女子高生占い師の事件簿

【４】トランジット

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「ん？亜子じゃねーか。どうした？」

奥の席に座っていた律が、亜子を見つけて言った。

亜子はほっとしたように口の端を緩ませた。

だが、その向かいに座る若者を見て、ぎょっとする。

「こんにちは。亜子ちゃん」

比呂は亜子の動揺に気づいた様子もなく、人懐っこい笑顔を向けた。

亜子はぎこちなく頷くと、彼らと離れたカウンター席に腰かけた。

「ご注文は何にします？」

恵果の叔母である店主が、屈託のない笑顔で尋ねてくる。

「チョコレートパフェをお願いします」

「はい、かしこまりました」

店主は、手際よくバナナを切ったりクリームを入れたりと忙しそうだ。

「あの」

「はい？」

「今日は恵果さんはいらっしゃいませんか？」

「ああー、ごめんなさいね。恵果は今日、出前に行ってるのよ」

「出前？」

「出前っていうのは出張の占いのことだよ」

いつの間にか隣に立っていた比呂に説明されて、亜子はのけぞった。

その様子を見て、律は怪訝な顔をし、比呂はおかしそうに笑った。

亜子は、比呂が苦手だった。

人見知りだからとか、直接嫌な態度を取られたからではない。

理由もなく、ただ遠ざかりたいと思ってしまうのだ。

いや――本当は、理由はある。ただ、うまく言葉にできないだけで。