女子高生占い師の事件簿

【４】トランジット

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「何で恵果が……単なる占い師が、官房長官なんかとつながりがあるんだ？」

律は額に手を当てて呟いた。あいつは一体何者なんだ？

「俺は別に驚かないよ。むしろ、社会を動かすような大物が恵果を必要とするのは当然とも言える」

比呂の言葉に、亜子がむっと唇を引き結ぶ。

「……あいつ、これから一生、恋愛も結婚もしないで占い師続けるのかな」

恵果が普通の女子高生と一番違う点は、そこだった。

律は恵果が『好きな人』を作って恋焦がれたり、『お付き合い』して結婚するような未来を、どうしても思い描けないのだった。

「どうかな。女の子の恋愛観は、両親との関係にも影響されるって聞いたことがあるけど」

何気ない比呂の言葉に、律は淀んだ思考を働かせた。

そういえば、恵果が今まで両親について語ったのを聞いたことがない――。

その瞬間、亜子が、ばんと机を叩きつけた。

「あなたに恵果さんの何が分かるんです」

その声は律が肝を冷やすくらい、冷たい声だった。

「君よりは知ってるつもりなんだけどな、少なくとも」

亜子がさらに何か言い募ろうとするのを見て、律は反射的にその口を押さえた。

「やめろって。何、急に怒ってんだよ」

野生の猫のように暴れる亜子を見て、律は首を傾げた。様子が変だ。

「出ていってください。りっちゃんと、恵果さんの前に姿を現さないで」

「亜子！」

比呂は苦笑して、三人分の伝票を手に立ち上がった。

「やれやれ。随分嫌われたな」

「悪い。こいつ変なんだ。いつもはこんなんじゃなくて、こっちがイライラするぐらい大人しいんだけど……」

律はしどろもどろに謝ると、比呂は手を振った。

「どっちにしろ、今日は用事があるから。そろそろ行くよ」

嘘だと律は直感したが、引き止めれば不愉快な思いをさせるに違いない。

隣を見ると、亜子は自分から言っておいて、ひどく傷ついた顔をしていた。

「比呂。ごめんな」

立ち上がって頭を下げる。

比呂は振り返ると、軽く片手を上げた。

「じゃあ、また」