追放投獄全部乗り越えて復讐を、執着無双の脱獄者〜夜だけ最強?いえ闇の中ならいつでも最強です〜

鮎川重

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第一章 アルカトラからの脱出

17.昏き檻

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「おや、まさか本当に来るとはね。おかえりガジュ君。」

 エレベーターが動いたのは九十九層まで。ガジュが一度壊したから急いで補修したのだろう。誰かしらのスキルが使われたらしく綺麗に鉄板が敷き詰められた九十九層をゆっくりと歩き例のハッチへ。そうして相変わらず窓一つない百層へと降り立ったガジュは大量の松明で体を照らされていた。
 そしてその照りついた視界の先には、目的の男が佇んでいる。

「お前をぶっ殺すと心に決めたからな。俺は約束を違えない。」
「ははは、いい心意気だね。けど惜しかったなぁ。後少しでシャルル君の自我が崩壊するところだったのに。」

 そう言ってカナンが体を動かし、その奥にいるシャルルの姿をガジュに見せつける。長い金髪は黒ずんだ床に大きく広がり、その細く小さな体は海老のように丸くなってシャルルは頭を抱えていた。

「シャルは……シャルは何も悪いことをしていません……。シャルは、シャルは……。」

 アルカトラのゴミ箱でガジュがシャルに罪状を聞いた時と同じ動揺の仕方。自分という存在を確かめるように言葉を重ねる彼女の精神は見るからに限界であり、ガジュの足は一人でに動いていた。

「この畜生が……!」
「おっと危ない。怒るとすぐ手が出るのは君の悪い癖だね。治したほうがいいよ?あ、どうせ死ぬから同じか!」
「死なねぇよ!俺はお前を殺し、シャルルを連れて脱出する。」
「無理だよ。あの時逃げていれば気にしなかったけれど、こうしてここに帰ってきたからには逃さない。君も彼女と同じように、囚われの兎になるんだ。」

 窓一つないこの部屋ではあるが、ガジュが幽閉されていた時とは大きく状況が異なっている。ガジュが破壊した天井を敢えて完璧に修復しないことで上層からの光を取り入れ、この部屋自体にもガジュがいた頃とは比べ物にならない量の松明を設置。最早この部屋は暗闇と呼べる場所ではない。

闇の王ナイトメア】の対策を完璧に取られている。
 そう理解しながらカナンに殴りかかるも、やはり力が足りない。並の冒険者並みの威力しかない拳は簡単に躱されてしまい、空気を切る音すら心許ない。
 何よりもまず大事なことはこの部屋を暗くすること。そう考え、ガジュは松明に向かって走り出す。

「にしても君のスキルは不便だよね。明るいだけで力が発揮されず無力な男になる。夜だけじゃない事が発覚しても結局は弱いままだ。その調子だと新しい仲間達にも捨てられちゃうんじゃない?」
「黙れ。あいつらはそんな薄情な奴じゃない。それにそうならない為に俺はここに来たんだ。」
「君のもう一つの悪い癖は無根拠に人を信じる所だ。あの二人の経歴を大して知りもしないのに仲間にしてしまうし、シャルル君の事も勝手に信用して助けに来ている。どうするんだい?シャルル君が本当に両親を殺した大犯罪者だとしたら。」
「ぐはっ……!」

 カナンはこの監獄にいる囚人のスキルを自由に使える。

 その言葉通り、またシャルルの【投獄】を使ったのだろう。カナンは瞬時にガジュの前へと転移し松明を壊されるのを阻止。そのままの勢いでガジュの腹部に剣を突き刺していく。

「よっと!すぐに殺すと面白くないからね。死なない程度に痛ぶらせてもらうよ。」

 剣が勢いよく引き抜かれ、ガジュの体から勢いよく血が噴き出す。
 やはりカナンは強い。スキルの利便性もそうだが、体術の格が違う。ハクアと同じように無駄がなく最小限の動きで細剣を振る立ち回り。粗暴に拳を振るうガジュとは正反対の動きにガジュは翻弄され、体に傷を増やしていった。

「はははっ!スキルの制約が多いと大変そうだね!僕の【支配者の唄スカー・カラー】にそんなものはない。首輪が付いている人間のスキルを自由に制限したり使用したり出来るんだ。そうそう、君がこの場所で首輪をつけられてるにも関わらずスキルを使えたのも僕の力だよ。」
「お前が……?一体何故。」
「僕にしても君のスキルのことは『夜に力が強くなる』って報告されていたからね。暗い檻の中必死にもがく君を見て笑おうとしたんだけど流石に甘く見過ぎたよ。」

 ガジュの体を絶え間なく斬りつけながら、カナンが己のスキルを説明していく。戦闘中に自分の力を開示しない、というのは対人戦の常識だが、もう完全に勝った気でいるのだろう。それに聞く限りカナンの力は知られて困るようなものではない。今ここでガジュが何か行動したところで【支配者の唄スカー・カラー】の効力は揺るがない。

 だがしかし、ガジュとて元金剛等級の冒険者。

 体に傷を増やしながらも、勝利への活路を切り開いていた。

「確かに俺のスキルは使い勝手が悪いしお前みたいに武術に優れているわけでもない。けどなぁ!こっちは仲間に裏切られてこんな所にぶち込まれてるんだ。泥臭く足掻く事だけは得意なんだよ……!おらぁ!」

 ガジュは腹部にできていた傷を手で掻きむしり、垂れ流しの血の勢いを何倍にも増していく。今にも倒れそうな出血量になったのを確認し、ガジュは体を大きく横に振る。
 飛散する血飛沫はガジュの体についていた泥と混じって辺りの松明に降り掛かり、その火を消していった。

「狭い部屋で助かったぜ。これで灯りは消えた……。こうなりゃ傷も何も関係ねぇ。改めて、お前をぶっ倒してやんよ!」
「暗くなるとよく騒ぐ。君は兎というよりハムスターみたいだね!」

闇の王ナイトメア】の力を発揮したガジュは再び百層の大地を踏み締め、細剣を握る看守長と睨み合っていた。
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