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【4】トランジット
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「まあ座ってよ。確かに、僕が悪かった。非礼の数々はお詫びのしようもない。本当に申し訳なかった」
深々と頭を下げるのを、恵果は鼻であしらった。
ついでに、目の前の男の容姿を観察する。
年は二十代半ば。恐らく、比呂とそう変わらないだろう。
センスのいいスーツに身を包んでいる、ごく普通のサラリーマンだ。
全く人見知りをしないところや、口がなめらかなところを見ても、営業かクレーム対応あたりの部署の人間と考えるのが妥当か。
顔の造作は悪くないが、いい意味でも悪い意味でも『どこにでもいる』感じの若者なので、初対面でかえって安心感を抱く人も多いだろう。
産業スパイにも向いているかもしれない。
恵果があれこれと考えをめぐらせていると、男は自分の胸に軽く手を当てて言った。
「俺は津本恭平。今日は君にとっていい話を持ってきたんだ。聞いて損はないと思う」
「聞かなきゃ帰してくれないんでしょう。さっさとしてくださいな」
恵果は周りにいる男たちを鬱陶しそうににらみつけたまま、氷のような笑顔で言った。
「上がってきたデータと、ちょっと違うな。君はもう少し賢明だと思ってた」
津本恭平は多少失望したように言った。いや、それすら演技かもしれない。
「人質をとるようなやり方をする人に、どう評価されようと関係ないわね」
男はアメリカンコーヒーのお代わりを頼んだ。
恵果は勝手にローズヒップティーとサンドウィッチを注文する。
昼食をきちんと食べておらず、腹の虫が大合唱していた。
「君に話というのはね、恵果ちゃん。ある組織――つまり、企業だな。そこの専属占星術師になってもらいたいんだ」
恵果は眉一つ動かさなかった。
「そろそろ来るころだと思ってたわ」
深々と頭を下げるのを、恵果は鼻であしらった。
ついでに、目の前の男の容姿を観察する。
年は二十代半ば。恐らく、比呂とそう変わらないだろう。
センスのいいスーツに身を包んでいる、ごく普通のサラリーマンだ。
全く人見知りをしないところや、口がなめらかなところを見ても、営業かクレーム対応あたりの部署の人間と考えるのが妥当か。
顔の造作は悪くないが、いい意味でも悪い意味でも『どこにでもいる』感じの若者なので、初対面でかえって安心感を抱く人も多いだろう。
産業スパイにも向いているかもしれない。
恵果があれこれと考えをめぐらせていると、男は自分の胸に軽く手を当てて言った。
「俺は津本恭平。今日は君にとっていい話を持ってきたんだ。聞いて損はないと思う」
「聞かなきゃ帰してくれないんでしょう。さっさとしてくださいな」
恵果は周りにいる男たちを鬱陶しそうににらみつけたまま、氷のような笑顔で言った。
「上がってきたデータと、ちょっと違うな。君はもう少し賢明だと思ってた」
津本恭平は多少失望したように言った。いや、それすら演技かもしれない。
「人質をとるようなやり方をする人に、どう評価されようと関係ないわね」
男はアメリカンコーヒーのお代わりを頼んだ。
恵果は勝手にローズヒップティーとサンドウィッチを注文する。
昼食をきちんと食べておらず、腹の虫が大合唱していた。
「君に話というのはね、恵果ちゃん。ある組織――つまり、企業だな。そこの専属占星術師になってもらいたいんだ」
恵果は眉一つ動かさなかった。
「そろそろ来るころだと思ってたわ」
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