女子高生占い師の事件簿

凪子

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【5】イベントチャート

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夕刻鳴ったチャイムの音が、恵果に突きつけられた最後通牒だった。

「俺も行く。お前一人に背負わせるわけにはいかない」

静は、そう言って聞かなかった。

けれど恵果は、それを穏やかに拒んだ。

「大丈夫よ。私一人で十分」

「でも」

引き下がろうとしない静を手で制し、恵果は微笑んだ。

「どちらかはここに留まるべきよ。分かってるでしょ?」

静は抗うように口を開いたが、やがて力なく頷いた。

「向こうは私をご所望のようだし。じゃあ、行ってきます」

恵果は手を振って靴を履き、玄関を開け放った。

「お迎えに参りました、お姫様。ご同行願えますか?」

比呂はおどけた調子で言い、右手を体の前で横に添わせ、優雅に一礼した。

普通のサラリーマンが着るようなものとは桁違いのスーツを着こなし、何百万円もするような腕時計をはめ、上質な革の靴を履き、高貴な香りを漂わせている。

恵果が今まで見たことがないような出で立ちだったが、そんな格好がよく似合っていた。

「できれば、ここで話したいんだけど……言っても、無駄みたいだね」

もうすっかり見慣れた黒服集団を視界に捉え、恵果はうんざりと肩をすくめた。

比呂はにこやかだが、どこか事務的な口調で言った。

「藤森龍之介は君と直に話すために、万端の準備を整えてるみたいだからね。ここへ足を運ぶのはちょっと無理だと思うな」

「人質を取るのが『準備万端』のやり方なのかしら」

恵果は冷ややかに言った。

今まで比呂に対して、そんな口を利いたことはなかった。

比呂は多少決まり悪そうな表情をして見せた。

「亜子ちゃんのこと?俺はやめとけって言ったんだけどね。ただ、恵果が友達を作ったことに関しては、意外だと言わざるを得ないな。君が必要以上に他人と関わらないのは、こういう事態に巻き込まないためだろうに」

「やっぱり亜子ちゃんか。そんなことだろうと思ったわ。二度同じ手を使うなんて、芸のない人」

恵果は眉を寄せて早口に言った。

「人質なんて取らなくても行ってあげるわよ。かわいい甥っ子の頼みだもの」

恵果は凛と言い放ち、比呂の腕を取って微笑みかけた。

比呂は天を仰いで溜息をつく。

「……やっぱり、ばれてたか」
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