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始まり
一夜を共に
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「あのー……ルナさん?」
「いかがなさいましたでしょうか」
帰ってきてお風呂とご飯を済まし、後は寝るだけというのに何故かルナさんは私の部屋から出ず、それどころか私の寝ている隣には新たに簡易的なベッドが置かれていた。
部屋は広いので余裕はあるし、余裕があるからこそもう少し離れた場所にベッドを置いて欲しかったかな。
簡易的なベッドにルナさんはメイド服のままちょこんと座り、横になっている私を見つめている。
私たちの間にある壁に備え付けられた光の魔石が使われたライトが薄らと部屋を照らしていた。
これは私が付けたものだ。本当はもっと明るくなるらしいがこれが私の限界である。
だが寝る時にはちょうどいい明るさなのだ。
「そんなに見つめられると眠りづらいのですが……」
「慣れてください。今日のようなことが御座いましたら私がエル様に怒られてしまいます。ただでさえ、マリア様は口外なさるつもりはないとのことですし」
私がうつ伏せになり困惑しているのも気にせずに、ルナさんは抑揚もなくただ淡々と言葉を発する。
確かにその通りなのだろうけど、ずっと見張ってて疲れたりしないのかな。
「まぁ、エルの方から「ヒックさんの家が自然発火して燃えちゃったんだって!」って驚いた顔をして言ってきましたからね」
今日は貴賓室で食べることになり私が貴賓室に入るなり私のことを待っていたエルは開口一番でそのことを喋っていた。
他のメイドさんも居る手前、誰がくそパーマ男の仲間かも分からないし、それ以上驚かす訳にもいかないと思ったから黙ってたけど、今考えると言った方が良いような気もしてくるよ。
でも私が事実を主張したところで、エルもアルもくそパーマ男とその連中にどうこう出来る権限はない。
濡れ衣だと反発されて私が怪しがられても面倒だしね。
「エル様は少々おつむが弱いきらいがあります」
「つ、仕えているのにそんなに言っちゃって大丈夫なんですか?」
本人は居ないけれど、堂々とバカと言っているようなものだった。
言いたいことは少し分かる。
でも自分も頭はあまりよくないと気にしていたので本人の目の前では言うことはないだろう。
「ええ、それに昔から心配性ですので今回のマリア様の判断は正しいとも言えます」
私の判断を褒めている……ってことなのかな?
それよりも私はずっとずっーーーと気になることがあった。
「そう、ですか。それよりもそのマリア様って呼ぶのやめてもらってもいいですかね。マリアでお願いします」
「分かりました。では私のこともルナとお呼びください」
断られるかと思ったけれど、自分もさん付けは不要とのこと。
でもそのピリピリとした視線がさん付けでないとダメな気もする……だけどさんを付けると様を付けられるんだよねぇきっと。
「分かりました。ルナ、明日からも宜しくお願いしますね」
「えぇ」
諦めてさん付けはやめて話しかけると、ルナは軽く頷いて見せた。
私は今日の疲れのせいで眠気がやってきてスヤスヤと眠りについた。
☆
本日もお日柄もよく、お日柄も良いのに今日も今日とて朝ご飯なりなんなりを済ませて、部屋にこもってのお勉強が始まった。
常識や魔法なんかはある程度理解出来たので、今日は文字について教えて貰っている。
今日初めて読み書きが出来ないことを伝えるとあまり表情が豊かではないルナが口を開いて驚きを見せたのが印象的だった。
「まずはルイス文字からです」
「エルも読めるって言ってたやつだ……頑張るぞ」
両脇を締めてちょっとしたガッツポーズをして気合を入れる。
「そんなに気張らなくても大丈夫ですよ」
なんて言いながらテーブルにはドサッと大量の本が置かれる。
ん? 気張らなくても大丈夫とは?
「これはどれもルイス文字についての入門書でございます。お好きなのを手に取ってください」
一瞬、これを全部やらなきゃいけないのかと身構えたがどれか一つで良いみたい。
それなら一番薄い本にしよう。
私は上から数えて三番目の本を手に取って広げてみる。
相変わらず読めない。文字と言うよりは図や記号のようにしか思えないのだ。
「それは去年発行されたばかりの物ですね。マリアにはちょうどいいと思います」
「分かりました。ではこれでお勉強します」
そうしてルイス文字についてのお勉強が始まった。
ルイス文字は日本で言うとこのひらがな五十音と様々な施設や建物を表す文字で構成されている。
施設とか建物なんかは日本で言うとこの漢字に分類されそうかな。
私はルナが黒板に書き綴ったものを真似して紙切れに書き写していた。
多少の書き間違いはあると言えど、夕食前にはルイス文字をマスター出来るほどにはなっていた。
「驚きました。エル様が三年掛かってようやく覚えたルイス文字をたった半日で……」
「ルナの教え方が上手だからですよ」
これでも現役の大学生だった。
そこまで頭はよくはないが、暗記ならば一夜漬けでどうにかやっていたのだ。
このルイス文字とやらも一夜漬けにならないように定期的に書いたり読んだりしないとね。
「いかがなさいましたでしょうか」
帰ってきてお風呂とご飯を済まし、後は寝るだけというのに何故かルナさんは私の部屋から出ず、それどころか私の寝ている隣には新たに簡易的なベッドが置かれていた。
部屋は広いので余裕はあるし、余裕があるからこそもう少し離れた場所にベッドを置いて欲しかったかな。
簡易的なベッドにルナさんはメイド服のままちょこんと座り、横になっている私を見つめている。
私たちの間にある壁に備え付けられた光の魔石が使われたライトが薄らと部屋を照らしていた。
これは私が付けたものだ。本当はもっと明るくなるらしいがこれが私の限界である。
だが寝る時にはちょうどいい明るさなのだ。
「そんなに見つめられると眠りづらいのですが……」
「慣れてください。今日のようなことが御座いましたら私がエル様に怒られてしまいます。ただでさえ、マリア様は口外なさるつもりはないとのことですし」
私がうつ伏せになり困惑しているのも気にせずに、ルナさんは抑揚もなくただ淡々と言葉を発する。
確かにその通りなのだろうけど、ずっと見張ってて疲れたりしないのかな。
「まぁ、エルの方から「ヒックさんの家が自然発火して燃えちゃったんだって!」って驚いた顔をして言ってきましたからね」
今日は貴賓室で食べることになり私が貴賓室に入るなり私のことを待っていたエルは開口一番でそのことを喋っていた。
他のメイドさんも居る手前、誰がくそパーマ男の仲間かも分からないし、それ以上驚かす訳にもいかないと思ったから黙ってたけど、今考えると言った方が良いような気もしてくるよ。
でも私が事実を主張したところで、エルもアルもくそパーマ男とその連中にどうこう出来る権限はない。
濡れ衣だと反発されて私が怪しがられても面倒だしね。
「エル様は少々おつむが弱いきらいがあります」
「つ、仕えているのにそんなに言っちゃって大丈夫なんですか?」
本人は居ないけれど、堂々とバカと言っているようなものだった。
言いたいことは少し分かる。
でも自分も頭はあまりよくないと気にしていたので本人の目の前では言うことはないだろう。
「ええ、それに昔から心配性ですので今回のマリア様の判断は正しいとも言えます」
私の判断を褒めている……ってことなのかな?
それよりも私はずっとずっーーーと気になることがあった。
「そう、ですか。それよりもそのマリア様って呼ぶのやめてもらってもいいですかね。マリアでお願いします」
「分かりました。では私のこともルナとお呼びください」
断られるかと思ったけれど、自分もさん付けは不要とのこと。
でもそのピリピリとした視線がさん付けでないとダメな気もする……だけどさんを付けると様を付けられるんだよねぇきっと。
「分かりました。ルナ、明日からも宜しくお願いしますね」
「えぇ」
諦めてさん付けはやめて話しかけると、ルナは軽く頷いて見せた。
私は今日の疲れのせいで眠気がやってきてスヤスヤと眠りについた。
☆
本日もお日柄もよく、お日柄も良いのに今日も今日とて朝ご飯なりなんなりを済ませて、部屋にこもってのお勉強が始まった。
常識や魔法なんかはある程度理解出来たので、今日は文字について教えて貰っている。
今日初めて読み書きが出来ないことを伝えるとあまり表情が豊かではないルナが口を開いて驚きを見せたのが印象的だった。
「まずはルイス文字からです」
「エルも読めるって言ってたやつだ……頑張るぞ」
両脇を締めてちょっとしたガッツポーズをして気合を入れる。
「そんなに気張らなくても大丈夫ですよ」
なんて言いながらテーブルにはドサッと大量の本が置かれる。
ん? 気張らなくても大丈夫とは?
「これはどれもルイス文字についての入門書でございます。お好きなのを手に取ってください」
一瞬、これを全部やらなきゃいけないのかと身構えたがどれか一つで良いみたい。
それなら一番薄い本にしよう。
私は上から数えて三番目の本を手に取って広げてみる。
相変わらず読めない。文字と言うよりは図や記号のようにしか思えないのだ。
「それは去年発行されたばかりの物ですね。マリアにはちょうどいいと思います」
「分かりました。ではこれでお勉強します」
そうしてルイス文字についてのお勉強が始まった。
ルイス文字は日本で言うとこのひらがな五十音と様々な施設や建物を表す文字で構成されている。
施設とか建物なんかは日本で言うとこの漢字に分類されそうかな。
私はルナが黒板に書き綴ったものを真似して紙切れに書き写していた。
多少の書き間違いはあると言えど、夕食前にはルイス文字をマスター出来るほどにはなっていた。
「驚きました。エル様が三年掛かってようやく覚えたルイス文字をたった半日で……」
「ルナの教え方が上手だからですよ」
これでも現役の大学生だった。
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