女子高生占い師の事件簿

【３】ホラリー

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「嵐が去った……」

二人が帰った後、律が呟いた言葉に比呂は爆笑した。

「確かに。あの市井って人も、よくめぐみと結婚しようと思ったね」

「俺らじゃ絶対手に負えないよな」

ある意味、恵果よりも厄介な相手だ。律は思った。

恵果がそれを読んだようにシャーペンを持ち上げたので、律は無条件降伏した。

窓の外を見れば、連れ立って歩く幸せそうな人々がいる。

あの中に、本物の笑顔を浮かべている者は何人いるのだろうか。

「これからが大変だね、あの二人も」

比呂は優雅な手つきでコーヒーにミルクを混ぜながら、目を細めた。

「大スキャンダルだものね」

恵果もそれには同意する。

これから彼らがどれほどSNSやマスコミに騒がれ叩かれ、吊るし上げられるか。

美蘭の例も知っている比呂にとっては、考えるだに恐ろしいことだった。

――まあ、どうなろうと、こちらの与り知るところではないが。

恵果のシャーペン攻撃を承知で、律はからかった。

「そういや、お前の占い、外れることもあるんだな」

「まだ外れたかどうかは分からないよ」

比呂が軽くたしなめた。

恵果は立ち上がって窓の縁をつかみ、遠い目をする。

「当たり外れと思っている限りは、占いを本当の意味でうまく役立てたことにはならないよ。りっちゃん」

開け放った窓から一陣の風が流れ込む。恵果の髪が光を浴びて輝く。

空気はもう、秋の訪れを報せるように涼しい。

「りっちゃんも言ってたでしょ？結婚は、誰かから言われてするものじゃないって」

「ふうん……」

律は納得したようなしないような声で呟いて机に頭を乗せ、数秒後、がばっと顔を上げた。

「まさかお前、こうなることまで分かってて発破かけたのか？」

わざと悪い占い結果を示し、清隆とめぐみの絆の強さを確かめさせたとしたら――。

律はぞっとして恵果を見つめる。

恵果は二人の去った方向を見つめ、祈るように言った。

「……お幸せに」