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【2】リロケーション
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亜子が去った後、比呂と律はツトムらの処置について話していた。
警察がくると面倒なことになる。何より、亜子を巻き込みたくない。
そんな律の思いを汲んで、比呂はこの件を公にしないことを決めた。
「まあ、いつだって訴えられるしね。傷害事件で」
ツトムを見下ろして、高らかに比呂は言った。当然、証拠を押さえているのだろう。
「今後、一度でも律や亜子ちゃんの前をうろついてみろ。どうなるか分かってるな?」
言われなくとも、もうツトムは律の前に姿を現す気はなさそうだった。
さっき、どこかへ連れていかれていたが、きっと黒服らにひどい目に遭わされたのだろう。
黒服たちに半ば無理やり手当てを受けていた律は、見なくてよかったと心底思った。
「そんな様子じゃお前、あの女のことを分かってないみたいだな」
ツトムの挑発に、比呂は「ほう」と感心した声を上げた。
「まだそんな口が聞けるとはね。お仕置きが足りなかったかな」
またそぞろ黒服が進み出てきたので、律はそれを手で制した。
「もういいよ」
「律」
「いいって」
同情とか、憐憫ではない。ただ律は、これ以上禍根を残したくなかった。
何を言っても、どれほど痛めつけても、今のツトムを凝り固まった怒りから解放することにはならない。
やるせなさに、律は瞑目した。
「お前ら、いつかあの女に足元すくわれるぜ。純情ぶってるが、あいつは」
比呂がツトムの手を踏みつけた。ツトムが「ぎゃっ」と声をあげてのた打ち回る。
「これ以上、汚い言葉で俺らの耳を汚すな。殺すよ?」
比呂は酷薄に目を細め、そのまま踵を返して歩き出した。
律は後を追う前に、一瞬だけ振り返った。
ツトムの恨めしげな目を見つめ、思わず言葉が口をつく。
「俺は」
お前のこと、友達だと思ってた。お前の書いた詞を読んでみたかった。
言葉にすれば、何もかもが嘘っぽく響くだろうと、思った。
だから律は、口をつぐんで歩き出す。
あらゆる思いを自分の中に封じて。
警察がくると面倒なことになる。何より、亜子を巻き込みたくない。
そんな律の思いを汲んで、比呂はこの件を公にしないことを決めた。
「まあ、いつだって訴えられるしね。傷害事件で」
ツトムを見下ろして、高らかに比呂は言った。当然、証拠を押さえているのだろう。
「今後、一度でも律や亜子ちゃんの前をうろついてみろ。どうなるか分かってるな?」
言われなくとも、もうツトムは律の前に姿を現す気はなさそうだった。
さっき、どこかへ連れていかれていたが、きっと黒服らにひどい目に遭わされたのだろう。
黒服たちに半ば無理やり手当てを受けていた律は、見なくてよかったと心底思った。
「そんな様子じゃお前、あの女のことを分かってないみたいだな」
ツトムの挑発に、比呂は「ほう」と感心した声を上げた。
「まだそんな口が聞けるとはね。お仕置きが足りなかったかな」
またそぞろ黒服が進み出てきたので、律はそれを手で制した。
「もういいよ」
「律」
「いいって」
同情とか、憐憫ではない。ただ律は、これ以上禍根を残したくなかった。
何を言っても、どれほど痛めつけても、今のツトムを凝り固まった怒りから解放することにはならない。
やるせなさに、律は瞑目した。
「お前ら、いつかあの女に足元すくわれるぜ。純情ぶってるが、あいつは」
比呂がツトムの手を踏みつけた。ツトムが「ぎゃっ」と声をあげてのた打ち回る。
「これ以上、汚い言葉で俺らの耳を汚すな。殺すよ?」
比呂は酷薄に目を細め、そのまま踵を返して歩き出した。
律は後を追う前に、一瞬だけ振り返った。
ツトムの恨めしげな目を見つめ、思わず言葉が口をつく。
「俺は」
お前のこと、友達だと思ってた。お前の書いた詞を読んでみたかった。
言葉にすれば、何もかもが嘘っぽく響くだろうと、思った。
だから律は、口をつぐんで歩き出す。
あらゆる思いを自分の中に封じて。
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