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【3】ホラリー
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恵果は怒っているだろうか。
清隆が去って、二人きりになっても、律はしばらく何も言えなかった。
ホロスコープに向かって黙々と作業をする、その背中を見つめる。
今までこの女は、こうやって何人もの人の話を聞き、助言を与え導いてやったのだろう。
これからもずっと、人生という果てしなく遠大な時間を、全て費やすつもりなのだろう。
恵果が高校へ行っていないのは、多分そういう理由だ。自分の才能を、最も効果的な方法に使うため。
だが――律は考えかけて目を閉じ、思考を追い払った。自分には関係のないことだ。
「なあ、恵果」
「何?りっちゃん」
応じた声はいつもの恵果のもので、律は安堵してわざと荒い口調になる。
「仁科めぐみも結婚の相談に来たんじゃねえだろうな?」
「守秘義務がありますので」
すました顔だが、目が笑っている。
さっさとホロスコープを仕上げる。律が占ってもらったときより随分速い。
「占いってその場で言ってやるもんじゃねえの?」
「時間を置いたほうがいいということもあるのよ」
「俺、あいつ気に食わない」
「そう?私はいい人だと思ったけど」
「あれは優柔不断って言うんだよ。大体、他人に結婚の相談するか?相談している時点で、迷ってる証拠じゃん。
そういうのって、人に言われたからするもんじゃねーだろ」
「あら、結婚にロマンを抱いている男がまた一人」
恵果はくすくす笑って、自分のオレンジジュースを注いだ。
「そうでもないと思うよ。昔は、親が決めた相手と結婚するのが普通だったしね」
「……いつの時代の人間だよ、お前」
律は肩をすくめた。
清隆が去って、二人きりになっても、律はしばらく何も言えなかった。
ホロスコープに向かって黙々と作業をする、その背中を見つめる。
今までこの女は、こうやって何人もの人の話を聞き、助言を与え導いてやったのだろう。
これからもずっと、人生という果てしなく遠大な時間を、全て費やすつもりなのだろう。
恵果が高校へ行っていないのは、多分そういう理由だ。自分の才能を、最も効果的な方法に使うため。
だが――律は考えかけて目を閉じ、思考を追い払った。自分には関係のないことだ。
「なあ、恵果」
「何?りっちゃん」
応じた声はいつもの恵果のもので、律は安堵してわざと荒い口調になる。
「仁科めぐみも結婚の相談に来たんじゃねえだろうな?」
「守秘義務がありますので」
すました顔だが、目が笑っている。
さっさとホロスコープを仕上げる。律が占ってもらったときより随分速い。
「占いってその場で言ってやるもんじゃねえの?」
「時間を置いたほうがいいということもあるのよ」
「俺、あいつ気に食わない」
「そう?私はいい人だと思ったけど」
「あれは優柔不断って言うんだよ。大体、他人に結婚の相談するか?相談している時点で、迷ってる証拠じゃん。
そういうのって、人に言われたからするもんじゃねーだろ」
「あら、結婚にロマンを抱いている男がまた一人」
恵果はくすくす笑って、自分のオレンジジュースを注いだ。
「そうでもないと思うよ。昔は、親が決めた相手と結婚するのが普通だったしね」
「……いつの時代の人間だよ、お前」
律は肩をすくめた。
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