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【2】リロケーション
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数分後、亜子はうなだれて、まるで連行される犯人のように自宅へ戻った。
送り届けた律も、何を言っていいか分からず終始無言だった。
その無言を怒りと解釈し、亜子はすすり泣いていた。
紺色ののれんに『江藤寿司』という白い文字が書いてあるのを見て、律は懐かしさに目を細めた。
江藤亜子は、この辺のグルメがこぞって集う寿司屋の一人娘だった。
レトロな引き戸をくぐると、陽気な声が飛んできた。
「いらっしゃい!お、りっちゃんじゃねえか。久しぶりだなあ!」
「お久しぶりです、おじさん」
「何か食ってくかい?……って、亜子?」
律の背後に隠れるように立っていた亜子に気づき、父親は驚いたように身を乗り出した。
「遅いじゃねえか。また寄り道してきたな?」
亜子はうつむいて睫毛を伏せ、涙を払った。
「おじさん。亜子借りていい?」
「おう。何なら、もらってくれてもこっちは一向に構わねえよ」
いつもの冗談に苦笑しながら、律は亜子の背を促すように軽く押した。
送り届けた律も、何を言っていいか分からず終始無言だった。
その無言を怒りと解釈し、亜子はすすり泣いていた。
紺色ののれんに『江藤寿司』という白い文字が書いてあるのを見て、律は懐かしさに目を細めた。
江藤亜子は、この辺のグルメがこぞって集う寿司屋の一人娘だった。
レトロな引き戸をくぐると、陽気な声が飛んできた。
「いらっしゃい!お、りっちゃんじゃねえか。久しぶりだなあ!」
「お久しぶりです、おじさん」
「何か食ってくかい?……って、亜子?」
律の背後に隠れるように立っていた亜子に気づき、父親は驚いたように身を乗り出した。
「遅いじゃねえか。また寄り道してきたな?」
亜子はうつむいて睫毛を伏せ、涙を払った。
「おじさん。亜子借りていい?」
「おう。何なら、もらってくれてもこっちは一向に構わねえよ」
いつもの冗談に苦笑しながら、律は亜子の背を促すように軽く押した。
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