女子高生占い師の事件簿

凪子

文字の大きさ
60 / 138
【2】リロケーション

60

しおりを挟む
ぽたり、ぽたり。

滴る音が、その空間を支配していた。

手のひらから滑り落ちた鮮血が、地面に血溜まりを作っていた。

右手でナイフを、左手でツトムの肩を押さえて、比呂は低い声で言った。

「……ガキがおもちゃ振り回して、いきがってんじゃねえよ」

ツトムはその腕を切り裂こうと力を込めるのだが、完璧に固定されてぴくりとも動かない。

そのまま脳天に強烈な頭突きを食らわされて、地面に倒れ込んだ。

そこへ、黒いスーツの男たちが一斉に入ってきて、ツトムと仲間たちをあっという間にたたきのめし、てきぱきと縛り上げた。

仲間の何人かはナイフを持っていたが、それをものともしない喧嘩の強さだった。

人をどうやったら痛めつけられるのかを知り尽くしている連中だ。律はぼんやり思った。

亜子は目の当たりにした衝撃的光景に、言葉をなくして震えている。

「お怪我は」

「ねえよ。つーかあんたら誰だよ」

寄ってきた黒服にうっかり手当てされそうになって、律は邪険に追い払った。

そして、明らかに黒服たちの主人であろう比呂を見つめる。

「……比呂、お前」

振り向いた比呂は、いつもの飄々とした若者だった。

「あーあ。いい男が台なしだぞ?律」

「それよか、止血しろって!手、見てるこっちが痛ぇよ」

「ああ、うん」

適当に返事をしながら、比呂は腰を抜かしてへたりこんでいる亜子に近づいた。

左手で亜子の手をつかみ、立たせてやる。

「怪我はない?」

亜子は呆然としていたが、何とか頷いた。

首筋の傷は先ほど黒服が手当てしてくれたが、軽いものだった。

亜子の様子をとっくりと見て、比呂は笑顔をひらめかせた。

「よかった。律、どうせ渡してないんだろ。恵果からのメッセージ」

律は最初言っている意味が分からなかったが、ようやく「あ」と声を上げた。すっかり忘れていた。

ポケットを探ると、くしゃくしゃになったカード型封筒が出てきた。

律からそれを受け取った比呂は、亜子に手渡した。

「この中に、カフェの名前と場所が書いてある紙が入っている。そこへ行きな。ここから、そう遠くないから」

疑念を隠せない硬い表情の亜子に、比呂は安心させるように笑った。

「恵果が、君を占いたいってさ」
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

旧校舎の地下室

守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

中1でEカップって巨乳だから熱く甘く生きたいと思う真理(マリー)と小説家を目指す男子、光(みつ)のラブな日常物語

jun( ̄▽ ̄)ノ
大衆娯楽
 中1でバスト92cmのブラはEカップというマリーと小説家を目指す男子、光の日常ラブ  ★作品はマリーの語り、一人称で進行します。

処理中です...