女子高生占い師の事件簿

凪子

文字の大きさ
52 / 138
【2】リロケーション

52

しおりを挟む
「あのなあ……今、よくやってるよな?ストーカーとか、ネット殺人とか。簡単に個人情報は渡すなって、学校でもガンガン言われてるはずだよな?危険だって分かりきってるよな?」

「違うの。そういうんじゃ」

「どうせ、ラインじゃさぞ誠意あるメッセージをもらえたんだろうけど、そんなの嘘だからな?」

「……ごめんなさい」

亜子は肩を落とし、蚊の鳴くような声で言った。

律は腹立ちをまぎらわそうとして息をつき、失敗して小さく舌打ちした。

「とにかく切れ。今すぐラインブロックしろ。警察に相談するのもありだし、もし学校の前に来たら、俺呼べ。すぐ行くから。それから、こんな遅い時間に、制服姿でふらふらうろつくな」

亜子はおずおずと頷いた。

律はたたみかける。

「一つ言っとく。下心のない男はいないんだから、自分の身は自分で守れ。何かあってから泣いても遅いぞ」

「……りっちゃんも?」

律は一瞬目を見開いたが、聞こえなかったふりをして黙殺した。

「晩飯食ってないから、そろそろ帰るわ。じゃあな」

ひらひらと後ろ手に手を振って、部屋を出る。

追いかけてくる亜子の唇が何か言いたげに動いた気がしたけれど、律が立ち止まることはなかった。








翌日のストリートライブは、珍しく調子が悪かった。

サビで比呂の声に重ねてハモるとき、二度も音を外した。我ながら大失態だと律は思った。

もちろん原因は分かっていたが、絶対に認めたくなかった。

「何か気になってる、って顔してる」

マンションへ向かう途中、律と比呂に挟まれて歩きながら、恵果はいたずらっ子のように笑った。

「別に」

律はそっぽを向いたが、恵果は鞄から名刺くらいの大きさの封筒を取り出して、律に手渡した。

「はいこれ。かわいい幼馴染に渡しておいて」

「何で亜子のこと知ってるんだよ?!エスパーかよ、お前」

すっとんきょうな声に、比呂は隣で笑い声を上げる。

「中は見ないでね」

それと、と一呼吸置き、恵果は真顔で付け加えた。

「今後一切、地下に潜っちゃ駄目。エレベーターでも洞窟でもマンホールでも。これは忠告じゃなくて、警告だよ」

星が動いた。何かが変わり始めている。

律が何を尋ねても、恵果は空を見つめたまま、答えようとしなかった。








しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

旧校舎の地下室

守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

中1でEカップって巨乳だから熱く甘く生きたいと思う真理(マリー)と小説家を目指す男子、光(みつ)のラブな日常物語

jun( ̄▽ ̄)ノ
大衆娯楽
 中1でバスト92cmのブラはEカップというマリーと小説家を目指す男子、光の日常ラブ  ★作品はマリーの語り、一人称で進行します。

処理中です...