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一章
12話
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寸法を測り終え、儀式の日程について聞いた後、二人はΩ居住区に向かい、テンテネと合流した。彼女の隣には、同じく白衣の医療団の男性が立っている。
「隣にいるのは団員です」
「う、うん。見れば分かるよ」
テンテネの言葉に、エンティーは頷いた。
彼女が初診の際、三日後に空いているΩ居住区の部屋を使い、精密検査を行いたいと提案をされていた。エンティーはそれを直ぐに承諾した。テンテネはその後、すぐに管理者から鍵を貰い、検査のために部屋の清掃等を行い、準備を行っていた。部屋の内装はエンティーと変わりないが、埃やカビ臭さは無く、ベッドのシーツは真新しいものに変わっている。
まずは健康診断と同じく、体重、身長、視覚、聴覚を調べ、心拍や呼吸系統の音を聞きとり、血液の採取を行う。
「着替える必要はありません。ご主人様は、ベッドに横になってください」
一通り終えると、次に精密検査が行われる。
「今からこの宝石を置きますので、しばらく動かないでください」
「わかった。気を付ける」
エンティーはベッドの上に横になると、テンテネは彼の上におよそ2㎝の青い宝石を額や首元、胸、腹、手首などの決まった場所へと次々と置き始める。
「あれは、どういった検査ですか?」
様子を見守っていたリュクは、団員の男性に聞く。健康診断を受けた事はあるが、精密検査は初めて見る為、興味が沸いている。
「臓器が正常に動いているかの検査です。異常があった場合は、色が濁る等の変化が宝石に現れます。変化があった場合は、原因を究明のためにより精密な検査を行います」
団員の男性は往診鞄から、手の平に納まる程の何かが包まれた布を取り出す。布の無隈部を解くと、水晶のような透明な宝玉が姿を現す。
「それは、何に使うのですか?」
「エンティー様の内部を流れる神力を計測する宝玉です。量とその循環を診ます。外部から集めると思われがちですが、体内でもある程度は生成されます。血液同様に循環が正常でない場合、重病を患う危険があります」
「へぇ……βやαの額や眉間に宝玉が現れるのは、それが理由なのですね」
αやβが第二の性判明後、少しずつ額や眉間に宝玉が現れ始める。最初は胡麻位の大きさが、平均3センチ程まで成長をする。生命の根源と称される神力が、生命体自身に無いのはおかしな話である。また、溜め込む体質であるΩに宝玉が無い事も、おかしいと言えるだろう。発情期や媚香は他の生物も持ち合わせるが、運命の番は存在しない。片方の番が関係を放棄又は何らかの理由で死亡したとしても、もう片方は新たな伴侶を探すことが出来る。人間のみ、それが出来ない。
「双方があると、検査が大変ですね」
人体について不思議なことだらけだが、まずはエンティーの検査へ意識を向け、頭を切り替える。
「これでも、幾分かやり易くなりましたよ。あっ、テンテネさん。そろそろ宝石の回収をお願いします」
「はい。わかりました」
テンテネはエンティーの上に置いていた宝石を全て回収し、男性に渡す。そして、男性は彼女に透明な玉を渡した。
男性は宝石を一つ一つが正方形に細かく仕切られた木箱へと丁寧に収納していく。箱の底には、胸や首元などの文字が書かれているが、宝石にはそれは無い。宝石の研磨具合で違いがあると思われるが、指先だけで判断するその様にリュクは感心した。
「こっちは、持っていれば良いだけなの?」
起き上がったエンティーは透明な宝玉を持たされ、見つめる。
「はい。神力を検査していますので」
「もっと検査って大変だと思っていたけれど、結構楽なんだね」
「緊張やストレスを体に掛けてしまうと、正確な情報を得られませんからね。負担は最小限にしています」
「服も脱がなくて良いし、本当に楽」
「確かに精密検査によっては、服を着替える事がありますね」
「着替えるの?」
「えっ……着替えないんですか……?」
テンテネは会話が少しずつ嚙み合わない事に気づき、リュクの眉間に皺が寄り始める。
「?? だって、前みたいに検査って脱ぐでしょう?」
「あの時は、怪我も診る必要があったので、脱いでいただきました。怪我が無ければ、呼吸や心音を聞く際に服をたくし上げるだけで良い筈です」
「そうなの? 俺、健康診断の時には、下着姿になれって言われて脱いでた」
テンテネは絶句し、リュクは今の表情を隠す為に頭を抱えるフリをする。
内殻の従属達は年に三回の健康診断を受ける。第二の性が判明後は、健康状態がさらに複雑化する為に、男女別とさらにΩ、β、α別の診察を受ける。その為、エンティーは健康診断の時には下着姿になるモノだと思い込み、リュクはその実態を知らなかった。
「これまでの健康診断を行っていた医療団にこそ、検査が必要ですね」
白衣の医療団の男性は冷静に言うと、手帳と鉛筆を取り出す。
「言える所までで宜しいので、今までの健康診断や日常的に受けた暴力について話せますか?」
「う、うん」
エンティーは三人のただならぬ気配に戸惑いつつも、頷いた。
「隣にいるのは団員です」
「う、うん。見れば分かるよ」
テンテネの言葉に、エンティーは頷いた。
彼女が初診の際、三日後に空いているΩ居住区の部屋を使い、精密検査を行いたいと提案をされていた。エンティーはそれを直ぐに承諾した。テンテネはその後、すぐに管理者から鍵を貰い、検査のために部屋の清掃等を行い、準備を行っていた。部屋の内装はエンティーと変わりないが、埃やカビ臭さは無く、ベッドのシーツは真新しいものに変わっている。
まずは健康診断と同じく、体重、身長、視覚、聴覚を調べ、心拍や呼吸系統の音を聞きとり、血液の採取を行う。
「着替える必要はありません。ご主人様は、ベッドに横になってください」
一通り終えると、次に精密検査が行われる。
「今からこの宝石を置きますので、しばらく動かないでください」
「わかった。気を付ける」
エンティーはベッドの上に横になると、テンテネは彼の上におよそ2㎝の青い宝石を額や首元、胸、腹、手首などの決まった場所へと次々と置き始める。
「あれは、どういった検査ですか?」
様子を見守っていたリュクは、団員の男性に聞く。健康診断を受けた事はあるが、精密検査は初めて見る為、興味が沸いている。
「臓器が正常に動いているかの検査です。異常があった場合は、色が濁る等の変化が宝石に現れます。変化があった場合は、原因を究明のためにより精密な検査を行います」
団員の男性は往診鞄から、手の平に納まる程の何かが包まれた布を取り出す。布の無隈部を解くと、水晶のような透明な宝玉が姿を現す。
「それは、何に使うのですか?」
「エンティー様の内部を流れる神力を計測する宝玉です。量とその循環を診ます。外部から集めると思われがちですが、体内でもある程度は生成されます。血液同様に循環が正常でない場合、重病を患う危険があります」
「へぇ……βやαの額や眉間に宝玉が現れるのは、それが理由なのですね」
αやβが第二の性判明後、少しずつ額や眉間に宝玉が現れ始める。最初は胡麻位の大きさが、平均3センチ程まで成長をする。生命の根源と称される神力が、生命体自身に無いのはおかしな話である。また、溜め込む体質であるΩに宝玉が無い事も、おかしいと言えるだろう。発情期や媚香は他の生物も持ち合わせるが、運命の番は存在しない。片方の番が関係を放棄又は何らかの理由で死亡したとしても、もう片方は新たな伴侶を探すことが出来る。人間のみ、それが出来ない。
「双方があると、検査が大変ですね」
人体について不思議なことだらけだが、まずはエンティーの検査へ意識を向け、頭を切り替える。
「これでも、幾分かやり易くなりましたよ。あっ、テンテネさん。そろそろ宝石の回収をお願いします」
「はい。わかりました」
テンテネはエンティーの上に置いていた宝石を全て回収し、男性に渡す。そして、男性は彼女に透明な玉を渡した。
男性は宝石を一つ一つが正方形に細かく仕切られた木箱へと丁寧に収納していく。箱の底には、胸や首元などの文字が書かれているが、宝石にはそれは無い。宝石の研磨具合で違いがあると思われるが、指先だけで判断するその様にリュクは感心した。
「こっちは、持っていれば良いだけなの?」
起き上がったエンティーは透明な宝玉を持たされ、見つめる。
「はい。神力を検査していますので」
「もっと検査って大変だと思っていたけれど、結構楽なんだね」
「緊張やストレスを体に掛けてしまうと、正確な情報を得られませんからね。負担は最小限にしています」
「服も脱がなくて良いし、本当に楽」
「確かに精密検査によっては、服を着替える事がありますね」
「着替えるの?」
「えっ……着替えないんですか……?」
テンテネは会話が少しずつ嚙み合わない事に気づき、リュクの眉間に皺が寄り始める。
「?? だって、前みたいに検査って脱ぐでしょう?」
「あの時は、怪我も診る必要があったので、脱いでいただきました。怪我が無ければ、呼吸や心音を聞く際に服をたくし上げるだけで良い筈です」
「そうなの? 俺、健康診断の時には、下着姿になれって言われて脱いでた」
テンテネは絶句し、リュクは今の表情を隠す為に頭を抱えるフリをする。
内殻の従属達は年に三回の健康診断を受ける。第二の性が判明後は、健康状態がさらに複雑化する為に、男女別とさらにΩ、β、α別の診察を受ける。その為、エンティーは健康診断の時には下着姿になるモノだと思い込み、リュクはその実態を知らなかった。
「これまでの健康診断を行っていた医療団にこそ、検査が必要ですね」
白衣の医療団の男性は冷静に言うと、手帳と鉛筆を取り出す。
「言える所までで宜しいので、今までの健康診断や日常的に受けた暴力について話せますか?」
「う、うん」
エンティーは三人のただならぬ気配に戸惑いつつも、頷いた。
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