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始まり
異端
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「ゴホン、再三取り乱して済まなかった」
正気を取り戻したゴルデスマンさんは、まるでさっきのことは聞かれたくないかのように咳払いをひとつして見せた。
この部屋の赤い絨毯には、さっきまでゴルデスマンさんが泣き喚いていた証拠である涙とヨダレが染み付いているのも聞かないよ。
まぁ私も人の恋路にどうのこうのと言えた人間じゃない。
大した恋愛なんてしてこなかったしね。
そう考えたらもう少し恋愛と言うものをしておくべきだったかと悔やまれる。
「それで私のコレは何が問題なのでしょうか? 獣人がこの国では異端な存在なのは薄々気付いてますけど……」
恋愛云々より自分の獣耳を触りながら首を傾げて訊ねる。
やっと一番聞きたいことが聞くことが出来た。
「ここ、グラダラスでは獣人は異端も異端、大異端。本来入国すら許可されていない、領国で見つけ次第即刻捕らえて処刑が大前提。それに二人の両親は……」
「十年前、外交先の国に向かっている最中、両親は僕を庇って獣人に殺されました……覚えているのは黒髪黒耳、それだけです」
ゴルデスマンさんが話し始め、最後の方はエルを見ると、エルは真剣な眼差しで私を見つめてそう話す。
うへぇ、思っていたよりえげつなかった。
あの丸太に着いた赤黒い血のような痕は無断でグラダラスだっけ? に侵入して捕らえられた獣人の物だったのかな。
お腹から血を流したのであそこに私の血も刻まれてるのかな。
そういや寝起きはお腹が痛かったけど、今は全然痛くない。
これも宮廷魔術師様のお陰なのかな。
エルは小さい頃から両親を亡くしていたのは辛かっただろうね。
そんな小さな頃の記憶だから曖昧でも仕方ない。
「なるほど……それで私を親の仇と間違えた訳か」
「その件は本当にごめんなさい!」
「ううん、ううん! 別に怒ってないから。私こそプリティラビットが危ないって知らなくて近寄ってごめんね?」
右手を出して、私は握手を求める。
彼も右手を出し、握手を交わすと私たちは目と目を合わせ笑顔になった。
エルも私も生きてて本当に良かったと思う。
「お、思い出した……に、人間も獣人のように耳と尻尾を生やすことが出来る……人が居たんだ……」
和解? をしていると青ざめていたくそぽっちゃりはテーブルクロスにヨダレを垂らしたがらブツブツと呟いていた。
「本当ですか、兄さん!?」
そんな兄を気遣う様子は一切見せず、驚いて何度も兄を揺さぶっていた。
あれじゃあ、いつ吐いてもおかしくないだろうに……少し距離取っとこ。
でも話の内容は気になる。
「あ、あぁ……文献に書いてあったのを見て自分も出来ないかと試したことがあったのを──オロロロロロ」
「兄さん!? 大丈夫ですか!」
ようやく兄を心配し始めたのだが、吐いているのは恐らく、ゴルデスマンさんとエルのせいだ。
「いつもの所まで運んでくる。エル坊、アル坊の部屋まで案内してやってくれ」
ゴルデスマンさんは軽々とくそぽっちゃりを担ぐと、エルにくそぽっちゃりの部屋まで案内するようにお願いすると、この部屋を出ていく。
担がれているくそぽっちゃりは揺られる度に七色の液体を床に撒き散らしていた。
絶対踏みたくない。
それにいつもの所まで運んでくるとはどう意味なのだろうか。
「医務室です。兄は獣人好きの病に犯されてしまい、今は誰かが付き添わない限り医務室と自分の部屋以外出ることが出来ないんです」
あーうん。その言葉を聞いて分かったよ。
兄の病気は重度のケモナーな訳ね。
だから私を見て興奮していたのか……。
グラダラスでは獣人は異端も異端、大異端。
なので病気と判断され、家から出ることが出来ない。
そして、家から出ることが出来なくなった兄は運動不足に陥り、あんなぽっちゃりさんになってしまった……と容易に想像出来てしまう。
可哀想だけど、この国なら仕方ないね。
「兎に角、向かいましょうか。もしかしたら何か分かるかもしれません」
そう促され私たちは部屋を後にした。
正気を取り戻したゴルデスマンさんは、まるでさっきのことは聞かれたくないかのように咳払いをひとつして見せた。
この部屋の赤い絨毯には、さっきまでゴルデスマンさんが泣き喚いていた証拠である涙とヨダレが染み付いているのも聞かないよ。
まぁ私も人の恋路にどうのこうのと言えた人間じゃない。
大した恋愛なんてしてこなかったしね。
そう考えたらもう少し恋愛と言うものをしておくべきだったかと悔やまれる。
「それで私のコレは何が問題なのでしょうか? 獣人がこの国では異端な存在なのは薄々気付いてますけど……」
恋愛云々より自分の獣耳を触りながら首を傾げて訊ねる。
やっと一番聞きたいことが聞くことが出来た。
「ここ、グラダラスでは獣人は異端も異端、大異端。本来入国すら許可されていない、領国で見つけ次第即刻捕らえて処刑が大前提。それに二人の両親は……」
「十年前、外交先の国に向かっている最中、両親は僕を庇って獣人に殺されました……覚えているのは黒髪黒耳、それだけです」
ゴルデスマンさんが話し始め、最後の方はエルを見ると、エルは真剣な眼差しで私を見つめてそう話す。
うへぇ、思っていたよりえげつなかった。
あの丸太に着いた赤黒い血のような痕は無断でグラダラスだっけ? に侵入して捕らえられた獣人の物だったのかな。
お腹から血を流したのであそこに私の血も刻まれてるのかな。
そういや寝起きはお腹が痛かったけど、今は全然痛くない。
これも宮廷魔術師様のお陰なのかな。
エルは小さい頃から両親を亡くしていたのは辛かっただろうね。
そんな小さな頃の記憶だから曖昧でも仕方ない。
「なるほど……それで私を親の仇と間違えた訳か」
「その件は本当にごめんなさい!」
「ううん、ううん! 別に怒ってないから。私こそプリティラビットが危ないって知らなくて近寄ってごめんね?」
右手を出して、私は握手を求める。
彼も右手を出し、握手を交わすと私たちは目と目を合わせ笑顔になった。
エルも私も生きてて本当に良かったと思う。
「お、思い出した……に、人間も獣人のように耳と尻尾を生やすことが出来る……人が居たんだ……」
和解? をしていると青ざめていたくそぽっちゃりはテーブルクロスにヨダレを垂らしたがらブツブツと呟いていた。
「本当ですか、兄さん!?」
そんな兄を気遣う様子は一切見せず、驚いて何度も兄を揺さぶっていた。
あれじゃあ、いつ吐いてもおかしくないだろうに……少し距離取っとこ。
でも話の内容は気になる。
「あ、あぁ……文献に書いてあったのを見て自分も出来ないかと試したことがあったのを──オロロロロロ」
「兄さん!? 大丈夫ですか!」
ようやく兄を心配し始めたのだが、吐いているのは恐らく、ゴルデスマンさんとエルのせいだ。
「いつもの所まで運んでくる。エル坊、アル坊の部屋まで案内してやってくれ」
ゴルデスマンさんは軽々とくそぽっちゃりを担ぐと、エルにくそぽっちゃりの部屋まで案内するようにお願いすると、この部屋を出ていく。
担がれているくそぽっちゃりは揺られる度に七色の液体を床に撒き散らしていた。
絶対踏みたくない。
それにいつもの所まで運んでくるとはどう意味なのだろうか。
「医務室です。兄は獣人好きの病に犯されてしまい、今は誰かが付き添わない限り医務室と自分の部屋以外出ることが出来ないんです」
あーうん。その言葉を聞いて分かったよ。
兄の病気は重度のケモナーな訳ね。
だから私を見て興奮していたのか……。
グラダラスでは獣人は異端も異端、大異端。
なので病気と判断され、家から出ることが出来ない。
そして、家から出ることが出来なくなった兄は運動不足に陥り、あんなぽっちゃりさんになってしまった……と容易に想像出来てしまう。
可哀想だけど、この国なら仕方ないね。
「兎に角、向かいましょうか。もしかしたら何か分かるかもしれません」
そう促され私たちは部屋を後にした。
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