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【3】ホラリー
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コンビニに寄ったのは偶然だった。
作詞に疲れて頭がぼうっとしていたから、烏龍茶と適当な弁当を買って、家路につこうとしていたのだった。
コンビニの入り口で、勢いよく飛び出してきた子供にぶつかられたのは、そのときだった。
「痛っ」
学ランを着た少年だった。変声期を迎えたのか、不自然にかすれた声をしている。
「うぉっと。大丈夫か?」
覗き込むと、少年はなぜか眦を吊り上げ、そのままぷいと走り去っていこうとした。
握られた拳とわずかに膨らんだポケット、そして手ぶらであるという事実を一目で読み取って、律は少年の後を追い、肩をつかんで引き止めた。
「何すんだよ、離せよ!」
少年の手から、ぼろぼろと小さなチョコレートがこぼれ落ちた。律は眉をひそめた。
「……やっぱりな」
どうして放っておけないのだろうか、と思う。律も年少者に対する自分のお節介さは自覚していた。
少年は怒りに燃えた目で律をにらむ。
その視線を涼しく受け流しながら、律は言った。
「万引きするなら、もうちょっとうまくやるんだな」
「余計なお世話だよ!バーカ!」
少年は渾身の力を込めて律を突き飛ばした。不意打ちを食らって、律は尻もちをつく。
その隙に少年は駆けていってしまった。
舌打ちし、ぱんぱんと腰を払って立ち上がる。
そのとき、道路を挟んだ通りの向こうを見てぎょっとした。
オフタイムなのか、スーツではなく、デニム姿の仁科めぐみがそこにいた。
髪型と服装を変えたくらいでは、彼女の強烈な個性は隠しきれない。
そして、めぐみは妙にきょろきょろし、物陰に身を隠していた。
ストーカーにでも追っかけられているのだろうか。
――いや、彼女ならたとえファンでも、迷惑なら切って捨てるだけの容赦なさを持っているはずだ。
怪訝に思った律は通りを少し歩き、場所を変えた。そして仰天した。
――おいおい、マジかよ?!
めぐみの視線の先には、清隆と、彼に寄り添う別の女性がいた。
作詞に疲れて頭がぼうっとしていたから、烏龍茶と適当な弁当を買って、家路につこうとしていたのだった。
コンビニの入り口で、勢いよく飛び出してきた子供にぶつかられたのは、そのときだった。
「痛っ」
学ランを着た少年だった。変声期を迎えたのか、不自然にかすれた声をしている。
「うぉっと。大丈夫か?」
覗き込むと、少年はなぜか眦を吊り上げ、そのままぷいと走り去っていこうとした。
握られた拳とわずかに膨らんだポケット、そして手ぶらであるという事実を一目で読み取って、律は少年の後を追い、肩をつかんで引き止めた。
「何すんだよ、離せよ!」
少年の手から、ぼろぼろと小さなチョコレートがこぼれ落ちた。律は眉をひそめた。
「……やっぱりな」
どうして放っておけないのだろうか、と思う。律も年少者に対する自分のお節介さは自覚していた。
少年は怒りに燃えた目で律をにらむ。
その視線を涼しく受け流しながら、律は言った。
「万引きするなら、もうちょっとうまくやるんだな」
「余計なお世話だよ!バーカ!」
少年は渾身の力を込めて律を突き飛ばした。不意打ちを食らって、律は尻もちをつく。
その隙に少年は駆けていってしまった。
舌打ちし、ぱんぱんと腰を払って立ち上がる。
そのとき、道路を挟んだ通りの向こうを見てぎょっとした。
オフタイムなのか、スーツではなく、デニム姿の仁科めぐみがそこにいた。
髪型と服装を変えたくらいでは、彼女の強烈な個性は隠しきれない。
そして、めぐみは妙にきょろきょろし、物陰に身を隠していた。
ストーカーにでも追っかけられているのだろうか。
――いや、彼女ならたとえファンでも、迷惑なら切って捨てるだけの容赦なさを持っているはずだ。
怪訝に思った律は通りを少し歩き、場所を変えた。そして仰天した。
――おいおい、マジかよ?!
めぐみの視線の先には、清隆と、彼に寄り添う別の女性がいた。
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