紗はわざとらしく身をすくめた。

「有澤君、こわーい。何の証拠があるっていうの?」

まるで別人のようだ。

滲み出る色香と、揺るぎない自信が、そこはかとなく漂ってくる。

「証拠ならあるよ」

真啓は持って来た小型ボイスレコーダーのスイッチを入れた。

『何が目的だ。どうしてあのとき、公香を誘拐した』

『だから言ったろ?優に頼まれたんだよ』

理紗の表情が、かすかに強張った。

真啓は静かにスイッチを切った。

「これが何?優なんて子、いくらでもいるよねー」

そうだ。だからこそ、あの青年も本名ではなく『優』とあえて言ったのだろう。

「聞きたいことがある。君は、都築さんは、公香が好きなのか?」

それなら、パパ活は?あの青年との関係は?俺とのデートは?

真啓は混乱していた。

理紗は真啓を冷酷に見下ろすと、鼻を鳴らした。

「男となんて、金のため以外に寝る気にならないわよ。私が好きなのは、今も昔も公香ちゃんだけよ」

「今も昔もって……」

真啓に構わず、理紗は自分の世界に浸ったまま喋り続ける。

「でもショックだったわ。入学式の日、せっかく同じクラスになれたのに、公香ちゃん私のことちっとも覚えないんだもの。ずっと見てたのに。予備校で一緒になってから、住所も電話番号も調べて、毎日すれ違うように努力してたのに。目があったら、にこってしてくれたことだってあったのに」

疑念が、心の中で確信に変わる。

理紗は、心のバランスを失っている。

真啓は恐れおののいた。
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