ディエス・イレ ~運命の時~

凪子

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紘ちゃんは私を妹のように可愛がってくれるけれど、爽君は私にプロポーズまでしてくれたけれど、でも、心のどこかで私は二人を諦めている。

ずっと一緒にいたくても、そうはできない。

どうせ二人は私を置いていく。そんな気がしてならないのだ。

実際、紘ちゃんも彼女がいた時期もあったし、爽君だってアメリカに行く前からモテモテだった。

年下の私には、どう頑張っても入り込む余地はないように思えた。

だから私はいつも、どうやったら三人一緒にいられるか、一生懸命考えた。

考えて考えて考えて、それでこの学園に進学する道を選んだのだ。

「舞?」

返事をせずにいると、爽君が私を覗き込んでくる。

その顔を見た途端、ずきん、と頭が痛んだ。

(しまった)

少しだけ顔をしかめてしまい、慌てて取り繕ったが、すぐに爽君は気づいた。

「気分が悪いのか」

「ううん、大丈夫」

「嘘つけ。そんな変な顔して」

「変な顔って何よ!」

本当に失礼な人だ。ぷりぷりしていると、爽君はファイルを閉じた。

「お前がもし嫌じゃなければ、催眠療法って方法がある」

「催眠療法?」

私は目を丸くした。

「そうだ。何度も繰り返し夢を見る、その原因を探るために潜在意識まで深く入っていく。幼少期のトラウマや、前世を思い出す人間もいる」

「前……世」

ずきんずきん、と頭の痛みが激しくなる。

それどころか胸がむかむかして、気持ち悪くなってきた。

(やばい、ちょっと吐きそうかも)

「舞」

口元を手で覆っていると、爽君の手が私の背中を優しくさすった。

「ごめん、悪かった。今のは忘れてくれ。ごめん」

いつになく困った顔で、何度も爽君は謝った。

迷子になった子供のように、いたいけな目をしている。

(ずるいよ、爽君……)
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