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本編
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しおりを挟む当たり前だけど、病院の面会時間はとっくに過ぎていた。
「どうしよう……」
今さら気づいてパニくっていた私の頭を、爽君はぽんぽんと叩いた。
「ちょっと待ってな」
そしてナースステーションで話をしていたかと思うと、奥から(多分偉い)看護師さんが出てきて、紘ちゃんの部屋に案内してくれた。
「どうやったの?」
廊下を歩きながら私は小声で問いかけたけど、爽君は答えなかった。
(ほんと、何でもできるなあ……)
「こちらです」
紘ちゃんの部屋は個室だった。
照明がついていて、オレンジ色の光が漏れている。
私はごくりと唾を飲んだ。
「失礼します。住吉さん、お友達がいらしてくださいましたよ」
すると、ベッドの上で横になり、目を閉じていた紘ちゃんが、ゆるく睫毛を上げた。
「紘ちゃん……」
泣くつもりはなかったのに、気づくと目頭がうるうるしていた。
私はベッドに駆け寄って、紘ちゃんの右手を握りしめた。
そこには透明な点滴の管がつながれていた。
「紘ちゃん、大丈夫?」
紘ちゃんはじっと私の目を見つめると、ゆっくりと一度頷いた。
その視線が私から動き、入口の扉の前で立っている爽君へと移る。
そのまま、奇妙な沈黙が続いた。
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