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【2】リロケーション
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スマホを見た途端、亜子の表情が強張った。
何度も液晶画面と律を見比べ、顔を歪めている。
「どうした?ストーカーからか?」
亜子は喉に何かが詰まったかのように、指を添えた。訴えるような瞳が揺らぐ。
「私……私、行かなきゃならないところができたので、失礼します。来てもらったのに、ごめんなさい」
礼儀正しく頭を下げて、亜子は歩き出した。
律は「おい」と声を上げてその後を追った。
亜子は足取りを速めたが、簡単に追いついて隣に並ぶ。
「どこ行くんだよ、亜子」
「ついてこないでください」
亜子は激しく首を振った。
「そんなわけにいかないだろうが」
一瞬、もう帰ってやろうかと思いさえしたが、どうにか堪えて律は言った。
亜子は例のストーカー男に呼び出されたのだろう。恐らく一人で来い、と言われている。
律のような男が乗り込めば、向こうは面白くないに決まっている。
だからといって、一人でノコノコ餌食になりに行くなんて、馬鹿としか言いようがない。
大体、向こうが正々堂々、一対一で会おうとしているかすら分からないのだ。
亜子に対しても、ストーカーに対しても、律はむしょうに怒りが沸きあがっていた。
「お前さ、分かってる?そんな奴に会いに行って泣きを見ても、自業自得だぞ」
亜子は答えない。男を説得して、どうにかできるとでも思っているのだろうか。
律は呆れ果ててため息をついた。
世間知らずにもほどがある。手の施しようがない。
「……救えないな、っんとに」
何度も液晶画面と律を見比べ、顔を歪めている。
「どうした?ストーカーからか?」
亜子は喉に何かが詰まったかのように、指を添えた。訴えるような瞳が揺らぐ。
「私……私、行かなきゃならないところができたので、失礼します。来てもらったのに、ごめんなさい」
礼儀正しく頭を下げて、亜子は歩き出した。
律は「おい」と声を上げてその後を追った。
亜子は足取りを速めたが、簡単に追いついて隣に並ぶ。
「どこ行くんだよ、亜子」
「ついてこないでください」
亜子は激しく首を振った。
「そんなわけにいかないだろうが」
一瞬、もう帰ってやろうかと思いさえしたが、どうにか堪えて律は言った。
亜子は例のストーカー男に呼び出されたのだろう。恐らく一人で来い、と言われている。
律のような男が乗り込めば、向こうは面白くないに決まっている。
だからといって、一人でノコノコ餌食になりに行くなんて、馬鹿としか言いようがない。
大体、向こうが正々堂々、一対一で会おうとしているかすら分からないのだ。
亜子に対しても、ストーカーに対しても、律はむしょうに怒りが沸きあがっていた。
「お前さ、分かってる?そんな奴に会いに行って泣きを見ても、自業自得だぞ」
亜子は答えない。男を説得して、どうにかできるとでも思っているのだろうか。
律は呆れ果ててため息をついた。
世間知らずにもほどがある。手の施しようがない。
「……救えないな、っんとに」
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