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王立魔法学園編Ⅰ
ビリネコって言うな!
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午前の授業を経てセシリーはやっと普通に戻ってくれた。
魔法の成績が芳しくない私を無視する、なんてことはなく昨日と同じく今日も四人と一匹で学食へとやってきた。
本当に良い友達を持ったと私は実感するよ。
でも私が魔法を全く使えないことは瞬く間に学園中に広がり、ついたあだ名が──
「ビリネコ」
「ビリネコだ」
そうみなが口を揃えて私のことを見て呼んでいた。
中には聞こえないように言っている者もいるのだろうが、困ったことに私の獣耳はしっかりと君たちの言葉を受信しているのだよ。
昨日の驚きと羨望の眼差しが嘘のようで今じゃ蔑む視線が私を突き刺していた。
「気にすることありませんわ。誰にでも得手不得手がございましてよ」
「セシリーの言う通り」
私の魔法を見て初めは驚いて放心状態だったセシリーと放心状態のセシリーを元に戻そうと必死だったミオは私を励ましてくれる。
「セシリー……ミオ……」
そんな二人の気遣いが嬉しかった。
気を引き締めていないと涙が出てしまいそう。
「わ、私もお二人の言う通りだと思います。マリアはまだ転入したばかりですし、これから出来るようになると思います!」
二人に負けたくないのか、それとも自分だけ何も言わないのを気にしたのかミレッタも励ましの言葉を言ってくれる。
「ありがとう、ミレッタ」
一生懸命なミレッタの姿を見ると顔が綻ぶ。
そう。これから出来るようになればいいだけなのだ。
「でもどうしてそんなに魔法が使えないのに此処へいらしたので?」
セシリーが何気なく私に訊ねてくる。
……悪気はないと分かっていても心にグッサリと刺さるものがある。
でもセシリーの質問はもっともだ。
魔法が使えないのならば王立魔法学園に通う必要なんてなかったはず。
グラダラスに居ればエルたちの負担になりかねなかったので逃げるようにしてハイネにやってきたのだ。
だが一番の理由は獣術のことを調べるため……なんだけど言えないよねぇ。
今は慣れるのに精一杯で調べることすらしてないし、シロムは他に何か知っていそうだけど知りたかったら自分で調べろって雰囲気だし。
シロムは今日も今日とて呑気に煮干しを食べているだけ。
私が魔法をろくに使えなくても気にしてはいなそうだった。
「魔法に興味を持った私を見たお父様が王立魔法学園の転入を打診してくれたんです」
それとなくさもありそうなエピソードを三人に伝える。
この世界には父親どころか母親すら存在しないんですけどね。
「まぁ! 素敵なお父様ですわね!」
まるで自分のことのようにセシリーは両手を合わせて喜んでいた。
その反面、私は嘘をついているので少しだけ心が痛いよ。
いつかは必ずこの三人には私が獣術モドキなことを伝えようと思った。
「ん?」
私のご飯が入っているトレイの隣には見覚えのない紺色の手袋が置いてある。
もちろん私のではないし、三人のでも白猫であるシロムの物でもない。
「忘れ物かな?」
「──ダメですわ!!!」
セシリーの注意が一歩遅く、私は紺色の手袋を右手に持った。
すると見覚えのある三人の姿が現れる。
セシリーたちではない。
「ビリネコ、俺様とその白猫を賭けて決闘だ!」
「決闘? やらないよ? はいこれ」
見ればゴウの左手に同じ紺色の手袋がはめられていた。
ふくよかなせいで手が蒸れたからたまたまここで外してしまい、私が手に取って閉まったせいでただ返して貰う訳にもいかないからそんなことを口にしてしまったのでしょうね。
王族の見栄とかなのかな。
「残念ですが、マリア……その決闘は断ることは出来ませんわ」
「紺の誓いは絶対」
セシリーは頭が痛いのか額を抑え下を俯き、ミオは首を左右に振って訳の分からないことを口にしていた。
ミレッタは大丈夫かな? と思い隣を見ると目を開けて口を軽く開け小刻みに震えているではありませんか。
どうやら決闘を断れないのは本当のようだ。
魔法の成績が芳しくない私を無視する、なんてことはなく昨日と同じく今日も四人と一匹で学食へとやってきた。
本当に良い友達を持ったと私は実感するよ。
でも私が魔法を全く使えないことは瞬く間に学園中に広がり、ついたあだ名が──
「ビリネコ」
「ビリネコだ」
そうみなが口を揃えて私のことを見て呼んでいた。
中には聞こえないように言っている者もいるのだろうが、困ったことに私の獣耳はしっかりと君たちの言葉を受信しているのだよ。
昨日の驚きと羨望の眼差しが嘘のようで今じゃ蔑む視線が私を突き刺していた。
「気にすることありませんわ。誰にでも得手不得手がございましてよ」
「セシリーの言う通り」
私の魔法を見て初めは驚いて放心状態だったセシリーと放心状態のセシリーを元に戻そうと必死だったミオは私を励ましてくれる。
「セシリー……ミオ……」
そんな二人の気遣いが嬉しかった。
気を引き締めていないと涙が出てしまいそう。
「わ、私もお二人の言う通りだと思います。マリアはまだ転入したばかりですし、これから出来るようになると思います!」
二人に負けたくないのか、それとも自分だけ何も言わないのを気にしたのかミレッタも励ましの言葉を言ってくれる。
「ありがとう、ミレッタ」
一生懸命なミレッタの姿を見ると顔が綻ぶ。
そう。これから出来るようになればいいだけなのだ。
「でもどうしてそんなに魔法が使えないのに此処へいらしたので?」
セシリーが何気なく私に訊ねてくる。
……悪気はないと分かっていても心にグッサリと刺さるものがある。
でもセシリーの質問はもっともだ。
魔法が使えないのならば王立魔法学園に通う必要なんてなかったはず。
グラダラスに居ればエルたちの負担になりかねなかったので逃げるようにしてハイネにやってきたのだ。
だが一番の理由は獣術のことを調べるため……なんだけど言えないよねぇ。
今は慣れるのに精一杯で調べることすらしてないし、シロムは他に何か知っていそうだけど知りたかったら自分で調べろって雰囲気だし。
シロムは今日も今日とて呑気に煮干しを食べているだけ。
私が魔法をろくに使えなくても気にしてはいなそうだった。
「魔法に興味を持った私を見たお父様が王立魔法学園の転入を打診してくれたんです」
それとなくさもありそうなエピソードを三人に伝える。
この世界には父親どころか母親すら存在しないんですけどね。
「まぁ! 素敵なお父様ですわね!」
まるで自分のことのようにセシリーは両手を合わせて喜んでいた。
その反面、私は嘘をついているので少しだけ心が痛いよ。
いつかは必ずこの三人には私が獣術モドキなことを伝えようと思った。
「ん?」
私のご飯が入っているトレイの隣には見覚えのない紺色の手袋が置いてある。
もちろん私のではないし、三人のでも白猫であるシロムの物でもない。
「忘れ物かな?」
「──ダメですわ!!!」
セシリーの注意が一歩遅く、私は紺色の手袋を右手に持った。
すると見覚えのある三人の姿が現れる。
セシリーたちではない。
「ビリネコ、俺様とその白猫を賭けて決闘だ!」
「決闘? やらないよ? はいこれ」
見ればゴウの左手に同じ紺色の手袋がはめられていた。
ふくよかなせいで手が蒸れたからたまたまここで外してしまい、私が手に取って閉まったせいでただ返して貰う訳にもいかないからそんなことを口にしてしまったのでしょうね。
王族の見栄とかなのかな。
「残念ですが、マリア……その決闘は断ることは出来ませんわ」
「紺の誓いは絶対」
セシリーは頭が痛いのか額を抑え下を俯き、ミオは首を左右に振って訳の分からないことを口にしていた。
ミレッタは大丈夫かな? と思い隣を見ると目を開けて口を軽く開け小刻みに震えているではありませんか。
どうやら決闘を断れないのは本当のようだ。
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