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第一章 アルカトラからの脱出
15.不能と可能
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「はぁ……はぁ……。やっと、やっと体が動く……。」
「僕も……ようやく寝転べるよ……。」
疲労困憊し床に倒れるガジュ達と、その横で意識を失っているキュキュ。暴れるだけ暴れて事情も話さぬまま昏倒とは中々いいご身分だ。ガジュは自分の体を好き勝手操られた事への怒りを込めつつ、キュキュの頬を軽く叩く。
「キュキュ!寝てないで事情を説明しろ!被害者が二人はいるんだぞ!」
「はっ!すみませんすみません!私また何かやらかしましたかすみません!!!」
どうやら気絶していたというより少し気が抜けていたぐらいのものだったのだろう。キュキュは簡単に目を覚まし、いつもの如く額を地面に擦り付けて謝罪を繰り返す。少し不安だったが、この様子は出会った頃のキュキュと同じ。あの狂乱モードは解除されている。
「あの、その、前にもあったんですこういうことは。突然意識が飛んで、周りにいる人が恐怖や怒りをぶつけてくるっていう状況は……二回目です。昔一緒に檻に入っていたお姉さんが優しくて……けどそれからはずっと一人の監獄で……。すみませんすみません語彙力がなくてすみません!というか何もわからないんですすみません!」
「そういえばアルカトラのゴミ箱はどこも過密して囚人が詰められてるのにキュキュちゃんだけ一人ぼっちだったね。過去にあっちの人格で暴れたから隔離されていたって考えれば納得もいくかも。」
「あっちの人格……?わかりませんがきっとそうです私が全部悪いんですすみませんすみません。」
キュキュから述べられた説明があまりにも不明瞭なのは彼女の語彙力というか、彼女の記憶が原因なのだろう。見た所彼女はさっきまでの自分の記憶が全くない。自分の手足が何故魔物の返り血で赤く染まっているのかも、ガジュとユンが何故これ程に疲労しているかも。
彼女にさっきまでの事を伝えるかどうか一瞬悩んだ結果、ガジュはこれからの事を考え、話すという決断を行うことにした。『クリミナル』として共に戦っていくのだから、出来る限り隠し事は排除しておくべきだ。
「いいかキュキュ。たった今までお前はやたらと物騒な言葉を叫びながら魔物を殺戮するキルマシーンだった。そしてその原因は恐らく自分を肯定され普通の人間のように甘やかされたこと。」
「魔物を……殺戮?」
「あぁそうだ。それはそれは恐ろしい状態で、スキルを使って俺の体を操るという所業まで行なった。いいか、お前はお前が思っている以上に危険な力を秘めている。多分二重人格とかその手の類だ。」
この件で最も重要な点はキュキュのスキル。彼女が使っていた【狂化】というスキルは明らかに危険なものだ。単にキュキュが暴れるだけなら力づくで抑え込めばいいが、先ほどのようにガジュの体が操られてしまえばそれもできなくなる。
「キュキュは一旦戦うのを止めよう。まだ人格が切り替わる原因もはっきりしていないし、多分【狂化】を使った時に操られるのは【強化】で対象にしていた人間だ。俺としても安易に【強化】を使ってまた【狂化】の被害に遭うのは御免だからな。」
「何が何だかわからないですけど私がまたご迷惑をお掛けした事はわかりました。すみませんすみません、もういっそのこと死んでお詫びします。」
「それはそれで止めろ。けどまぁキュキュの二重人格が発覚して俺達の戦闘力が下がったことは確かだ。だからこそ!」
壁に向かって走り出し頭を打ち付けようとするキュキュを必死で押さえ込み、ガジュは話の筋を変える。
キュキュがどういう体質であれ、自分達がここアルカトラのダンジョンを突破しなければならないことに変わりはない。そしてその為には、キュキュに代わる戦力が必要だ。そう思考したガジュが目を向けたのは、床に転がって虚な目をしている方の少女だった。
「おいユン……。さっきは随分早く走ってたよな。それもかなりの間。『運動不足だから~』とか言って人の背中に乗り続けていたあれは何だったんだ……?」
「ちょっとちょっとそんな親の仇を前にしたみたいなテンションで話し始めないでよ。あれはほら、火事場の馬鹿力!ガジュがあまりにもハイパワーで暴れるものだからさぁ!」
「火事場の馬鹿力が出せるなら……魔物の相手も出来るよな。ダサい名前の魔法を唱えるだけじゃなく、キュキュみたいに前線を駆け回って。」
「え……もしかして僕を酷使しようとしてる……?そんな、止めようよ!ガジュが最前列、僕とキュキュが後方でいいじゃん!こんないたいけな美少女はトイレどころか汗すら流さないんだよ!」
キュキュが狂乱している間のユンは明らかに本気を出していた。薄暗いダンジョンで【闇の王】の効果を30%程発揮しているガジュよりも早く走り、キュキュが首を刎ねた魔物達を華麗に飛び越えて立ち回る。あの動きは後方で魔法を放つだけの人間のものではない。未だユンの素性は謎のままだが、この少女は間違いなく近接戦闘の心得がある。ガジュはそんな確信と共にユンの肩を掴んでいた。
「ここから先の二十層弱。核となるのはユンだ。頑張ってキュキュの倍働け!」
「そ、そんなぁーーー!!!」
ユンのわざとらしい悲鳴が響き、一向は再びダンジョン内で歩を進めていった。
「僕も……ようやく寝転べるよ……。」
疲労困憊し床に倒れるガジュ達と、その横で意識を失っているキュキュ。暴れるだけ暴れて事情も話さぬまま昏倒とは中々いいご身分だ。ガジュは自分の体を好き勝手操られた事への怒りを込めつつ、キュキュの頬を軽く叩く。
「キュキュ!寝てないで事情を説明しろ!被害者が二人はいるんだぞ!」
「はっ!すみませんすみません!私また何かやらかしましたかすみません!!!」
どうやら気絶していたというより少し気が抜けていたぐらいのものだったのだろう。キュキュは簡単に目を覚まし、いつもの如く額を地面に擦り付けて謝罪を繰り返す。少し不安だったが、この様子は出会った頃のキュキュと同じ。あの狂乱モードは解除されている。
「あの、その、前にもあったんですこういうことは。突然意識が飛んで、周りにいる人が恐怖や怒りをぶつけてくるっていう状況は……二回目です。昔一緒に檻に入っていたお姉さんが優しくて……けどそれからはずっと一人の監獄で……。すみませんすみません語彙力がなくてすみません!というか何もわからないんですすみません!」
「そういえばアルカトラのゴミ箱はどこも過密して囚人が詰められてるのにキュキュちゃんだけ一人ぼっちだったね。過去にあっちの人格で暴れたから隔離されていたって考えれば納得もいくかも。」
「あっちの人格……?わかりませんがきっとそうです私が全部悪いんですすみませんすみません。」
キュキュから述べられた説明があまりにも不明瞭なのは彼女の語彙力というか、彼女の記憶が原因なのだろう。見た所彼女はさっきまでの自分の記憶が全くない。自分の手足が何故魔物の返り血で赤く染まっているのかも、ガジュとユンが何故これ程に疲労しているかも。
彼女にさっきまでの事を伝えるかどうか一瞬悩んだ結果、ガジュはこれからの事を考え、話すという決断を行うことにした。『クリミナル』として共に戦っていくのだから、出来る限り隠し事は排除しておくべきだ。
「いいかキュキュ。たった今までお前はやたらと物騒な言葉を叫びながら魔物を殺戮するキルマシーンだった。そしてその原因は恐らく自分を肯定され普通の人間のように甘やかされたこと。」
「魔物を……殺戮?」
「あぁそうだ。それはそれは恐ろしい状態で、スキルを使って俺の体を操るという所業まで行なった。いいか、お前はお前が思っている以上に危険な力を秘めている。多分二重人格とかその手の類だ。」
この件で最も重要な点はキュキュのスキル。彼女が使っていた【狂化】というスキルは明らかに危険なものだ。単にキュキュが暴れるだけなら力づくで抑え込めばいいが、先ほどのようにガジュの体が操られてしまえばそれもできなくなる。
「キュキュは一旦戦うのを止めよう。まだ人格が切り替わる原因もはっきりしていないし、多分【狂化】を使った時に操られるのは【強化】で対象にしていた人間だ。俺としても安易に【強化】を使ってまた【狂化】の被害に遭うのは御免だからな。」
「何が何だかわからないですけど私がまたご迷惑をお掛けした事はわかりました。すみませんすみません、もういっそのこと死んでお詫びします。」
「それはそれで止めろ。けどまぁキュキュの二重人格が発覚して俺達の戦闘力が下がったことは確かだ。だからこそ!」
壁に向かって走り出し頭を打ち付けようとするキュキュを必死で押さえ込み、ガジュは話の筋を変える。
キュキュがどういう体質であれ、自分達がここアルカトラのダンジョンを突破しなければならないことに変わりはない。そしてその為には、キュキュに代わる戦力が必要だ。そう思考したガジュが目を向けたのは、床に転がって虚な目をしている方の少女だった。
「おいユン……。さっきは随分早く走ってたよな。それもかなりの間。『運動不足だから~』とか言って人の背中に乗り続けていたあれは何だったんだ……?」
「ちょっとちょっとそんな親の仇を前にしたみたいなテンションで話し始めないでよ。あれはほら、火事場の馬鹿力!ガジュがあまりにもハイパワーで暴れるものだからさぁ!」
「火事場の馬鹿力が出せるなら……魔物の相手も出来るよな。ダサい名前の魔法を唱えるだけじゃなく、キュキュみたいに前線を駆け回って。」
「え……もしかして僕を酷使しようとしてる……?そんな、止めようよ!ガジュが最前列、僕とキュキュが後方でいいじゃん!こんないたいけな美少女はトイレどころか汗すら流さないんだよ!」
キュキュが狂乱している間のユンは明らかに本気を出していた。薄暗いダンジョンで【闇の王】の効果を30%程発揮しているガジュよりも早く走り、キュキュが首を刎ねた魔物達を華麗に飛び越えて立ち回る。あの動きは後方で魔法を放つだけの人間のものではない。未だユンの素性は謎のままだが、この少女は間違いなく近接戦闘の心得がある。ガジュはそんな確信と共にユンの肩を掴んでいた。
「ここから先の二十層弱。核となるのはユンだ。頑張ってキュキュの倍働け!」
「そ、そんなぁーーー!!!」
ユンのわざとらしい悲鳴が響き、一向は再びダンジョン内で歩を進めていった。
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