赤髪と狼、旅に出る。 〜未知のスキル【オート周回】で(将来的に)ダンジョンを無双する〜

由岐

文字の大きさ
25 / 57
第3章 封印の少女

1.現し身であれど

しおりを挟む
 ザインが生まれ持ったスキル──『オート周回』。
 その力は、偶然とも運命とも言える奇跡によって、エルとフィルという二人の仲間の命を救っていた。
 使用者の魔力で構成された肉体を持つコピー体。
 ザインの善悪の区別や、所持する持ち物や戦い方を基にして行動する彼は、楽しそうに笑い合うザイン達を静かに眺めていた。

「……なんだか、ふしぎなきもちに、なりますね」

 会話がぎこちない以外は、ザインとほぼ何も変わらない。
 コピー体である彼からしてみても、自分と同じ姿形をした人間が目の前に居るというのは、何だか奇妙に感じるのだ。
 けれどその感覚は、決して不快なものではなく。
 胸の中心が、どこかポカポカと暖かくなっていくような──

「きみが、たのしそうにしていると……おれも、すこしだけ……」
「おーい! そういえばお前、この後どうするんだ?」

 ──そんなザインからの呼び掛けに、コピー体は思考を切り替えて答える。

「……きみがのぞむのであれば、このままだんじょんでのたんさくを、くりかえします。それが、おれのやくわりなので」

 もう少しで何かを掴めたように思うけれど、彼が今ザインに必要とされているのは、己の持つ周回能力なのだ。
 そう結論を出したコピー体は、そのまま話を続ける。

「おれのからだは、まりょくがつきるまで、やすみなく……なんどもだんじょんを、しゅうかいします。そのあいだにあつめたもの、たたかったけいけんは……きみにひきつがれます」
「俺に、引き継ぐ……」

 コピー体の言葉に、ザインは一つ思い当たる節があった。
 ここ数日感じていた身体の違和感。
 何故だか身体が軽くなったような、妙に体調が良いような──些細な違和感ではあれど、今ならばその事象にも説明がつく。

 魔物を倒すと、それに応じた能力が上昇する。
 筋力、体力、魔力など、少しずつではあるが変化が起きるのは有名な話だ。
 ただこれは、武器や魔法、スキルによって魔物を討ち果たした本人にのみ発生するもの。
 ザイン本人は認定試験で五頭のゴブリンしか倒していないはずだが、彼のスキル『オート周回』によって、ザインのコピー体がそれ以上の数の魔物を倒している。

 スキルで生まれたコピー体が得た経験は、そっくりそのままザインの元へ受け継がれる──それが、事実であるのなら。

(俺が何もしていなくても、自動的に強くなっていくって事か……‼︎)

「それから……ぽーちを、かくにんしてみてください」

 促されるままに、ザインは自身の腰元のポーチを確認した。
 すると、その中にはかなりの量の薬草や木の実、魔物から得たであろう牙などが追加されているではないか。

「まさか、これもお前が……?」
「はい。これまでてにいれたあいてむを、きみのぽーちにてんそうしました」

 たった今ザインが確認するまで、これだけのアイテムが詰め込まれているなどあり得ないはずだった。
 しかし、アイテム収集や経験の引き継ぎが『オート周回』の基本技能なのだとすれば……。

(これって、使い方によってはかなり有能なスキルなんじゃないか……?)

 考え込み始めたザインに、コピー体が更に説明を続ける。

「きみは、このだんじょんをこうりゃくしました。なので、じかいからは、さいしんぶまでのしゅうかいがかのうです」
「……いやいや、待ってくれ! それだと今度からお前一人でダンジョンマスターと戦う事になるんじゃないか⁉︎」
「い、いくらザインさんの分身でも、流石にそれは危険なのではないでしょうか……?」

 予想外の発言が飛び出し、ザインは慌てて身を乗り出した。
 ザインのコピーと言えども、一人だけでダンジョンマスターを相手にするのは自殺行為だ。ザイン自身ですら、エル達と会うまでは常にジルと行動を共にしていたのだから。
 けれどもコピー体は、至って冷静に切り返してくる。

「きみからえたじょうほうで、このだんしょんのまもの……せんとうのたちまわりは、はあくできました。すぺっくてきにも、とくにもんだいはありません」
「そ、そうは言ってもなぁ……」

 だが、コピー体の発言は的外れなものではない。
 ザインと同じ実力を発揮するのであれば、弱点を知っている魔樹ポポイア相手なら、一人でもどうにかなってしまうだろう。
 それを可能にしてしまうのが、母ガラッシアから譲り受けた風神の弓。
 この武器すらもコピーされているのだから、並みの新人探索者を遥かに凌ぐ戦闘力を発揮するのは当然だった。

 しかし、そうした油断が時に命取りとなる事をザインは知っている。
 ザインは軽く溜息を吐き、コピー体へ目を向けて言う。

「……危なくなったら、すぐ撤退する事。それだけは約束してくれ」
「どうして、ですか……? おれは、もしもたおされてしまっても、なんどでもよびだせるものなのに……」

 きょとん、とするコピー体。
 ザインはそんな彼の両肩に手を置いて、改めて告げる。

「違うよ、お前はモノなんかじゃない! こうして話が出来る、れっきとした命なんだ!」
「いの、ち……?」
「少なくとも俺は……そう思ってる。だから、約束してくれ!」

 真剣な表情で念押しされたコピー体は、数秒の沈黙の後、口を開いた。

「……わかり、ました。やくそくします」
「ああ、そうしてくれ。……自分と同じ顔をした奴が消えるだなんて、母さんも悲しむだろうしな」




 それから、コピー体としばらく話をして。
 今日のところは彼とはここで別れ、無理のない範囲でポポイアの森を周回してもらう事になった。
 勿論、ザインと交わした約束──もしもの時は撤退するように頼んである。
『オート周回』については、これからもコピー体が周回を続けていればレベルが上がり、やれる事が増えていくとの説明を受けた。
 具体的な内容は彼にもまだ分からないらしいが、実際にレベルアップすれば、自然と理解出来るようになるという。

「ひとまず、今日はここでお別れだな」
「コピーさん、また今度お会い出来る日を楽しみにしていますね」
「怪我には気を付けて下さいね!」
「ワフッ!」
「はい。ありがとうございます」

 ザインが胸の探索者バッジに触れると、三人とジルの身体を光が包み込んでいく。
 次の瞬間、光と共に彼らの姿が消え──ポポイアの森入り口へと転送されていった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

ギャルい女神と超絶チート同盟〜女神に贔屓されまくった結果、主人公クラスなチート持ち達の同盟リーダーとなってしまったんだが〜

平明神
ファンタジー
 ユーゴ・タカトー。  それは、女神の「推し」になった男。  見た目ギャルな女神ユーラウリアの色仕掛けに負け、何度も異世界を救ってきた彼に新たに下った女神のお願いは、転生や転移した者達を探すこと。  彼が出会っていく者たちは、アニメやラノベの主人公を張れるほど強くて魅力的。だけど、みんなチート的な能力や武器を持つ濃いキャラで、なかなか一筋縄ではいかない者ばかり。  彼らと仲間になって同盟を組んだユーゴは、やがて彼らと共に様々な異世界を巻き込む大きな事件に関わっていく。  その過程で、彼はリーダーシップを発揮し、新たな力を開花させていくのだった!  女神から貰ったバラエティー豊かなチート能力とチートアイテムを駆使するユーゴは、どこへ行ってもみんなの度肝を抜きまくる!  さらに、彼にはもともと特殊な能力があるようで……?  英雄、聖女、魔王、人魚、侍、巫女、お嬢様、変身ヒーロー、巨大ロボット、歌姫、メイド、追放、ざまあ───  なんでもありの異世界アベンジャーズ!  女神の使徒と異世界チートな英雄たちとの絆が紡ぐ、運命の物語、ここに開幕! ※不定期更新。 ※感想やお気に入り登録をして頂けますと、作者のモチベーションがあがり、エタることなくもっと面白い話が作れます。

親友と婚約者に裏切られ仕事も家も失い自暴自棄になって放置されたダンジョンで暮らしてみたら可愛らしいモンスターと快適な暮らしが待ってました

空地大乃
ファンタジー
ダンジョンが日常に溶け込んだ世界――。 平凡な会社員の風間は、身に覚えのない情報流出の責任を押しつけられ、会社をクビにされてしまう。さらに、親友だと思っていた男に婚約者を奪われ、婚約も破棄。すべてが嫌になった風間は自暴自棄のまま山へ向かい、そこで人々に見捨てられた“放置ダンジョン”を見つける。 どこか自分と重なるものを感じた風間は、そのダンジョンに住み着くことを決意。ところが奥には、愛らしいモンスターたちがひっそり暮らしていた――。思いがけず彼らに懐かれた風間は、さまざまなモンスターと共にダンジョンでのスローライフを満喫していくことになる。

嵌められたオッサン冒険者、Sランクモンスター(幼体)に懐かれたので、その力で復讐しようと思います

ゆさま
ファンタジー
ベテランオッサン冒険者が、美少女パーティーにオヤジ狩りの標的にされてしまった。生死の境をさまよっていたら、Sランクモンスターに懐かれて……。 懐いたモンスターが成長し、美女に擬態できるようになって迫ってきます。どうするオッサン!?

部屋で寝てたら知らない内に転生ここどこだよぉぉぉ

ケンティ
ファンタジー
うぁー よく寝た さー会社行くかー あ? ここどこだよーぉぉ

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

MP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

魔物に嫌われる「レベル0」の魔物使い。命懸けで仔犬を助けたら―実は神域クラスしかテイムできない規格外でした

たつき
ファンタジー
魔物使いでありながらスライム一匹従えられないカイルは、3年間尽くしたギルドを「無能」として追放される。 同世代のエリートたちに「魔物避けの道具」として危険な遺跡に連れ出され、最後は森の主(ヌシ)を前に囮として見捨てられた。 死を覚悟したカイルが崩落した壁の先で見つけたのは、今にも息絶えそうな一匹の白い仔犬。 「自分と同じように、理不尽に見捨てられたこの子だけは助けたい」 自分の命を顧みず、カイルが全魔力を込めて「テイム」を試みた瞬間、眠っていた真の才能が目覚める。

ただのFランク探索者さん、うっかりSランク魔物をぶっとばす 規格外ダンジョンに住んでいるので、無自覚に最強でした

むらくも航
ファンタジー
旧題:ただのFランク探索者さん、うっかりSランク魔物をぶっとばして大バズりしてしまう~今まで住んでいた自宅は、最強種が住む規格外ダンジョンでした~ Fランク探索者の『彦根ホシ』は、幼馴染のダンジョン配信に助っ人として参加する。 配信は順調に進むが、二人はトラップによって誰も討伐したことのないSランク魔物がいる階層へ飛ばされてしまう。 誰もが生還を諦めたその時、Fランク探索者のはずのホシが立ち上がり、撮れ高を気にしながら余裕でSランク魔物をボコボコにしてしまう。 そんなホシは、ぼそっと一言。 「うちのペット達の方が手応えあるかな」 それからホシが配信を始めると、彼の自宅に映る最強の魔物たち・超希少アイテムに世間はひっくり返り、バズりにバズっていく──。

処理中です...