追放投獄全部乗り越えて復讐を、執着無双の脱獄者〜夜だけ最強?いえ闇の中ならいつでも最強です〜

鮎川重

文字の大きさ
12 / 124
第一章 アルカトラからの脱出

12.決意表明

しおりを挟む
「くそっ!あの野郎扉を封じやがった!これじゃもう戻れない!」

 三十九層。カナンによって送られたその場所で、ガジュは下階への扉を叩いていた。恐らく魔法で固定されているのだろう。どれだけ力を込めても扉はびくともせず、後戻りという選択肢を完全に抹消されていた。

「あいつが言ってた通り、僕らはさっさと逃げろって事なんだろうね。本当最悪のサディストだ。」
「看守長のくせに脱獄囚を放置するなよな……。」
「で、どうするの?前に進む以外許されてなさそうだけど。」

 ユンの言葉を聞きながらガジュは順路に目を向ける。

 地下監獄という肩書きにふさわしくない程生い茂った草木と、その隙間から散見される蛇や鼠などの小動物。誰がどうみてもここはこれまでのように檻が並んだフロアではない。『地下監獄アルカトラ』が持つもう一つの顔、始祖の冒険者ユノが踏破した『ダンジョンアルカトラ』としての側面が顔を覗かせ、ガジュは事情通に説明を求める。

「ここ、ダンジョンだよな。」
「そうだね。この階層、というかここから先の階層全てはダンジョンの姿を残してるんだよ。脱獄囚を逃さないためには下手に看守を増やすより、天然の要塞であるダンジョンを利用した方がいいって判断なんだろうね。」
「なるほどな……カナンが俺達を逃したのは何もしなくてもここを突破出来ずに死ぬからって理由もあるわけか。」

 ガジュは元金剛等級冒険者、冒険者たるもの監獄としてのアルカトラはともかくダンジョンとしてのアルカトラの知識はある程度蓄えている。
 アルカトラはユノが試練の迷宮を製作した際最も参考にしたとまで言われる高難易度ダンジョン。その内部では魔物達による独自の生態系が築かれ、迫り来る外・敵・へ容赦なく襲い掛かる。

 三十九層から地上までそんなものが続いているとすれば、流石のガジュといえどかなりの苦戦を強いられるはずだ。しかし、ガジュの心は既に決まっていた。

「まずは急いでここを突破するぞ。ここは地下監獄、俺が運ばれた時もそうだが下の階層まで囚人を運ぶのにわざわざダンジョンを通るってことはないはずだ。つまり地上まで行けば各階層に囚人を送る装置がきっとある。それを使ってシャルルを助けに行こう。」
「本当に助けに行くの?あの子確かに可愛いけど、そこまでしてあげる義理はないんじゃない?」
「あいつを助ける理由は半分感情論だが、俺はその先を見据えてこの発言をしている。」

 そう言ってガジュは横で相変わらず怯えているキュキュと、アホ面でダンジョンの草を弄っているユンに目を向ける。アルカトラから脱獄することはガジュにとって序章にすぎない。真の目的はハクア達への復讐。そしてそれを果たすための計画も、ガジュの頭の中ではしっかりと固まっていた。

「二人は脱獄してから行く宛はあるのか。」
「いやー僕は特に。面白そうだから勝手にガジュについて行こうかなとは思ってるけど。」
「すみませんすみません私も特にありません。家族もいなければ友人もいないので、適当にドブ漁りでもして生きていきます。あ、どうせ犬なんですしお金持ちの家で飼い犬にでもなった方がいいですかね。あはははは。」
「よし、それなら二人とも。脱獄したら俺と一緒に冒険者になろう。」

 その言葉に、二人の目が丸くなる。

 脱獄を果たした頃、ハクア達は新しい仲間と共に黒曜等級になっているはずだ。黒曜等級ともなれば冒険者協会の最等級。待遇も他の冒険者とは比べ物にならず、一介の市民、それも脱獄者が会える機会など早々訪れない。

 ならば自分も再び冒険者となり、黒曜等級となって肩を並べ叩き殺す。ガジュとハクア、開いた二人の距離を埋めるのは、こうする他ないのである。

 そしてその同胞として最適なのは間違いなくこの二人。どうせ火力面はガジュの【闇の王ナイトメア】でどうにでもできるのだ。多種多様な魔法を使って柔軟に支援を行えるユンと、基礎能力の高さを生かして状況問わず戦えるキュキュ。相性はかなり良い、そして最後の一人が加われば連携は完璧だ。

「僕は別に良いけど……冒険者協会に登録できるパーティは四人でしょ?後一人は……もしかしてそういうこと?」
「あぁ。俺はあの幼女、シャルルを救出してパーティに加える。拒否されようと構わない、効率的に復讐を行う為に最適なピースは間違いなくあいつだ。」

 破壊力のガジュ、支援力のユン、万能力のキュキュ。これだけでも十分パーティはまとまっているが、これではあまりに機動力と対応力に欠けている。その点シャルルの【投獄】は好きな場所に対象を転送できる極めて便利なスキルだ。あの力が加われば黒曜等級にすら届きうる。元金剛等級冒険者であるガジュの胸にはそんな確信が抱かれていた。

「シャルルちゃん説得するの大変だと思うなぁ。それにあの子一応親殺しの大犯罪者だよ?仲間になんてしたら殺されるかも。断罪でーーーす!!!って叫ばれて。」
「ここに来た当初の俺なら確かにためらったかも知れないが、今更そんなこと気にしても仕方ないだろ。自称冤罪の怪しい女と、存在自体が犯罪の獣人と、監獄ぶち壊して脱獄を図る俺がいるんだ。ここに親殺しの幼女がいて大して問題にならない。」

 脱獄囚が冒険者になる。この行為自体のハードルが凄まじく高いわけで、脱獄囚の罪状が何だろうとハードルの高さは変わらない。そんなものを気にするよりも、ハクアがガジュを叩き込んだこの場所で、ハクア達よりずっと強力な仲間を集め復讐する。その筋書きに感じる昂りの方がずっとずっと胸を躍らせる。

「というわけで、とっととここを脱出するぞ。ウダウダ考えるのはその後だ。何より急がないとシャルルがあの変態に痛ぶられる。仲間にする云々を抜きにしてもそれだけは回避したいからな。」
「オーケーオーケー!じゃ、新生パーティの初戦闘と行きますか!ガジュ!名前は何にする!?」
「そうだな……。昔読んだ異世界の本で見たが、俺達みたいな犯罪者の事をあっちの世界では『クリミナル』と呼ぶらしい。」
「二秒以内に良い案が出なければ僕が勝手にキラキラって命名しようと思ってたけど……まぁそれでいいや!」

 そう言ってだらけていたユンが立ち上がり、横で黙っていたキュキュも無言のままガジュの背後につく。

「このふざけたダンジョンを突破し、シャルルを助けて地上へ躍り出る。そしたら復讐の時間だ。俺を追放しやがったハクアの野郎を絶対にぶっ殺す!」
「僕はこの世界を知れたら何でも良いかな!ずっとずっとあの檻に閉じ込められてたんだもん。知りたいことは色々あるんだよね♪」
「私は……故郷に行きたいです。って、すみませんすみません私なんかが願望を唱えてすみません!」

 各々が各々の目標を唱え、三人はダンジョンの柔らかい土の大地を踏み締めていった
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

最難関ダンジョンをクリアした成功報酬は勇者パーティーの裏切りでした

新緑あらた
ファンタジー
最難関であるS級ダンジョン最深部の隠し部屋。金銀財宝を前に告げられた言葉は労いでも喜びでもなく、解雇通告だった。 「もうオマエはいらん」 勇者アレクサンダー、癒し手エリーゼ、赤魔道士フェルノに、自身の黒髪黒目を忌避しないことから期待していた俺は大きなショックを受ける。 ヤツらは俺の外見を受け入れていたわけじゃない。ただ仲間と思っていなかっただけ、眼中になかっただけなのだ。 転生者は曾祖父だけどチートは隔世遺伝した「俺」にも受け継がれています。 勇者達は大富豪スタートで貧民窟の住人がゴールです(笑)

クラス転移したからクラスの奴に復讐します

wrath
ファンタジー
俺こと灞熾蘑 煌羈はクラスでいじめられていた。 ある日、突然クラスが光輝き俺のいる3年1組は異世界へと召喚されることになった。 だが、俺はそこへ転移する前に神様にお呼ばれし……。 クラスの奴らよりも強くなった俺はクラスの奴らに復讐します。 まだまだ未熟者なので誤字脱字が多いと思いますが長〜い目で見守ってください。 閑話の時系列がおかしいんじゃない?やこの漢字間違ってるよね?など、ところどころにおかしい点がありましたら気軽にコメントで教えてください。 追伸、 雫ストーリーを別で作りました。雫が亡くなる瞬間の心情や死んだ後の天国でのお話を書いてます。 気になった方は是非読んでみてください。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね

竹井ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。 元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、 王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。 代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。 父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。 カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。 その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。 ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。 「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」 そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。 もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。 

解呪の魔法しか使えないからとSランクパーティーから追放された俺は、呪いをかけられていた美少女ドラゴンを拾って最強へと至る

早見羽流
ファンタジー
「ロイ・クノール。お前はもう用無しだ」 解呪の魔法しか使えない初心者冒険者の俺は、呪いの宝箱を解呪した途端にSランクパーティーから追放され、ダンジョンの最深部へと蹴り落とされてしまう。 そこで出会ったのは封印された邪龍。解呪の能力を使って邪龍の封印を解くと、なんとそいつは美少女の姿になり、契約を結んで欲しいと頼んできた。 彼女は元は世界を守護する守護龍で、英雄や女神の陰謀によって邪龍に堕とされ封印されていたという。契約を結んだ俺は彼女を救うため、守護龍を封印し世界を牛耳っている女神や英雄の血を引く王家に立ち向かうことを誓ったのだった。 (1話2500字程度、1章まで完結保証です)

処刑された勇者は二度目の人生で復讐を選ぶ

シロタカズキ
ファンタジー
──勇者は、すべてを裏切られ、処刑された。  だが、彼の魂は復讐の炎と共に蘇る──。 かつて魔王を討ち、人類を救った勇者 レオン・アルヴァレス。 だが、彼を待っていたのは称賛ではなく、 王族・貴族・元仲間たちによる裏切りと処刑だった。 「力が強すぎる」という理由で異端者として断罪され、広場で公開処刑されるレオン。 国民は歓喜し、王は満足げに笑い、かつての仲間たちは目を背ける。 そして、勇者は 死んだ。 ──はずだった。 十年後。 王国は繁栄の影で腐敗し、裏切り者たちは安穏とした日々を送っていた。 しかし、そんな彼らの前に死んだはずの勇者が現れる。 「よくもまあ、のうのうと生きていられたものだな」 これは、英雄ではなくなった男の復讐譚。 彼を裏切った王族、貴族、そしてかつての仲間たちを絶望の淵に叩き落とすための第二の人生が、いま始まる──。

【本編完結】転生したら第6皇子冷遇されながらも力をつける

そう
ファンタジー
転生したら帝国の第6皇子だったけど周りの人たちに冷遇されながらも生きて行く話です

最上級のパーティで最底辺の扱いを受けていたDランク錬金術師は新パーティで成り上がるようです(完)

みかん畑
ファンタジー
最上級のパーティで『荷物持ち』と嘲笑されていた僕は、パーティからクビを宣告されて抜けることにした。 在籍中は僕が色々肩代わりしてたけど、僕を荷物持ち扱いするくらい優秀な仲間たちなので、抜けても問題はないと思ってます。

処理中です...