女子高生占い師の事件簿

【５】イベントチャート

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「お取り込み中ごめんなさい」

軽やかな声に、二人は振り向いた。

曖昧な笑みを浮かべた恵果が優雅に歩いてくるところだった。

我に返った理人は、慌てて加奈子の肩から手を離した。

「これを、あなたに渡そうと思ってね。理人君」

恵果が差し出したのは、星の形をしたストラップだった。

「お守り。ずっと守ってくれるように」

「……要らない」

理人はそっぽを向き、ばつの悪そうな顔をした。

「確かに、担任があなたに吐いた暴言は許されるものじゃないわ」

加奈子がぎょっと顔を上げた。

「やっぱり、伯父さんのことも知ってるんだな」

理人は肩をすくめ、観念したように言った。

説明を求めた加奈子の視線に気づいて、仕方なさそうに続ける。

「吉崎孝治よしざき・こうじっているだろ。こないだ医療過誤で起訴された医者。俺はその甥」

親指で自分の胸を指さす。

「吉崎。吉崎……あっ！」

加奈子は口元を手で押さえた。

たしか、以前に恵果が占った、仁科めぐみという弁護士が医療過誤で訴えを起こしていたはずだ。

「死んだ母親の兄が医者をしているのは知ってたけど、そんな有名人だとは知らなかった。俺も医者を目指してたから、伯父が起訴されたって聞いたときはそれなりにショックだった。
担任はそれを知ってて、母さんと伯父さんと俺を侮辱する暴言を吐いた。
これが反抗の理由。気はすんだか？」

理人は、加奈子と恵果に向かって傲然と言い放った。

その震える右手に、恵果はストラップを握らせた。

「大丈夫。あなたはきっと、いいお医者さんになれる」

「……別に、伯父さんの恨みを晴らすために医者になるんじゃない」

理人はうつむいて言うと、踵を返して歩き去る。

恵果は理人と、それを追う加奈子を見送りながら思った。

これから理人が進む道は険しいものとなる。

だが彼はきっと、あらゆる試練をくぐり抜け、やがて夢をその手に掴むだろう。

それは占いではなく、予感であり、祈りだった。