追放投獄全部乗り越えて復讐を、執着無双の脱獄者〜夜だけ最強?いえ闇の中ならいつでも最強です〜

鮎川重

文字の大きさ
20 / 124
第一章 アルカトラからの脱出

20.ゴミ箱の再来

しおりを挟む
「【投獄】は事前に印を書いた位置に自分も含め触れた対象をテレポートさせるスキルです。範囲は街ひとつ分ぐらいでしょうか。シャルはアルカトラのゴミ箱にある数百の檻全てに印を書いていたのであの場所では最強でした。」
「ゴミ箱……けど今さっきテレポートしたあの檻は全く関係ない場所だよな。なんであそこにも移動出来たんだ?」
「あそこはシャルが最初に入れられた檻です。首輪をつけられてスキルを封じられていても印は書けたので、以前書きました。」

 ガジュは覚悟を決めて階段を下りながら、シャルルからスキルの説明を受けていた。
 やはり彼女の【投獄】はとんでもなく強力なスキルだ。事前に印を書く、という制約こそあれど回数も印の個数も無制限。距離の制約も町から町への移動が出来ないという程度で戦闘において問題になる程ではないだろう。

 話をしたのはシャルル側だけではない。ガジュの方も自身の【闇の王ナイトメア】の事、キュキュとユン含めた四人で勝手に『クリミナル』を結成している事、自分はかつて仲間に裏切られその元凶たるハクア達に復讐を誓っている事。シャルルが全く知らないことも多少知っていることも全てを包み隠さずペラペラと。仲間に隠し事は必要ない。

「先ほどのパーティの話ですが……シャルにはやるべき事が沢山あります。今逃げ出している囚人達を含め、アルカトラの犯罪者を野に放つ訳には行きません。」
「じゃあそいつらを檻に入れたら仲間になってくれるのか?」
「分かりません。アルカトラは貴方のせいでボロボロです。さっき居た階層含め多少は残っているようですが、全ての囚人を檻に入れる事は出来ないと思います。」
「その件はカナンに聞けば何とかなるはずだ。百層はあいつの力で補修されていた。多分ここの囚人の中に建築系のスキルを使える奴がいるんだろう。」

 アルカトラは脱獄不可能とされる大監獄。元がダンジョンなこともあって、壁も床も特別製だ。どれほど優秀な大工であっても壁一枚直すのに一ヶ月はかかる。
 だがカナンはものの数時間のうちにそれを実現していた。それも一枚二枚ではなく、崩れた階層の壁と床、そのほとんどをである。
 そこまで考えた時、修復された壁に見慣れた靴音が響いてくる。
 
「正解だよガジュ君。僕の手にかかれば君がいくらアルカトラを破壊しようと一瞬で元通りさ。」
「出やがったな……。」
「君は嫌いな人間の前だと途端に口が悪くなるね。そんな嫌そうな顔しなくたって良いじゃないか。」

 流石に痺れを切らしているのだろう。カナンは例の細剣を振り回しながらガジュ達の前へと立ちはだかる。思ったより早く出会ってしまったが、この場所で出会えたのはむしろ幸運だろう。この馬鹿みたいに広い空間にはガジュも見覚えがある。

 アルカトラのゴミ箱。

 壊れた壁は木板で塞がれ、破った檻も八割ほど元通り。ガジュにとってもシャルルにとっても思い出深いその場所で、二人は因縁の相手と向き合っていた。

「どうやらシャルル君も元に戻ったみたいだね。せっかく怯えて可愛かったのに……残念だよ。」
「シャルル、俺にしがみついとけよ。あ、こいつ死ぬなって思ったら即座にスキルで逃がしてくれ。」
「わ、わかりました……。」

 シャルルの【投獄】は相手に触らなければ始まらない。加えて彼女はスキルを除けばただの十三歳。変に自由にするよりも密着させておく方が有利と判断し、ガジュはシャルルを背中にしがみつかせる。

「まずは電気を壊すぞ、出来る限り上の檻へ頼む。」
「そうはさせない。」

 ガジュはシャルルに指示を出し照明近くの檻へとテレポート。その後を追うようにカナンが空中を飛翔する。この男にとっては階段も高度も地形も何も関係ない。囚人がいる限り無敵。それがカナンだ。

 だが移動と転移では絶対に転移の方が高速。カナンが追いつくまでの数秒の間にガジュは電気を破壊し、広い空間は闇に包まれていく。前回はシャルルに転移場所を操作されていたから電気を壊すのも一苦労だったが、今回のシャルルは味方。電気を壊すぐらいは問題ない。大事なのは……ここからカナンを倒す方法だ。

「電気を消してどうするんだい?いくらフルパワーで殴ろうと、僕には通用しないよ。」
「シャルル、カナンは滅茶苦茶強い奴だ。だからこそ……賭けをすることを許してくれ!」

 少し上の足場に立ちガジュを嘲笑うカナン。その言葉を聞いてガジュの顔に笑みが浮かぶ。今からする賭けは……成功する賭けだ。

 ガジュは照明を叩き割った勢いで天井を蹴り飛ばし、今出せる全力を拳に込める。後は振り抜くだけ。ガジュは足場に拳を叩き込み、ゴミ箱、いやアルカトラに大きな縦穴が空いていく。カナンには回避されてしまったが問題ない。奴の足元に大穴が空いた事が重要だ。

「また力任せのパンチかい?つい先ほど空を飛んでいた人間の足元に大穴を開けようという発想が間違っているよ。やっぱり君は大馬鹿だ。」
「馬鹿はお前だよ。いいか、お前には囚人しかいないかも知れないが、俺には仲間がいるんだよ。お節介で有能な仲間がなぁ!」

 シャルルに安全な位置の檻へテレポートしてもらい、ガジュは縦穴を落ちていくカナンを眺める。
 ずっと違和感を感じていた。百層から這い上がった時もわざわざゆっくりと移動していたし、百層は鉄板で補修していたのにこの階層は木板。電気を消された時にも、【ミラー】と【照明】で部屋を明るくするのではなく、まるで受け入れたかのように立ち尽くす。最初は手を抜いているのかと思っていたが、あまりにも例が多すぎる。

 カナンは現在進行形で弱体化している。

 そして恐らくその立役者は、ガジュが無駄なプライドを発揮して上に置いてきた彼女達だ。

「お、いたいた!ガジュ~!どうしよ、囚人達の首輪外して遊んでたら暴れ始めちゃった!助けて~!」
「すみませんすみません!私が止めなかったからです、ほとんどの囚人の首輪が外れてます。すみませんすみません!」

 カナンは別に最強でも何でもない。一か八かの賭けを託せる程信頼できる仲間を持ったガジュの方が、よっぽど最強だ。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

酔っぱらったせいで、勇者パーティーを洗脳してしまった

透けてるブランディシュカ
ファンタジー
悪友のせいで酔ったら。(※重複投稿しています)仲仁へび

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話

桜井正宗@オートスキル第1巻発売中
青春
 ――結婚しています!  それは二人だけの秘密。  高校二年の遙と遥は結婚した。  近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。  キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。  ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。 *結婚要素あり *ヤンデレ要素あり

裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね

魚夢ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。 元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、 王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。 代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。 父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。 カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。 その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。 ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。 「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」 そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。 もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。 

無能なので辞めさせていただきます!

サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。 マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。 えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって? 残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、 無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって? はいはいわかりました。 辞めますよ。 退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。 自分無能なんで、なんにもわかりませんから。 カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。

最上級のパーティで最底辺の扱いを受けていたDランク錬金術師は新パーティで成り上がるようです(完)

みかん畑
ファンタジー
最上級のパーティで『荷物持ち』と嘲笑されていた僕は、パーティからクビを宣告されて抜けることにした。 在籍中は僕が色々肩代わりしてたけど、僕を荷物持ち扱いするくらい優秀な仲間たちなので、抜けても問題はないと思ってます。

ダンジョンでオーブを拾って『』を手に入れた。代償は体で払います

とみっしぇる
ファンタジー
スキルなし、魔力なし、1000人に1人の劣等人。 食っていくのがギリギリの冒険者ユリナは同じ境遇の友達3人と、先輩冒険者ジュリアから率のいい仕事に誘われる。それが罠と気づいたときには、絶対絶命のピンチに陥っていた。 もうあとがない。そのとき起死回生のスキルオーブを手に入れたはずなのにオーブは無反応。『』の中には何が入るのだ。 ギリギリの状況でユリアは瀕死の仲間のために叫ぶ。 ユリナはスキルを手に入れ、ささやかな幸せを手に入れられるのだろうか。

処理中です...