出会って五秒で合体!?~半人半獣になってしまった私は獣人に間違えられ殺されそうになりました~(仮)

ぽりんここりんこぷりぷりのえび

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始まり

マリア・スメラギ

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「えっ、何これ外れない!? え、ちょ!? 尻尾も!?」

 さっきまでは耳と尻尾が生えているのに気付かなかった。
 もしかして、いきなり夜目が効いたり泳げなくなっていたのはこれのせいだった!?
 ……臭いのもこのせいだったら嫌だね。

「──し、シラを切るつもりか!」

 私が驚いていると、少年は私を睨みつけるように見つめ、腰にあるレイピアを取り出し私に矛先を向けた。
 彼の足はガクガク震え、持っているレイピアも手を少し叩けば落としてしまいそうだ。

「シラを切るなんてそんな高度な真似、私に出来ると思っとんのか!?」

 そんなことより焦った私は何故か逆ギレをかましてしまう。

「ほ、本性を表したな!? 両親の仇──」

 レイピアを握りしめこちらへ向かってくる。

 えー、何やら仇扱いされちゃったよ。
 私の方は川の中で歩きづらく、明らかに不利な状況。
 突っ込むのは死にに行くようなものだ。
 何よりあのレイピアに刺されたらひとたまりもないよね。

「落ち着いて、って!」

 私は川の水を手で掬い、今にも川へ入ろうとしていた彼の顔面目掛けてぶっ掛けた。

「み、水魔法!?」

 それを聞いて私は理解する。

 ──この子、バカだ。

「川に水があるからそれを掛けただけでしょ? そんなことも分からないの? キミ、名前はなんて言うの? 夜に一人で外出するだなんて心配されるんじゃないの?」

 トントンと川を指差し、呆れながら彼へ畳み掛けるように話し掛ける。
 水をぶっ掛けておいて名前を訊ねるだなんて言ってしまってから結構クレイジーなことをしてると自分でも思う。

「……エル。エル・ガナファー」

 答えないかと思っていたけど、律儀にも彼はぶっきらぼうに答える。

 エルね……思ったより普通な名前。
 異世界なら自分の名前を覚えるまでに五年掛る程の長い名前だったりしてもよかったんじゃないの?

「おっとと。私の名前は──マリア・スメラギ」

 日本名で皇 真理愛すめらぎ まりあ
 でも異世界だったので名前と苗字は反対にし伝えた。
 彼もきっとファーストネームはエルなのだろう。

「ま、マリアだって!? この世界をお創りになられた、女神マリア様と同じ名前だなんて益々怪しい」

 私の名前を聞いて彼は身体を震わる程驚いているのだが、私は女神と言うワードを聞いてまた憤りのない怒りが再び襲いそうになる。

「そこ! 怪しくなぁぁぁああい! ここを見る! 人の耳もあるでしょ? ユーアーアンダースターン?」

 少しでも怒りを発散させる為に私は大声を出し、右耳を見せるために髪をかき分け、人の耳を彼に見せつける。
 さっき確認した時に人の耳があるのが分かった。
 距離は少々あるものの、見えないほどではないはずだ。

「本当だ……でもどうしてそんな耳と尻尾を……」

 ようやく私が人間なのを理解してくれたようで私に向けられていた矛を仕舞ってくれた。

「私だって知りたいよ。目が覚めたら洞窟だったし、訳の分からない毛むくじゃらの猫が居て襲われると思ったら消えてるし、オマケに洞窟から出られたかと思ったら襲われそうになるし?」

 この世界に来て会ったことを断片的に伝えた。最後はニヤリと彼を見て腕なんか組んじゃってわざとらしく言ってやった。

「洞窟……愚者の洞窟に入ったって言うのか!? しかも、あの化け猫を見たんだな!」

 彼は血相を変え、川の中に居る私に近付き、レディである私の肩を掴み揺するようにして訊ねてきた。
 日本ならそれなりの刑を下されてもおかしくない。
 それより何度も揺すらないで下さる?

「ちょ、ちょっと! ストップ! ストーーーップ! そんなに揺られたら話そうにも話せないからっ!」

 私は両手を広げ、彼の揺すりを止めた。
 この子、さっきはガタガタ震わせていたのに意外と力強い……。

「取り乱してしまった」
「別にいいけど。あの毛むくじゃらが居たのが愚者の洞窟って呼ばれてるなら多分そうだと思うよ」

 愚者の洞窟……ね。
 確かタロットなんかで愚者を意味するカードがあったりする。

 そして、その意味は──バカもの。

 そんなとこで転生させたってことは私をバカもの扱いしてるってことだよねぇ!?
 今度くそ女神様に会ったら髪を引っ張るだけじゃなくて燃やしてやろう。

「そうか……見たのだな。あれは兄さんが討伐するはずだった」
「だった?」

 私が再び不死鳥の如く、くそ女神様に対する怒りの闘志をメラメラ燃やしていると、彼は少し寂しそうに口を開く。

 その口ぶりからしてこの子のお兄さんはもう……。

「でも兄さんは重度の病に犯され、今は城から出ることを許されていない」
「そっか」
 
 生きているのならまだ希望はあるんじゃないかな。
 命あっての物種、って言葉もあるくらいだし。

「街まで案内するよ。それが僕に出来るせめてもの償いだ」

 彼が私に手を差し、私も彼に手を預けようとした瞬間──

「な、何だ!?」

 別に風が吹いている訳ではないのに、木々がガサガサざわめき始める。
 ドカドカと言う足音も聞こえた。
 何かが……何かがこっちに向かってきている。

 ガサッ、と草わらから顔を出したのは首から下は屈強そうなゴリラのフォルム、それでいて顔はウサギのように可愛い顔をしていた。
 大きさは私より遥かに大きく、五メーターはありそう。全身茶色のよく分からない物体がそこに居た。

「んなっ!? プリティラビット!?」
「プリティラビット?」

 驚く彼の言葉を私は反復することしか出来ない。
 何せ草わらから出てきたアイツの名前を知らないのだから。

 プリティラビットと呼ばれたそれは、私たちの姿を確認するや否や、つぶらな瞳をさせ、ゴツイ両手で小刻みに「こっちにおいで」と手招きをしていた。

 案外人懐っこい動物なのかな? 
 ……見た目キモイけど。

 私は川を出てプリティラビットに近付いた。

「だ、ダメだ! そいつは──」
「大丈夫だって。あ、もしかして、動物苦手だったりするの?」

 後ろから彼が必死に私を引き止めている。
 対する私は好奇心に負けて彼の言うことを聞く訳がない。

「GOOOOOOOOOOON!!!」

 私とプリティラビットの距離は数メートルに差し掛かった所、プリティラビットは奇妙な雄叫びを上げ、自分の胸を叩いていた。
 元いた世界のドラミングと言う行為だった。
 だが、それは緊張や興奮から出ているものでは無い。
 一体どんな原理で成しているのか。
 私の前にはドラミングで出来た無数の風の刃が差し掛かる。

「えっ、ちょ何!?」

 ボックスカーに引かれた時と違って両足は動く。
 だけど無数の刃は、百八十度私を取り囲んでいた。
 こんなの回避するのは無理ゲー過ぎる……私はどうしようもなく、毛むくじゃらが襲ってきた時のように怖くて目を瞑ってしまった。

「危ない──!」

 後ろから声が近付いてくる。
 そうして私が目を開けると、目の前には血だらけになっているエルの姿があった。
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