赤髪と狼、旅に出る。 〜未知のスキル【オート周回】で(将来的に)ダンジョンを無双する〜

由岐

文字の大きさ
56 / 57
第4章 怪しい影

18.疑惑

しおりを挟む
 探索者バッジの機能によって『カピア洞窟』を脱出したザイン達。
 四人はダンジョンの外で待機させていたジルとマロウの背に乗って、採取してきた竜翡翠を『イスカ・トゥアラ大農場』のセッカに無事に届ける事が出来た……のだったが。

「どうしたんです、師匠? さっきからずっと食事の手が止まってますが……」
「……え、あ、ああ。ごめんごめん!」

 ダンジョンを出てからすっかり空腹になっていたザイン達は、セッカや農場の人々からの厚意で夕食を振舞われていた。
 農場で採れた新鮮な野菜をふんだんに使ったシチューに、香り高いハーブを練りこんだ、小麦の旨味を感じるパン。
 食後のデザートとしてジューシーな果物も皿に盛り付けられたテーブルで、ザインは一人でずっと考え込んでいた。
 その内容とは、『カピア洞窟』の第四階層で別れたきりの大剣使いヴァーゲについてだ。

 何故ヴァーゲはあの場に居たのか。
 探索者でもない身で……いくら強いからといって、単身でダンジョンの最深部にまで潜ってダンジョンマスターを倒した理由が分からない。
 それが──ダンジョンコアの破壊でなければ、の話だが。

 ザインが慌ててスプーンを口に運び始めると、向かいに座っていたエルが静かに呟いた。

「もしかして……ですけれど。ザインさんは、あのヴァーゲという方の事が気になってるのではありませんか?」
「……分かっちゃう、か」

 エルに気付かれてしまっていたと知り、再びザインの手が止まる。

「わたしも……やはり、あの方の事が妙に引っかかっていたので」
「……ワタシもあの場ではあえて何も言わなかったけれど、普通に考えて不自然よね」
「やっぱり……そうとしか思えない、よな……」
「えっ、どういう事ですか?」

 ザインやカノン達の話題にいまいちついて行けていないフィルは、三人の顔をきょろきょろと見回していた。

「……ヴァーゲがあの時言ってた事、覚えてるか? 『自分は探索者じゃない』ってさ」
「ああ……そういえば言ってましたね。探索者じゃないのにダンジョンマスターを倒せるだなんて、あの年齢でどんな人生を送っていればああなれるんでしょう?」
「それも勿論気にはなるけど、一番はやっぱり……どうしてあいつは、一人でダンジョンマスターを倒す必要があったのか。それから、何でヴァーゲはダンジョンに立ち入る事が出来たのか、だ」
「あっ……! 聖騎士団が封鎖してるはずのダンジョンに、一般人が立ち行ってるって事ですか!!」

 ここ最近発生しているという、ダンジョンコアの破壊によるダンジョンの消滅事件。
 その犯人の足取りが掴めていない白百合聖騎士団は、見回りの強化と一部ダンジョンの封鎖に乗り出していたはずである。
 ならば、どうして『カピア洞窟』には騎士団の見張りが無かったのだろう?
 そして……自身は探索者ではないと言い切った、ヴァーゲの目的は何だったのか?
 その二つは、全く無関係の事柄だと言えるのだろうか……?

「……ひとまず、今夜はセッカさんに甘えて泊まらせてもらおう。今日は皆も疲れてるだろうしな」
「朝になったら王都に直行ね。依頼の完了報告は勿論の事、『カピア洞窟』に関する話もしておく必要があるもの」

 ザインとカノンの言葉に、姉弟は深く頷いた。

(これでもしも、ヴァーゲがダンジョンコア破壊の犯人だったとしたら……)

 ダンジョンの消滅は、国の資源確保に関わる重大事件だ。
 この情報をギルドと聖騎士団に報告すれば、ヴァーゲはこの事件の重要参考人として捜索される事になるだろう。
 その間にヴァーゲが犯人であるという証拠が発見された場合、今度は指名手配犯として探されるはずだ。



 ────────────



 翌朝、農場の敷地内にある家の客間にて睡眠をとったザイン達は、軽く朝食を済ませて出発の準備を急ぐ。
 そうして間も無く王都へ向かおうかという時、今回の依頼人であったセッカから「無事に薬が完成した」との報告が入った。
 竜翡翠に蓄積された特別な魔力によって、黄色く変色し魔力が減少してしまった薬草畑も、じきに回復するはずだと笑顔で感謝を述べられた。
 この農場の薬草が元通りになれば、少しずつ市場にも多くの薬草が出回るようになるだろう。そうすれば、王都で待つ薬品店『ねこのしっぽ』の看板娘レナの悩みも解決するはずだ。

「それじゃあセッカさん、農場の皆さん、どうかお元気で! 美味しい料理、ありがとうございました!」
「こちらこそ、皆さんには大変お世話になりました! 薬草の栽培、これからも頑張らせて頂きますね!」

 ザインは颯爽とジルの背中に飛び乗り、フィルを引っ張り上げて背に乗せてやる。
 カノンとエルもしっかりとマロウに跨がって、四人はイスカ大草原の彼方にある王都ノーティオを目指して出立した。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

MP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

親友と婚約者に裏切られ仕事も家も失い自暴自棄になって放置されたダンジョンで暮らしてみたら可愛らしいモンスターと快適な暮らしが待ってました

空地大乃
ファンタジー
ダンジョンが日常に溶け込んだ世界――。 平凡な会社員の風間は、身に覚えのない情報流出の責任を押しつけられ、会社をクビにされてしまう。さらに、親友だと思っていた男に婚約者を奪われ、婚約も破棄。すべてが嫌になった風間は自暴自棄のまま山へ向かい、そこで人々に見捨てられた“放置ダンジョン”を見つける。 どこか自分と重なるものを感じた風間は、そのダンジョンに住み着くことを決意。ところが奥には、愛らしいモンスターたちがひっそり暮らしていた――。思いがけず彼らに懐かれた風間は、さまざまなモンスターと共にダンジョンでのスローライフを満喫していくことになる。

嵌められたオッサン冒険者、Sランクモンスター(幼体)に懐かれたので、その力で復讐しようと思います

ゆさま
ファンタジー
ベテランオッサン冒険者が、美少女パーティーにオヤジ狩りの標的にされてしまった。生死の境をさまよっていたら、Sランクモンスターに懐かれて……。 懐いたモンスターが成長し、美女に擬態できるようになって迫ってきます。どうするオッサン!?

ただのFランク探索者さん、うっかりSランク魔物をぶっとばす 規格外ダンジョンに住んでいるので、無自覚に最強でした

むらくも航
ファンタジー
旧題:ただのFランク探索者さん、うっかりSランク魔物をぶっとばして大バズりしてしまう~今まで住んでいた自宅は、最強種が住む規格外ダンジョンでした~ Fランク探索者の『彦根ホシ』は、幼馴染のダンジョン配信に助っ人として参加する。 配信は順調に進むが、二人はトラップによって誰も討伐したことのないSランク魔物がいる階層へ飛ばされてしまう。 誰もが生還を諦めたその時、Fランク探索者のはずのホシが立ち上がり、撮れ高を気にしながら余裕でSランク魔物をボコボコにしてしまう。 そんなホシは、ぼそっと一言。 「うちのペット達の方が手応えあるかな」 それからホシが配信を始めると、彼の自宅に映る最強の魔物たち・超希少アイテムに世間はひっくり返り、バズりにバズっていく──。

部屋で寝てたら知らない内に転生ここどこだよぉぉぉ

ケンティ
ファンタジー
うぁー よく寝た さー会社行くかー あ? ここどこだよーぉぉ

出来損ない貴族の三男は、謎スキル【サブスク】で世界最強へと成り上がる〜今日も僕は、無能を演じながら能力を徴収する〜

シマセイ
ファンタジー
実力至上主義の貴族家に転生したものの、何の才能も持たない三男のルキウスは、「出来損ない」として優秀な兄たちから虐げられる日々を送っていた。 起死回生を願った五歳の「スキルの儀」で彼が授かったのは、【サブスクリプション】という誰も聞いたことのない謎のスキル。 その結果、彼の立場はさらに悪化。完全な「クズ」の烙印を押され、家族から存在しない者として扱われるようになってしまう。 絶望の淵で彼に寄り添うのは、心優しき専属メイドただ一人。 役立たずと蔑まれたこの謎のスキルが、やがて少年の運命を、そして世界を静かに揺るがしていくことを、まだ誰も知らない。

異世界ビルメン~清掃スキルで召喚された俺、役立たずと蔑まれ投獄されたが、実は光の女神の使徒でした~

松永 恭
ファンタジー
三十三歳のビルメン、白石恭真(しらいし きょうま)。 異世界に召喚されたが、与えられたスキルは「清掃」。 「役立たず」と蔑まれ、牢獄に放り込まれる。 だがモップひと振りで汚れも瘴気も消す“浄化スキル”は規格外。 牢獄を光で満たした結果、強制釈放されることに。 やがて彼は知らされる。 その力は偶然ではなく、光の女神に選ばれし“使徒”の証だと――。 金髪エルフやクセ者たちと繰り広げる、 戦闘より掃除が多い異世界ライフ。 ──これは、汚れと戦いながら世界を救う、 笑えて、ときにシリアスなおじさん清掃員の奮闘記である。

処理中です...