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本編
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しばらくすると吐き気はおさまり、頭痛も波が引くように少しずつましになっていった。
ほっとしていると、爽君は私の頭の上に手を置いて言った。
「今日はこの辺にしよう。戸締まりするから、ちょっと外で待ってな」
「何で?」
「俺も帰るから、ついでに送ってく」
「え、いいよ」
「駄目だ」
すると、爽君の胸ポケットでスマホが震え出し、しかめっ面になった。
「いいか、すぐ終わるから待ってろよ。絶対だぞ」
ここまで言われて放って帰ったら、かなり面倒なことになりそうだ。
私はカウンセリングルームの外に出て待つことにした。
それほど時間が経ったわけではなかった。二、三分だったように思う。
爽君は白衣を脱ぎ、眼鏡を外した状態で部屋を出てきた。
その表情を見て、私は息を呑んだ。
「どうしたの?」
爽君の横顔が緊張している。
眉間が硬く強張り、唇は強く引き結ばれている。目には異様な迫力がこもっていた。
(何か悪い電話だったのかな)
聞こうかどうか迷っていると、爽君が先に口を開いた。
「舞」
「な、何?」
爽君は溜息とも深呼吸ともつかない呼吸をした後、私の目を見て言った。
「紘二の意識が戻った」
「本当!?」
頭の痛さも吹っ飛び、私は文字通り飛び上がった。
(嬉しい!!!)
こんなに早く意識が回復するなんて思わなかった。
「私、紘ちゃんに会ってくる」
「待て」
手首を掴まれて、私は振り返った。
「何?」
「紘二は……」
言いかけてためらい、爽君は首を振った。
「いや、何でもない。とにかく俺も一緒に行く。車を回すから、正門の前で待ってろ」
「分かった。ありがとう!爽君」
私は駆け出した。
一度も振り向かなかったから、爽君がどんな表情で私を見送ったのかは分からない。
でも、もし振り向いていたら――私はきっと、そのことを後悔しただろう。
ほっとしていると、爽君は私の頭の上に手を置いて言った。
「今日はこの辺にしよう。戸締まりするから、ちょっと外で待ってな」
「何で?」
「俺も帰るから、ついでに送ってく」
「え、いいよ」
「駄目だ」
すると、爽君の胸ポケットでスマホが震え出し、しかめっ面になった。
「いいか、すぐ終わるから待ってろよ。絶対だぞ」
ここまで言われて放って帰ったら、かなり面倒なことになりそうだ。
私はカウンセリングルームの外に出て待つことにした。
それほど時間が経ったわけではなかった。二、三分だったように思う。
爽君は白衣を脱ぎ、眼鏡を外した状態で部屋を出てきた。
その表情を見て、私は息を呑んだ。
「どうしたの?」
爽君の横顔が緊張している。
眉間が硬く強張り、唇は強く引き結ばれている。目には異様な迫力がこもっていた。
(何か悪い電話だったのかな)
聞こうかどうか迷っていると、爽君が先に口を開いた。
「舞」
「な、何?」
爽君は溜息とも深呼吸ともつかない呼吸をした後、私の目を見て言った。
「紘二の意識が戻った」
「本当!?」
頭の痛さも吹っ飛び、私は文字通り飛び上がった。
(嬉しい!!!)
こんなに早く意識が回復するなんて思わなかった。
「私、紘ちゃんに会ってくる」
「待て」
手首を掴まれて、私は振り返った。
「何?」
「紘二は……」
言いかけてためらい、爽君は首を振った。
「いや、何でもない。とにかく俺も一緒に行く。車を回すから、正門の前で待ってろ」
「分かった。ありがとう!爽君」
私は駆け出した。
一度も振り向かなかったから、爽君がどんな表情で私を見送ったのかは分からない。
でも、もし振り向いていたら――私はきっと、そのことを後悔しただろう。
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