女子高生占い師の事件簿

【４】トランジット

97

通りを曲がった恵果を待ち伏せしていたのは、黒塗りの高級車と、不穏な気配を身にまとった男たちだった。

「佐伯恵果様。ご同行をお願いできますか」

尋ねる言葉こそ依頼を装ってはいるが、その口調と、肩をがっちりと掴んだ腕は容赦のないものだった。

恵果は痛みに顔をしかめた。

「おとなしく車に乗っていただければ、手荒な真似はいたしません。あなたにも、あの喫茶店の店主とお嬢さんにも」

脳裏に叔母のみどりと従妹の加奈子の顔がよぎって、恵果は唇を噛んだ。

「手荒な真似はしないというのなら、放しなさい。私は逃げたりしない」

恵果は堂々と言い放った。

その覇気は、大の男が気圧されるほどだった。

恵果は怯えることなく車に乗り込み、そのまま都内のあるホテルまで向かった。

男たちがぞろぞろと周りを取り囲む中で、恵果はロビーに入った。

そこで優雅にコーヒーを口にしていた男が、立ち上がって破願した。

「君が佐伯恵果？うわあ、思ってたより随分かわいいね」

誉めそやす言葉に耳もくれず、恵果は男の元へずかずかと近寄り、左頬にビンタを食らわせた。

ぱしん、という景気のいい音がロビーに響き、一斉に視線が注がれる。

周囲の反応をものともせず、恵果は凛と言い放った。

「まず、無礼な方法でここへ招待したことを謝りなさい。客人に対する礼儀もわきまえていない人と話すなんて、時間の無駄よ」

男はきょとんとした顔で頬をこすっていたが、やがて吹き出し、けらけらと笑い出した。

恵果はにこりともせず、冷徹な態度を崩さなかった。

腕組みをしたたま、侮蔑の視線を男に向ける。