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始まり
拉致
しおりを挟む模擬戦で疲れてしまったからかいつもより早く眠ってしまい深夜に目が覚めてしまう。
気付けば壁に備え付けられたライトも消えていた。
上半身だけ起き上がって隣を確認すると、動き回って疲れたのか、ルナもスヤスヤと眠りについていたりする。
暗闇でも私は夜目が利くのでルナの気持ちよさそうに寝ている寝顔に何とも顔が綻んでしまう。
「大人に見えても私と同じくらいだもんね」
ヒックさんが二十一歳ならルナは双子では無い限りそれより下だ。
この世界では十五歳で成人になるらしいので、十五歳よりは上になる。
私やエルの見た目と比べると二、三歳は上に見えるので少なく見積もっても十八歳くらいになるのかな。
そう言えば直接ルナが何歳か聞いてないし、私も何歳なのか聞かれていないんだよね。
明日にでも聞いてみようかな──
ルナの寝顔を見ながらそんなことを考えていると、部屋の扉の方から音がして、ゆっくりと開いていく。
誰だろう?
「誰です──」
「喋るな。隣に寝ているやつが殺されたくなければな」
動きが見えなかった。
いつの間にか私は背後を取られ、首元にはナイフを突きつけられていた。
耳元で囁かれるこの声に覚えはない。
汚い声……くそパーマ男ではないようだ。
声を出せば私は殺され、寝ているルナも殺されてしまう。
仮に声を出して私が助かっても、ルナが殺される恐れもある。
私は男の言う通りに声は出さず、じっと耐えた。
すると、私は音も出さずに担がれ、部屋を後にしてしまう。
でもただで連れ去られる訳にはいかない。
夜なら分からないけど朝には分かるかもしれない。
そう祈りながらバレないよう必死にゆっくりと始める。
そうして私は疲弊し、男の肩の上で眠りについてしまった。
☆
ガタガタと言う音とそれに連動して揺れているのに気付いて目が覚める。
目は見えるけど、口は布で押さえつけられ、手足も縛られていた。
そして手の中にあった物も砕けたのか消えてしまっている。
どうやら私は何処かへドナドナされてしまっているようだ。
果たして私の策は成功したのか失敗したのか……どちらにせよこの状況をどうにかしないと。
馬車の荷台……なんだろうね。
何も無くただ辺りは木目調。
そして、足は縛られているだけでなく、荷台に括りつけてあった。
何ともくそパーマ男に初めて会った時のことを思い出してしまう。
あの時は手足だったけどね。
そして私を誘拐した意味はなんだったのか。
前は殺そうとしてたし、連れ去った後にすぐに殺してしまえばよかったのでは?
ヒックさんの言う通り彼の考えてることは理解できない。
それともくそパーマ男ではない、と言う可能性もあるのかな。
でもここから出られないだけで私は無敵だ。
ブレスレットがあるからね!
左手を見る。するとなんということでしょう、ブレスレットがありません。
何で!?
そっか……寝る前は外してたんだった。
落胆し、私はドナドナが済むまで待つしかなかった。
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