28 / 47
第4章 芳しい花には裏がある
1.早くしないと
しおりを挟む
二日間の休みが明けて、今日からまた授業が始まる。
私とミーチャは身支度を整えて、いつものようにリアンさんとウィリアムさんと共に、食堂で朝食を済ませた。
「ねえレティシア。あれ、ちょっと……」
隣のミーチャが小声で囁き、ある方向を指差して言う。
その先には、一人で食事をしているサーナリアさんの姿があった。
普段なら、彼女の周りには取り巻き連中が居たはずだ。
「先週のアレが原因だろうな」
ウィリアムさんが言った『アレ』とは、やはり私と彼女の虐め問題の事だろう。
授業が無かったこの二日間、私は学校の敷地内で出会ったクラスメイトに、彼女との件は全くの誤解だったと説明していた。
その中にはサーナリアさんの取り巻きも何人か含まれていたのだが、彼女はすっかり孤立してしまっている。
ああなってしまったのは私にも原因があるから、どうにかしてあげないと……。
「誤解だったっていうのに、何でサーナリアがぼっちにならなきゃいけないんだろうなぁ。なあ、昼はあの子も誘ってみようぜ!」
「マジか。いやまあ、レティシアが良いなら俺も文句は言わねぇけど」
「誘いを受けてくれるかは分かりませんけれど、試してみる価値はあるかもしれませんわね」
教室に着いても、彼女は一人のままだった。
私は朝の会でアレク先生に発言の機会を貰い、サーナリアさんと一緒に私への嫌がらせの件について説明させてもらった。
既に互いの誤解はとけていて、関係は修復した。先日は騒がせてしまって済まなかった、と簡単に言うならこう伝えた事になる。
一応はそれで全員納得してくれたようだけれど、クラスの雰囲気はまるっきり元通りとまではいかないのだろう。
いずれ時間が経てば皆忘れてくれるかもしれない。かなり待たなければならないのは確実だけれど、これで先日の件が解決するならそれが一番良い。
そして、昼休みがやって来た。
「サーナリアさん」
私と一緒に、ミーチャ達も彼女の机を囲むように集まり、今朝リアンさんが言っていたようにサーナリアさんを昼食に誘う事にした。
こうなるとは予想していなかったらしいサーナリアさんは、突然やって来た私達の顔を見回して戸惑っている。
「な、なんですか? あの、わたしに何のご用で……」
「ごめんなさい、貴女を困らせたい訳ではありませんの。もし宜しかったら、私達とお昼をご一緒しませんか?」
「お昼、ですか……?」
「そうそう! レティシアに聞いたぜ~。キミってあのケント先輩の妹なんだろ? それならもうオレ達とは知り合いっていうか、友達みたいなモンじゃん? だから一緒に昼飯でもどうかなーってみんなで話しててさ」
「どうかな、サーナリアさん」
「無理にとは言わねぇさ」
私達の言葉を受けた彼女は、不安そうに私の顔を見上げた。
「良いんですか? わたしなんかがお邪魔して……」
「邪魔だと思っていたらそもそも誘いませんわ。ほら、食堂が混む前に決めて下さいな」
「い、行きます! あの、ええと……お誘いしていただいて、とても……嬉しいですっ」
椅子から勢い良く立ち上がったサーナリアさん。
すると、ミーチャは彼女の手を引いてこう言った。
「じゃあ決まりですね! はい、さっさか食堂へレッツゴー!」
「え、あ、はい!」
グイグイとサーナリアさんとの距離を縮めていくミーチャに、私は思わず笑いを零す。
リアンさんは安心したように二人を眺めた後、私とウィリアムさんに顔を向けた。
「また友達が増えたな! これからまた賑やかになりそうだぜ」
「まあ、女子が増えるなら良いか。んじゃ、俺達も行くとすっか」
「ええ、行きましょう」
こうやって少しずつ、学校での生活が充実していけば良い。
そんな事を思いながら、私は二人と一緒にサーナリアさん達の後を追うのだった。
******
今日の昼はオレ、レティシア、ウィリアムの順に並んで飯を済ませた。
向かいには少し緊張しているようなサーナリアと、それをリラックスさせるような感じでミーチャが話題を振って盛り上げていた。
新しい人も一緒に食卓を囲むと、いつもと違ったふいんき……じゃなくて、雰囲気で楽しめて良いよな。
サーナリアも最後にはちょっとだけ笑ってくれて、若干だけどみんなと仲良くなってくれたみたいで本当に良かった。
昼休みが終わると、一年と三年の合同授業の為に講堂に集まる事になった。
クラス別に並んで着席する。座る順番は自由だったから、オレはすぐにレティシアの隣をゲットした。
またしてももう片側はウィリアムが確保していたけど、レティシアが座った位置がはじっこの席じゃなくて良かった。じゃないと一人しか隣に座れなくなるからな。
レティシアの近くに居ると良い匂いがするから、何か落ち着く。オレの鼻が良いから余計にそう思うのかもしれない。
昼休みが終わる頃には、講堂に全ての一、三年生クラスの生徒が集合した。
この中のどこかにケント先輩とウォルグ先輩が居るんだろうけど、人が多くてよく分からなかった。
「なあなあ、これってオレ達何の為に集められてるんだ?」
隣のレティシアにそう訊ねると、すぐに彼女は答えてくれた。
「先週ケントさんが仰っていたパートナーの件ですわ。それに、朝の会でもアレク先生が連絡していたはずですけれど……」
「連絡事項ぐらいちゃんと聞いとけよ、リアン。そんなんでまともに進級出来んのかぁ?」
「うるさいなぁ! ウィルなんかにとやかく言われたくないっつの!」
「リアンさん、あまり大きな声を出さないで。アレク先生がじっとこちらに目を向けていますわよ」
彼女に言われて、ふと前の方に顔を向ける。
何人か前に並んだ先生達の中で、真っ直ぐにオレだけを見つめる視線──物凄い迫力でガン見してくるアレク先生を見て、オレはビビった。
身体が凍ったように、姿勢良く背筋を伸ばしてしまう。
「ご、ごめん。静かにするよ」
「それが一番ですわね」
ぎゅっと唇を結んで黙ると、ウィリアムに鼻で笑われた。この授業が終わったら覚えとけよ。
授業開始の鐘が鳴り、アレク先生の隣に居た男の先生が一歩前に出た。
爽やかな水色の髪のその人は、別の学年の授業をやっている先生なんだろうか。見覚えが無いなぁ。
「皆さんこんにちは。一年生の皆さんとは初めましての方が多いですね。俺は高学年の魔物科目を担当している、ヘンリー・ジョーンズと申します。今回皆さんにお集まり頂いたのは、来週から始まるチーム制魔物討伐授業にあたっての説明と、パートナー申請についてのお話が目的です」
レティシアが言ってた通りだ。
ヘンリー先生はアレク先生とは正反対で、優しそうな印象の人だなと感じる。
「ここに並んだ先生方は、俺と同じ魔物科目を教えるアレク先生を始め、魔法・武術・回復という主要四科目を担当なさっている先生方です。このセイガフでは、将来ギルドや騎士団に所属する人材を多く排出する特色があるのはご存知ですよね? ギルドでも騎士団でも、勿論それ以外の職に就いたとしても、魔物から被害を被るのは避けられない事でしょう。そんな時、様々な魔物に対処出来る者を育成すべく誕生したのがこの学校です」
うんうん、うちのオヤジも同じ事言ってたなぁ。
だからオレもここに入学したワケだし、知ってて当たり前だよな。
「設立当初から現在まで続いている、魔物討伐の授業。二年生からは選択科目にもなっている授業なのですが、選択授業の方では同学年で少数の班を組んで行動するのに対し、今回説明するチーム制討伐授業では上級生と下級生がタッグを組み、討伐する魔物に応じたチームを編成する決まりがあります。討伐難易度によって様々な二人組を集め、大規模なチームを編成して強大な魔物を討つ経験を得る事。そして、魔物に日常生活を脅かされている地域の人々の役に立つ事。この二つが、この授業で到達すべき最終目標となっています」
一年生は三年生と組んで、先輩が卒業したら今度はオレ達が新しい一年生とチームを組む。
先輩から学んだ事を後輩に伝えて、学校での四年間で得た経験を未来に活かす。
オレのオヤジもそうやってここを卒業して、ギルドに所属して魔物と戦ってたんだ。今でもオヤジは強いけど、きっと学生時代から頑張ってたからそうなったんだろうな。
オレも、そんな風になりたい。
「可能であれば五時限目のこの時間内に、パートナーを決めて下さい。相手は先輩・後輩の関係であれば、誰を選んでも構いません。ただし、チームの掛け持ちは出来ませんよ? 誰と組むか決めた生徒は、パートナー申請の用紙を俺から受け取って下さい。二人のサインを記入し、誰でも良いので先生に提出して下さい。今すぐに決められないという人は、今週末までに提出するようお願いしますね」
ヘンリー先生の話が終わると、みんな席を立ち上がってパートナー探しが始まった。
どうしよう。誰に組んでもらえば良いんだろう。
相談しようと思って隣を見ると、レティシアは姿を消していた。そういえばウォルグ先輩からパートナーの誘いがあったもんな。
じゃあウィルは……
「お、居た居た! おーいケントー! 俺とパートナー組んでくれー!」
大きく手を振りながら、人混みの中を抜けてきたケント先輩にウィルが叫んだ。
「僕をご指名かい? 理由を聞かせてもらっても良いかな」
何とかこっちにやって来た先輩は、ウィルに笑いかけながらそう言った。
「知ってる三年で一番魔法が強そうだったからだな」
「随分シンプルな理由だね。そういう君は、どこが強みなのかな?」
「魔力のコントロールはかなり良いぜ。燃費も良い方だ。自分で言うのも何だが、こんなんでも一応特待生として入学しててな。実力はあるんだぜ?」
「ええぇー!? お前が特待生って、そんなの初めて聞いたぞ!」
「あれ、言ってなかったっけか? まあ、うん。そういうこった」
「どういうこったよ!?」
ウィルが特待生って、オレはこいつに酷い目にあわされたってのに……!
世の中って、理不尽だなぁ……。
「……ふむ。それだけ優秀だというのなら、パートナーのお誘いを受けても良いかもしれないね」
「俺を評価した理由はそれだけか?」
特待生だと言われてもリアクションが薄いケント先輩。
もしかしたら先輩も特待生入学だったりするのかな? だからそんなに驚いてないのかも。
「……僕の戦闘スタイルを補う、良いパートナーになりそうだと思ったんだ。君は確か魔法銃の使い手なんだろう? 良い身体をしているから、体術も得意そうに見える。接近戦でも問題無く戦える人を選ぼうと思っていたから、もし僕の見立て通りなら理想的な相手かもしれないからね」
「アンタの言う通りだ。互いに理想のパートナーになれそうだな」
「ふふっ、そうだね。それじゃあ早速ヘンリー先生から用紙を受け取ってこようか。こんなにすぐ良い相手に声を掛けられるとは思わなかったよ」
オレの目の前でトントン拍子で話が進み、二人は行ってしまった。
どうしよう。知ってる三年生の二人は、それぞれオレの友達のパートナーになってしまった。
見付かるかなぁ、オレのパートナー……。
私とミーチャは身支度を整えて、いつものようにリアンさんとウィリアムさんと共に、食堂で朝食を済ませた。
「ねえレティシア。あれ、ちょっと……」
隣のミーチャが小声で囁き、ある方向を指差して言う。
その先には、一人で食事をしているサーナリアさんの姿があった。
普段なら、彼女の周りには取り巻き連中が居たはずだ。
「先週のアレが原因だろうな」
ウィリアムさんが言った『アレ』とは、やはり私と彼女の虐め問題の事だろう。
授業が無かったこの二日間、私は学校の敷地内で出会ったクラスメイトに、彼女との件は全くの誤解だったと説明していた。
その中にはサーナリアさんの取り巻きも何人か含まれていたのだが、彼女はすっかり孤立してしまっている。
ああなってしまったのは私にも原因があるから、どうにかしてあげないと……。
「誤解だったっていうのに、何でサーナリアがぼっちにならなきゃいけないんだろうなぁ。なあ、昼はあの子も誘ってみようぜ!」
「マジか。いやまあ、レティシアが良いなら俺も文句は言わねぇけど」
「誘いを受けてくれるかは分かりませんけれど、試してみる価値はあるかもしれませんわね」
教室に着いても、彼女は一人のままだった。
私は朝の会でアレク先生に発言の機会を貰い、サーナリアさんと一緒に私への嫌がらせの件について説明させてもらった。
既に互いの誤解はとけていて、関係は修復した。先日は騒がせてしまって済まなかった、と簡単に言うならこう伝えた事になる。
一応はそれで全員納得してくれたようだけれど、クラスの雰囲気はまるっきり元通りとまではいかないのだろう。
いずれ時間が経てば皆忘れてくれるかもしれない。かなり待たなければならないのは確実だけれど、これで先日の件が解決するならそれが一番良い。
そして、昼休みがやって来た。
「サーナリアさん」
私と一緒に、ミーチャ達も彼女の机を囲むように集まり、今朝リアンさんが言っていたようにサーナリアさんを昼食に誘う事にした。
こうなるとは予想していなかったらしいサーナリアさんは、突然やって来た私達の顔を見回して戸惑っている。
「な、なんですか? あの、わたしに何のご用で……」
「ごめんなさい、貴女を困らせたい訳ではありませんの。もし宜しかったら、私達とお昼をご一緒しませんか?」
「お昼、ですか……?」
「そうそう! レティシアに聞いたぜ~。キミってあのケント先輩の妹なんだろ? それならもうオレ達とは知り合いっていうか、友達みたいなモンじゃん? だから一緒に昼飯でもどうかなーってみんなで話しててさ」
「どうかな、サーナリアさん」
「無理にとは言わねぇさ」
私達の言葉を受けた彼女は、不安そうに私の顔を見上げた。
「良いんですか? わたしなんかがお邪魔して……」
「邪魔だと思っていたらそもそも誘いませんわ。ほら、食堂が混む前に決めて下さいな」
「い、行きます! あの、ええと……お誘いしていただいて、とても……嬉しいですっ」
椅子から勢い良く立ち上がったサーナリアさん。
すると、ミーチャは彼女の手を引いてこう言った。
「じゃあ決まりですね! はい、さっさか食堂へレッツゴー!」
「え、あ、はい!」
グイグイとサーナリアさんとの距離を縮めていくミーチャに、私は思わず笑いを零す。
リアンさんは安心したように二人を眺めた後、私とウィリアムさんに顔を向けた。
「また友達が増えたな! これからまた賑やかになりそうだぜ」
「まあ、女子が増えるなら良いか。んじゃ、俺達も行くとすっか」
「ええ、行きましょう」
こうやって少しずつ、学校での生活が充実していけば良い。
そんな事を思いながら、私は二人と一緒にサーナリアさん達の後を追うのだった。
******
今日の昼はオレ、レティシア、ウィリアムの順に並んで飯を済ませた。
向かいには少し緊張しているようなサーナリアと、それをリラックスさせるような感じでミーチャが話題を振って盛り上げていた。
新しい人も一緒に食卓を囲むと、いつもと違ったふいんき……じゃなくて、雰囲気で楽しめて良いよな。
サーナリアも最後にはちょっとだけ笑ってくれて、若干だけどみんなと仲良くなってくれたみたいで本当に良かった。
昼休みが終わると、一年と三年の合同授業の為に講堂に集まる事になった。
クラス別に並んで着席する。座る順番は自由だったから、オレはすぐにレティシアの隣をゲットした。
またしてももう片側はウィリアムが確保していたけど、レティシアが座った位置がはじっこの席じゃなくて良かった。じゃないと一人しか隣に座れなくなるからな。
レティシアの近くに居ると良い匂いがするから、何か落ち着く。オレの鼻が良いから余計にそう思うのかもしれない。
昼休みが終わる頃には、講堂に全ての一、三年生クラスの生徒が集合した。
この中のどこかにケント先輩とウォルグ先輩が居るんだろうけど、人が多くてよく分からなかった。
「なあなあ、これってオレ達何の為に集められてるんだ?」
隣のレティシアにそう訊ねると、すぐに彼女は答えてくれた。
「先週ケントさんが仰っていたパートナーの件ですわ。それに、朝の会でもアレク先生が連絡していたはずですけれど……」
「連絡事項ぐらいちゃんと聞いとけよ、リアン。そんなんでまともに進級出来んのかぁ?」
「うるさいなぁ! ウィルなんかにとやかく言われたくないっつの!」
「リアンさん、あまり大きな声を出さないで。アレク先生がじっとこちらに目を向けていますわよ」
彼女に言われて、ふと前の方に顔を向ける。
何人か前に並んだ先生達の中で、真っ直ぐにオレだけを見つめる視線──物凄い迫力でガン見してくるアレク先生を見て、オレはビビった。
身体が凍ったように、姿勢良く背筋を伸ばしてしまう。
「ご、ごめん。静かにするよ」
「それが一番ですわね」
ぎゅっと唇を結んで黙ると、ウィリアムに鼻で笑われた。この授業が終わったら覚えとけよ。
授業開始の鐘が鳴り、アレク先生の隣に居た男の先生が一歩前に出た。
爽やかな水色の髪のその人は、別の学年の授業をやっている先生なんだろうか。見覚えが無いなぁ。
「皆さんこんにちは。一年生の皆さんとは初めましての方が多いですね。俺は高学年の魔物科目を担当している、ヘンリー・ジョーンズと申します。今回皆さんにお集まり頂いたのは、来週から始まるチーム制魔物討伐授業にあたっての説明と、パートナー申請についてのお話が目的です」
レティシアが言ってた通りだ。
ヘンリー先生はアレク先生とは正反対で、優しそうな印象の人だなと感じる。
「ここに並んだ先生方は、俺と同じ魔物科目を教えるアレク先生を始め、魔法・武術・回復という主要四科目を担当なさっている先生方です。このセイガフでは、将来ギルドや騎士団に所属する人材を多く排出する特色があるのはご存知ですよね? ギルドでも騎士団でも、勿論それ以外の職に就いたとしても、魔物から被害を被るのは避けられない事でしょう。そんな時、様々な魔物に対処出来る者を育成すべく誕生したのがこの学校です」
うんうん、うちのオヤジも同じ事言ってたなぁ。
だからオレもここに入学したワケだし、知ってて当たり前だよな。
「設立当初から現在まで続いている、魔物討伐の授業。二年生からは選択科目にもなっている授業なのですが、選択授業の方では同学年で少数の班を組んで行動するのに対し、今回説明するチーム制討伐授業では上級生と下級生がタッグを組み、討伐する魔物に応じたチームを編成する決まりがあります。討伐難易度によって様々な二人組を集め、大規模なチームを編成して強大な魔物を討つ経験を得る事。そして、魔物に日常生活を脅かされている地域の人々の役に立つ事。この二つが、この授業で到達すべき最終目標となっています」
一年生は三年生と組んで、先輩が卒業したら今度はオレ達が新しい一年生とチームを組む。
先輩から学んだ事を後輩に伝えて、学校での四年間で得た経験を未来に活かす。
オレのオヤジもそうやってここを卒業して、ギルドに所属して魔物と戦ってたんだ。今でもオヤジは強いけど、きっと学生時代から頑張ってたからそうなったんだろうな。
オレも、そんな風になりたい。
「可能であれば五時限目のこの時間内に、パートナーを決めて下さい。相手は先輩・後輩の関係であれば、誰を選んでも構いません。ただし、チームの掛け持ちは出来ませんよ? 誰と組むか決めた生徒は、パートナー申請の用紙を俺から受け取って下さい。二人のサインを記入し、誰でも良いので先生に提出して下さい。今すぐに決められないという人は、今週末までに提出するようお願いしますね」
ヘンリー先生の話が終わると、みんな席を立ち上がってパートナー探しが始まった。
どうしよう。誰に組んでもらえば良いんだろう。
相談しようと思って隣を見ると、レティシアは姿を消していた。そういえばウォルグ先輩からパートナーの誘いがあったもんな。
じゃあウィルは……
「お、居た居た! おーいケントー! 俺とパートナー組んでくれー!」
大きく手を振りながら、人混みの中を抜けてきたケント先輩にウィルが叫んだ。
「僕をご指名かい? 理由を聞かせてもらっても良いかな」
何とかこっちにやって来た先輩は、ウィルに笑いかけながらそう言った。
「知ってる三年で一番魔法が強そうだったからだな」
「随分シンプルな理由だね。そういう君は、どこが強みなのかな?」
「魔力のコントロールはかなり良いぜ。燃費も良い方だ。自分で言うのも何だが、こんなんでも一応特待生として入学しててな。実力はあるんだぜ?」
「ええぇー!? お前が特待生って、そんなの初めて聞いたぞ!」
「あれ、言ってなかったっけか? まあ、うん。そういうこった」
「どういうこったよ!?」
ウィルが特待生って、オレはこいつに酷い目にあわされたってのに……!
世の中って、理不尽だなぁ……。
「……ふむ。それだけ優秀だというのなら、パートナーのお誘いを受けても良いかもしれないね」
「俺を評価した理由はそれだけか?」
特待生だと言われてもリアクションが薄いケント先輩。
もしかしたら先輩も特待生入学だったりするのかな? だからそんなに驚いてないのかも。
「……僕の戦闘スタイルを補う、良いパートナーになりそうだと思ったんだ。君は確か魔法銃の使い手なんだろう? 良い身体をしているから、体術も得意そうに見える。接近戦でも問題無く戦える人を選ぼうと思っていたから、もし僕の見立て通りなら理想的な相手かもしれないからね」
「アンタの言う通りだ。互いに理想のパートナーになれそうだな」
「ふふっ、そうだね。それじゃあ早速ヘンリー先生から用紙を受け取ってこようか。こんなにすぐ良い相手に声を掛けられるとは思わなかったよ」
オレの目の前でトントン拍子で話が進み、二人は行ってしまった。
どうしよう。知ってる三年生の二人は、それぞれオレの友達のパートナーになってしまった。
見付かるかなぁ、オレのパートナー……。
0
あなたにおすすめの小説
つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました
蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈
絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。
絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!!
聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ!
ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!!
+++++
・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)
悪役令嬢に成り代わったのに、すでに詰みってどういうことですか!?
ぽんぽこ狸
恋愛
仕事帰りのある日、居眠り運転をしていたトラックにはねられて死んでしまった主人公。次に目を覚ますとなにやら暗くジメジメした場所で、自分に仕えているというヴィンスという男の子と二人きり。
彼から話を聞いているうちに、なぜかその話に既視感を覚えて、確認すると昔読んだことのある児童向けの小説『ララの魔法書!』の世界だった。
その中でも悪役令嬢である、クラリスにどうやら成り代わってしまったらしい。
混乱しつつも話をきていくとすでに原作はクラリスが幽閉されることによって終結しているようで愕然としているさなか、クラリスを見限り原作の主人公であるララとくっついた王子ローレンスが、訪ねてきて━━━━?!
原作のさらに奥深くで動いていた思惑、魔法玉(まほうぎょく)の謎、そして原作の男主人公だった完璧な王子様の本性。そのどれもに翻弄されながら、なんとか生きる一手を見出す、学園ファンタジー!
ローレンスの性格が割とやばめですが、それ以外にもダークな要素強めな主人公と恋愛?をする、キャラが二人ほど、登場します。世界観が殺伐としているので重い描写も多いです。読者さまが色々な意味でドキドキしてくれるような作品を目指して頑張りますので、よろしくお願いいたします。
完結しました!最後の一章分は遂行していた分がたまっていたのと、話が込み合っているので一気に二十万文字ぐらい上げました。きちんと納得できる結末にできたと思います。ありがとうございました。
わがままな婚約者はお嫌いらしいので婚約解消を提案してあげたのに、反応が思っていたのと違うんですが
水谷繭
恋愛
公爵令嬢のリリアーヌは、婚約者のジェラール王子を追いかけてはいつも冷たくあしらわれていた。
王子の態度に落ち込んだリリアーヌが公園を散策していると、転んで頭を打ってしまう。
数日間寝込むはめになったリリアーヌ。眠っている間に前世の記憶が流れ込み、リリアーヌは今自分がいるのは前世で読んでいたWeb漫画の世界だったことに気づく。
記憶を思い出してみると冷静になり、あれだけ執着していた王子をどうしてそこまで好きだったのかわからなくなる。
リリアーヌは王子と婚約解消して、新しい人生を歩むことを決意するが……
◆表紙はGirly Drop様からお借りしました
◇小説家になろうにも掲載しています
悪役令嬢に転生したので地味令嬢に変装したら、婚約者が離れてくれないのですが。
槙村まき
恋愛
スマホ向け乙女ゲーム『時戻りの少女~ささやかな日々をあなたと共に~』の悪役令嬢、リシェリア・オゼリエに転生した主人公は、処刑される未来を変えるために地味に地味で地味な令嬢に変装して生きていくことを決意した。
それなのに学園に入学しても婚約者である王太子ルーカスは付きまとってくるし、ゲームのヒロインからはなぜか「私の代わりにヒロインになって!」とお願いされるし……。
挙句の果てには、ある日隠れていた図書室で、ルーカスに唇を奪われてしまう。
そんな感じで悪役令嬢がヤンデレ気味な王子から逃げようとしながらも、ヒロインと共に攻略対象者たちを助ける? 話になるはず……!
第二章以降は、11時と23時に更新予定です。
他サイトにも掲載しています。
よろしくお願いします。
25.4.25 HOTランキング(女性向け)四位、ありがとうございます!
バッドエンド予定の悪役令嬢が溺愛ルートを選んでみたら、お兄様に愛されすぎて脇役から主役になりました
美咲アリス
恋愛
目が覚めたら公爵令嬢だった!?貴族に生まれ変わったのはいいけれど、美形兄に殺されるバッドエンドの悪役令嬢なんて絶対困る!!死にたくないなら冷酷非道な兄のヴィクトルと仲良くしなきゃいけないのにヴィクトルは氷のように冷たい男で⋯⋯。「どうしたらいいの?」果たして私の運命は?
処刑前夜に逃亡した悪役令嬢、五年後に氷の公爵様に捕まる〜冷徹旦那様が溺愛パパに豹変しましたが私の抱いている赤ちゃん実は人生2周目です〜
放浪人
恋愛
「処刑されるなんて真っ平ごめんです!」 無実の罪で投獄された悪役令嬢レティシア(中身は元社畜のアラサー日本人)は、処刑前夜、お腹の子供と共に脱獄し、辺境の田舎村へ逃亡した。 それから五年。薬師として穏やかに暮らしていた彼女のもとに、かつて自分を冷遇し、処刑を命じた夫――「氷の公爵」アレクセイが現れる。 殺される!と震えるレティシアだったが、再会した彼は地面に頭を擦り付け、まさかの溺愛キャラに豹変していて!?
「愛しているレティシア! 二度と離さない!」 「(顔が怖いです公爵様……!)」
不器用すぎて顔が怖い旦那様の暴走する溺愛。 そして、二人の息子であるシオン(1歳)は、実は前世で魔王を倒した「英雄」の生まれ変わりだった! 「パパとママは僕が守る(物理)」 最強の赤ちゃんが裏で暗躍し、聖女(自称)の陰謀も、帝国の侵略も、古代兵器も、ガラガラ一振りで粉砕していく。
死に戻ったら、私だけ幼児化していた件について
えくれあ
恋愛
セラフィーナは6歳の時に王太子となるアルバートとの婚約が決まって以降、ずっと王家のために身を粉にして努力を続けてきたつもりだった。
しかしながら、いつしか悪女と呼ばれるようになり、18歳の時にアルバートから婚約解消を告げられてしまう。
その後、死を迎えたはずのセラフィーナは、目を覚ますと2年前に戻っていた。だが、周囲の人間はセラフィーナが死ぬ2年前の姿と相違ないのに、セラフィーナだけは同じ年齢だったはずのアルバートより10歳も幼い6歳の姿だった。
死を迎える前と同じこともあれば、年齢が異なるが故に違うこともある。
戸惑いを覚えながらも、死んでしまったためにできなかったことを今度こそ、とセラフィーナは心に誓うのだった。
悪役令嬢の心変わり
ナナスケ
恋愛
不慮の事故によって20代で命を落としてしまった雨月 夕は乙女ゲーム[聖女の涙]の悪役令嬢に転生してしまっていた。
7歳の誕生日10日前に前世の記憶を取り戻した夕は悪役令嬢、ダリア・クロウリーとして最悪の結末 処刑エンドを回避すべく手始めに婚約者の第2王子との婚約を破棄。
そして、処刑エンドに繋がりそうなルートを回避すべく奮闘する勘違いラブロマンス!
カッコイイ系主人公が男社会と自分に仇なす者たちを斬るっ!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる