女子高生占い師の事件簿

【４】トランジット

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「お前らは皆、目先の利益をむさぼることに夢中になって、足元に何があるかも見えていない人種だな。
その驕りが致命的になって、いつか足元をすくわれる日が来るぞ」

静は真正面から比呂の視線を受け止め、不敵に笑った。

――この思わぬ伏兵の存在に、父や叔父たちが気づくのはかなり先になるだろう。

そして、気づいたときには恐らく、もう手遅れだ。

比呂は思った。

――だから、この男はいずれ自分の手で潰さなければならない。

「藤森に恨みを持つ企業を味方につけようとしてるなら、無駄だよ。そんなものは存在しない」

比呂の柔らかな忠告に、静は「ほう」と感心したような馬鹿にしたような声を上げた。

「自社に恨みを持つ企業が一つもないと？大した自信だな」

「少なくとも、企業としての実体を保ててはいないだろうからね。藤森に逆らった会社は跡形もなく潰され、解体されている」

静は納得したようだったが、さして臆しても怯んでもいなかった。

「お前らならやりかねないな」

どれほどの大企業に挑んでいるのか、静は知っている。

だからこそ、大学で経営学を選び、自らも起業し、脇目もふらず邁進している。

戦うための、知識と技術を身につけるために。

「つくづく面白いね、君たち兄妹は」

玄関口で、比呂は靴を履きながら、静の背中に呼びかけた。

「また来るよ」

「一生来るな」

静は害虫を駆除でもするかのように、比呂をしっしっと追い払った。

「俺はお前みたいに、物しか与えてもらえなかった奴とは違う」

比呂は憫笑した。

「つくづく救えない男だね、君も」