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【3】ホラリー
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やがて口火を切ったのは、やはり恵果だった。
「めぐみさん。あなたが欲しいものは、今は手に入りません。でも、すぐそこまでやって来ています」
顔を上げためぐみに、恵果は微笑みかけた。
「聞こえませんか?」
そのとき、ドアが勢いよく開いた。
飛び込んできたのは清隆一人だった。寄り添う女はいない。
今度こそ律は心臓が止まるかと思った。
「めぐみ」
「清隆さん。あなた、デートの最中だったんじゃ」
「デート?」
清隆は心底訳がわからない、という顔をした。
これが演技だったらオスカー賞ものだ。律は思った。
「ああ……区役所へね。今、離婚届の判を押してきた」
めぐみが息を呑んだ。まるで少女のように頬を染める。
昼ドラの次は少女マンガか、と律はうんざりした。
呆然と立ちすくんでいるめぐみを抱きすくめ、清隆は笑った。
「大丈夫。慰謝料が貯まったんだ。妻は何の文句も言わずに別れてくれた」
めぐみが震え、涙ぐむのが分かった。
「彼女は不妊症でね。そのことが発覚してからは、ずっと自分を責めていた。彼女は子供が欲しくて、養子が取りたいと言ったんだが、僕は反対して、口を開けば喧嘩ばかりしていてね。お互い辛かったんだ。
だけど、離婚して、改めて慰謝料で養子を引き取って育てると言って、ようやく別れてくれた」
身体を離すと、二人は手をつないだ。
めぐみはいつもの威勢のよさを取り戻し、涙に濡れた顔で笑った。
「恵果さん。私たち、あなたの占いを乗り越えてみせます」
必ず幸せな家庭を築いてみせる。
不倫の末の二度目の結婚でも、大凶でも、誰に反対されても、行く先々で困難が待ち受けていようとも。
覚悟を秘めた二人の顔を見て、律は思った。
そこまで言うなら仕方ないかもな。呆れて物も言えないバカップルぶりだが。
恵果は何も答えなかった。
ただ微笑んだまま、二人の背中を見送った。
「めぐみさん。あなたが欲しいものは、今は手に入りません。でも、すぐそこまでやって来ています」
顔を上げためぐみに、恵果は微笑みかけた。
「聞こえませんか?」
そのとき、ドアが勢いよく開いた。
飛び込んできたのは清隆一人だった。寄り添う女はいない。
今度こそ律は心臓が止まるかと思った。
「めぐみ」
「清隆さん。あなた、デートの最中だったんじゃ」
「デート?」
清隆は心底訳がわからない、という顔をした。
これが演技だったらオスカー賞ものだ。律は思った。
「ああ……区役所へね。今、離婚届の判を押してきた」
めぐみが息を呑んだ。まるで少女のように頬を染める。
昼ドラの次は少女マンガか、と律はうんざりした。
呆然と立ちすくんでいるめぐみを抱きすくめ、清隆は笑った。
「大丈夫。慰謝料が貯まったんだ。妻は何の文句も言わずに別れてくれた」
めぐみが震え、涙ぐむのが分かった。
「彼女は不妊症でね。そのことが発覚してからは、ずっと自分を責めていた。彼女は子供が欲しくて、養子が取りたいと言ったんだが、僕は反対して、口を開けば喧嘩ばかりしていてね。お互い辛かったんだ。
だけど、離婚して、改めて慰謝料で養子を引き取って育てると言って、ようやく別れてくれた」
身体を離すと、二人は手をつないだ。
めぐみはいつもの威勢のよさを取り戻し、涙に濡れた顔で笑った。
「恵果さん。私たち、あなたの占いを乗り越えてみせます」
必ず幸せな家庭を築いてみせる。
不倫の末の二度目の結婚でも、大凶でも、誰に反対されても、行く先々で困難が待ち受けていようとも。
覚悟を秘めた二人の顔を見て、律は思った。
そこまで言うなら仕方ないかもな。呆れて物も言えないバカップルぶりだが。
恵果は何も答えなかった。
ただ微笑んだまま、二人の背中を見送った。
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