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第4章 怪しい影
18.疑惑
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探索者バッジの機能によって『カピア洞窟』を脱出したザイン達。
四人はダンジョンの外で待機させていたジルとマロウの背に乗って、採取してきた竜翡翠を『イスカ・トゥアラ大農場』のセッカに無事に届ける事が出来た……のだったが。
「どうしたんです、師匠? さっきからずっと食事の手が止まってますが……」
「……え、あ、ああ。ごめんごめん!」
ダンジョンを出てからすっかり空腹になっていたザイン達は、セッカや農場の人々からの厚意で夕食を振舞われていた。
農場で採れた新鮮な野菜をふんだんに使ったシチューに、香り高いハーブを練りこんだ、小麦の旨味を感じるパン。
食後のデザートとしてジューシーな果物も皿に盛り付けられたテーブルで、ザインは一人でずっと考え込んでいた。
その内容とは、『カピア洞窟』の第四階層で別れたきりの大剣使いヴァーゲについてだ。
何故ヴァーゲはあの場に居たのか。
探索者でもない身で……いくら強いからといって、単身でダンジョンの最深部にまで潜ってダンジョンマスターを倒した理由が分からない。
それが──ダンジョンコアの破壊でなければ、の話だが。
ザインが慌ててスプーンを口に運び始めると、向かいに座っていたエルが静かに呟いた。
「もしかして……ですけれど。ザインさんは、あのヴァーゲという方の事が気になってるのではありませんか?」
「……分かっちゃう、か」
エルに気付かれてしまっていたと知り、再びザインの手が止まる。
「わたしも……やはり、あの方の事が妙に引っかかっていたので」
「……ワタシもあの場ではあえて何も言わなかったけれど、普通に考えて不自然よね」
「やっぱり……そうとしか思えない、よな……」
「えっ、どういう事ですか?」
ザインやカノン達の話題にいまいちついて行けていないフィルは、三人の顔をきょろきょろと見回していた。
「……ヴァーゲがあの時言ってた事、覚えてるか? 『自分は探索者じゃない』ってさ」
「ああ……そういえば言ってましたね。探索者じゃないのにダンジョンマスターを倒せるだなんて、あの年齢でどんな人生を送っていればああなれるんでしょう?」
「それも勿論気にはなるけど、一番はやっぱり……どうしてあいつは、一人でダンジョンマスターを倒す必要があったのか。それから、何でヴァーゲはダンジョンに立ち入る事が出来たのか、だ」
「あっ……! 聖騎士団が封鎖してるはずのダンジョンに、一般人が立ち行ってるって事ですか!!」
ここ最近発生しているという、ダンジョンコアの破壊によるダンジョンの消滅事件。
その犯人の足取りが掴めていない白百合聖騎士団は、見回りの強化と一部ダンジョンの封鎖に乗り出していたはずである。
ならば、どうして『カピア洞窟』には騎士団の見張りが無かったのだろう?
そして……自身は探索者ではないと言い切った、ヴァーゲの目的は何だったのか?
その二つは、全く無関係の事柄だと言えるのだろうか……?
「……ひとまず、今夜はセッカさんに甘えて泊まらせてもらおう。今日は皆も疲れてるだろうしな」
「朝になったら王都に直行ね。依頼の完了報告は勿論の事、『カピア洞窟』に関する話もしておく必要があるもの」
ザインとカノンの言葉に、姉弟は深く頷いた。
(これでもしも、ヴァーゲがダンジョンコア破壊の犯人だったとしたら……)
ダンジョンの消滅は、国の資源確保に関わる重大事件だ。
この情報をギルドと聖騎士団に報告すれば、ヴァーゲはこの事件の重要参考人として捜索される事になるだろう。
その間にヴァーゲが犯人であるという証拠が発見された場合、今度は指名手配犯として探されるはずだ。
────────────
翌朝、農場の敷地内にある家の客間にて睡眠をとったザイン達は、軽く朝食を済ませて出発の準備を急ぐ。
そうして間も無く王都へ向かおうかという時、今回の依頼人であったセッカから「無事に薬が完成した」との報告が入った。
竜翡翠に蓄積された特別な魔力によって、黄色く変色し魔力が減少してしまった薬草畑も、じきに回復するはずだと笑顔で感謝を述べられた。
この農場の薬草が元通りになれば、少しずつ市場にも多くの薬草が出回るようになるだろう。そうすれば、王都で待つ薬品店『ねこのしっぽ』の看板娘レナの悩みも解決するはずだ。
「それじゃあセッカさん、農場の皆さん、どうかお元気で! 美味しい料理、ありがとうございました!」
「こちらこそ、皆さんには大変お世話になりました! 薬草の栽培、これからも頑張らせて頂きますね!」
ザインは颯爽とジルの背中に飛び乗り、フィルを引っ張り上げて背に乗せてやる。
カノンとエルもしっかりとマロウに跨がって、四人はイスカ大草原の彼方にある王都ノーティオを目指して出立した。
四人はダンジョンの外で待機させていたジルとマロウの背に乗って、採取してきた竜翡翠を『イスカ・トゥアラ大農場』のセッカに無事に届ける事が出来た……のだったが。
「どうしたんです、師匠? さっきからずっと食事の手が止まってますが……」
「……え、あ、ああ。ごめんごめん!」
ダンジョンを出てからすっかり空腹になっていたザイン達は、セッカや農場の人々からの厚意で夕食を振舞われていた。
農場で採れた新鮮な野菜をふんだんに使ったシチューに、香り高いハーブを練りこんだ、小麦の旨味を感じるパン。
食後のデザートとしてジューシーな果物も皿に盛り付けられたテーブルで、ザインは一人でずっと考え込んでいた。
その内容とは、『カピア洞窟』の第四階層で別れたきりの大剣使いヴァーゲについてだ。
何故ヴァーゲはあの場に居たのか。
探索者でもない身で……いくら強いからといって、単身でダンジョンの最深部にまで潜ってダンジョンマスターを倒した理由が分からない。
それが──ダンジョンコアの破壊でなければ、の話だが。
ザインが慌ててスプーンを口に運び始めると、向かいに座っていたエルが静かに呟いた。
「もしかして……ですけれど。ザインさんは、あのヴァーゲという方の事が気になってるのではありませんか?」
「……分かっちゃう、か」
エルに気付かれてしまっていたと知り、再びザインの手が止まる。
「わたしも……やはり、あの方の事が妙に引っかかっていたので」
「……ワタシもあの場ではあえて何も言わなかったけれど、普通に考えて不自然よね」
「やっぱり……そうとしか思えない、よな……」
「えっ、どういう事ですか?」
ザインやカノン達の話題にいまいちついて行けていないフィルは、三人の顔をきょろきょろと見回していた。
「……ヴァーゲがあの時言ってた事、覚えてるか? 『自分は探索者じゃない』ってさ」
「ああ……そういえば言ってましたね。探索者じゃないのにダンジョンマスターを倒せるだなんて、あの年齢でどんな人生を送っていればああなれるんでしょう?」
「それも勿論気にはなるけど、一番はやっぱり……どうしてあいつは、一人でダンジョンマスターを倒す必要があったのか。それから、何でヴァーゲはダンジョンに立ち入る事が出来たのか、だ」
「あっ……! 聖騎士団が封鎖してるはずのダンジョンに、一般人が立ち行ってるって事ですか!!」
ここ最近発生しているという、ダンジョンコアの破壊によるダンジョンの消滅事件。
その犯人の足取りが掴めていない白百合聖騎士団は、見回りの強化と一部ダンジョンの封鎖に乗り出していたはずである。
ならば、どうして『カピア洞窟』には騎士団の見張りが無かったのだろう?
そして……自身は探索者ではないと言い切った、ヴァーゲの目的は何だったのか?
その二つは、全く無関係の事柄だと言えるのだろうか……?
「……ひとまず、今夜はセッカさんに甘えて泊まらせてもらおう。今日は皆も疲れてるだろうしな」
「朝になったら王都に直行ね。依頼の完了報告は勿論の事、『カピア洞窟』に関する話もしておく必要があるもの」
ザインとカノンの言葉に、姉弟は深く頷いた。
(これでもしも、ヴァーゲがダンジョンコア破壊の犯人だったとしたら……)
ダンジョンの消滅は、国の資源確保に関わる重大事件だ。
この情報をギルドと聖騎士団に報告すれば、ヴァーゲはこの事件の重要参考人として捜索される事になるだろう。
その間にヴァーゲが犯人であるという証拠が発見された場合、今度は指名手配犯として探されるはずだ。
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翌朝、農場の敷地内にある家の客間にて睡眠をとったザイン達は、軽く朝食を済ませて出発の準備を急ぐ。
そうして間も無く王都へ向かおうかという時、今回の依頼人であったセッカから「無事に薬が完成した」との報告が入った。
竜翡翠に蓄積された特別な魔力によって、黄色く変色し魔力が減少してしまった薬草畑も、じきに回復するはずだと笑顔で感謝を述べられた。
この農場の薬草が元通りになれば、少しずつ市場にも多くの薬草が出回るようになるだろう。そうすれば、王都で待つ薬品店『ねこのしっぽ』の看板娘レナの悩みも解決するはずだ。
「それじゃあセッカさん、農場の皆さん、どうかお元気で! 美味しい料理、ありがとうございました!」
「こちらこそ、皆さんには大変お世話になりました! 薬草の栽培、これからも頑張らせて頂きますね!」
ザインは颯爽とジルの背中に飛び乗り、フィルを引っ張り上げて背に乗せてやる。
カノンとエルもしっかりとマロウに跨がって、四人はイスカ大草原の彼方にある王都ノーティオを目指して出立した。
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