神様の錬金術

ぽりんここりんこぷりぷりのえび

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靴作り

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「こ、ここをこうで、こうです!」
「ここをこうで、こうだな!」

 ルビィが手帳を握りしめベッドに座り不思議そうに俺たちを見つめながら、その俺たちはテーブルにある備え付けの椅子に座って麻で出来た靴を作っている。
 ルリの教え方はとてつもなく感覚的なもので、見様見真似で作るので精一杯だ。

「ち、違います。ここが、こうで、こうです!」
「こうでこうでこうだな!」

 間違いを指摘して教えてくれてはいるのだが、やはり主語がなく、独立語のオンパレードだ。

 そんな訳でルリの方は綺麗な麻靴の底になっていくのだが、俺の方はなんとも言えないただ三つ編みをしている髪のようだった。

「ツバサ、来なさい」

 ベッドに座っているルビィがベッドをトントンと叩き隣へ来いと命令口調で話す。

「トイレか?」
「違うわよ! 貸しなさい!」

 三つ編みを持ち、椅子から立ち上がりルビィの元へ向かって冗談半分で喋ると、本人はこの前のことを気にしているのか怒りながら俺から三つ編みを奪い取り、あっという間に麻紐に戻す。

「んなっ!? 俺のアサヒモモンローがぁ!?」
「そんなの作る余裕があるなら靴を作りなさいよ、靴を!」

 遊んでいると思われていたのかそっぽを向いて不機嫌そうに怒り、麻紐になったアサヒモモンローを投げつけて返される。

「どうやら俺は手先が器用じゃないようでな」
「私が教えるから麻紐持ってきなさい」

 ルビィも作れるようでルリに代わって教えてくれるようだ。
 罠も作れるくらいだし、ルリに負けないくらい器用なのだろう。

「よし、二人とも俺に教えてくれ」

 どちらかだけに教えてもらうとどちらかが拗ねたり機嫌を損ねたりしかねない。
 なので俺はベッドに座っているルビィを抱きかかえ、テーブルにある椅子に座らせることにした。

「あっ、ちょ!? バカ……!」

 嫌がるもまだ足が痛く、自分で思うように動けないし、落ちたら危ないと思ったからか、俺の首を締めるように掴み、連行されていく。
 その反応は可愛いし密着度が増してドキドキするのだが、ルリ同様にルビィは力があり、意識しないと今にでも気を失いそうだった。

 そうして気を失うことなく無事にルビィを座らせ、改めて三人で靴を作ることに。

 ☆

「せ、折角ですから、み、みんなで、誰かの分を作りませんか?」

 俺が着席するとルリがそんなことを言い始める。

「いいわよ。私は仕方ないからツバサの分を作ってあげるわ。感謝しなさい」
「わ、私がツバサお兄ちゃんの分を、つ、作ります!」

 しょうがないから俺の分を作ってやる、とツインテを掻き分けながら喋るルビィ。
 反対に昨日から俺の靴を作りたかったのか、それともさっきの提案から俺の靴を作る算段を考えていたのかルリも負けずと言い放つ。

 二人は立ち上がり火花を燃やしていた。
 ルビィに関してはまだ足が痛むだろうに何やってんだか……。

「アンタはどうなの!」
「つ、ツバサお兄ちゃんはどうなんですか!」

 どう仲裁に入ろうか考えていると、二人同時にこちらを見て俺に判断を委ねられた。
 確かに一緒に作ろうとルビィをこっちまで運んで来たし責任は俺にある。

 どうしようかなぁ……そうだ!

「みんなで片方ずつ作らないか?」
「そ、そうですね! わ、私は右を作ります」
「しょうがないわね。左を作ってあげるわ」
「よし、決まりだな」

 提案に二人とも乗り気だった。

 俺はルリの右の靴とルビィの左靴を。
 ルリは右の靴を二個、ルビィは左の靴を二個作ることになった。
 なので右はルリに教わりながら、左はルビィに教わりながら麻靴を作っていく。

「で、出来た……!」

 お昼ご飯を挟み、暫くしてから完成する。
 左右の靴は不揃いだが、二人の足のサイズを考慮して作られているので問題ない。
 形も歪だけど……まぁ履けなくもない。
 初めて作る靴に感動も一塩だ。

「わ、私も出来ました」
「私も出来たわ」

 二人も完成したようで交換会をする。

「はい、これがルリのでこっちがルビィのな。あんまり上手には出来なかったけど履いてくれると嬉しい」
「あ、ありがとうございます」
「仕方ないから使ってやるわよ」

 左より少し小さい右の靴をルリに、右より少し大きい左の靴をルビィに手渡す。

「ほら、左の靴」
「み、右のをどうぞ」

 すると、二人もすぐに各々が作った靴を俺に渡してくれる。
 どちらも網目が細かく、多少雨が降っても水が中に入ってくる、なんてことはなさそうだ。

「ありがとう。やっぱり手馴れているだけあって二人の作ったものは丈夫そうだ」

 早速立ち上がって、履いて見せると二人は安心したのか胸を撫で下ろしていた。

 残すはルリとルビィの交換だけ。

「る、ルビィちゃん……これを」
「また腕を上げたじゃない。でもまだまだ私には適わないわね。はい、これ」

 恐る恐る渡すルリに対して顔を合わせようとはせずに受け取り、ルリの作った靴を観察してからルリに自分の作ったのを手渡していた。
 ルリからは見えないだろうが、ルビィの顔はまるで宝石のルビィのように真っ赤になっている。
 気恥しさからあんな言い方をしてしまったのだろう。

 素直じゃないが、そこもまたルビィの可愛いところなのだ。
 
 対するルリもルビィから受け取った靴と俺のあげた靴をを嬉しそうに抱きしめている。
 
「あ、ありがとうございます。お二人が作ってくれた靴は大切にします! ずっと……だ、誰かから何かを貰うなんて、け、経験してこなかったので嬉しくて……」

「ちょっと、もう! 泣かないでよ……ま、また作ってあげるわよ!」

 ルリは貰う喜びを、ルビィはあげる喜びを体感していた。
 二人しか居ない島だったのだから元から仲良くすればいいだけの話だったのにキッカケがなくて仲直りは出来ていなかった。
 今日のことでまた昔みたいに戻ってくれるといいな。

「さて、俺は早速二人の作ってくれた靴を履いて出掛けてこようかな」

 元々島の人間ではない俺がここに居るのは邪推だろう。
 いつから離れ離れになったのか知らないけれど、目一杯思い出に花を咲かせて欲しい。

 木の棒を手に取り、空腹を紛らわすため、みかんの実を口に含んで家を出た。
 特にやることも決まってはいないが、早速作ってくれた靴を履いて出歩きたかったのだ。
 まぁ特にやることもなかったので、家から少し歩いた所に生えている麻を少しだけ刈り取って戻った。

 すると、二人はすっかり打ち解けあって、隣同士に座り、今度は小物入れを作っている。
 その姿はまるで仲が悪かったなんて嘘みたいだった。
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