追放投獄全部乗り越えて復讐を、執着無双の脱獄者〜夜だけ最強?いえ闇の中ならいつでも最強です〜

鮎川重

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第一章 アルカトラからの脱出

幕間:彼らの後悔

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「おいレザ!治癒魔法をかけてくれ!」
「無理だっての!こっちだってラナーナが重傷なんだ!」

『試練の迷宮』内部。

 薄暗く陰ったその場所で、『カイオス』の面々は逃走していた。ハクアは腕から血を垂れ流し、レザは瀕死のラナーナを背負い、そしてその後ろでは巨大な生き物が彼らを追いかけていく。
 赤黒い体とそれに勝るほどの大きさを持つ真紅の翼。竜と呼ばれ恐れられる種は、既にその牙を血で染めている。

「くそっ、おいレザ!こっちにこい!」

 竜が通れないであろう狭い通路。視界の端に入ったそれにハクアは飛び込み、レザを誘う。ラナーナは息こそしているが意識はもうない。何よりも大事なのは彼女の命。そう判断してハクアはレザと共にラナーナを丁重に通路の中に寝かせ、身を屈めつつ話し始めた。

「何でこんな事になったんだよ……。僕達は金剛等級だぞ!?ラナーナは瀕死、ハクアは重傷、僕ももう魔力切れだし……新しく仲間にしたあいつはさっきの竜の腹の中だ!」
「騒がないでくれレザ……。こっちだって頭がおかしくなりそうなんだ。」

 数時間前。ハクア達『カイオス』は新たな仲間として盾役の男を迎え入れ、試練の迷宮へと突入した。
 これまでとは違い新顔が最前線、そしてその後ろでハクアが剣を振り、ラナーナが魔法で支援してレザが回復。完璧とも言える連携でダンジョンの序盤を駆け抜けた四人だったが、試練の迷宮はそう甘くない。先ほど彼らを追いかけていた竜に遭遇した途端連携は壊滅。まず新顔の男が竜に飲み込まれ、鋭利な爪で引き裂かれラナーナが瀕死。最早『カイオス』には力も気力も残っていない。

「あの竜、ダンジョンのボスとかじゃないんだよな……。」
「残念ながら。僕が黒曜等級の冒険者から聞いた限り、ここ『試練の迷宮』は三層まである。内部の構造は入る度に変わるらしいけど、そこは揺るがないそうだ。そして僕達はまだ……一度も階段を降りてない。」
「あんなのが雑魚の範疇だなんて……。あいつの魔法耐性はなんなんだ!俺とラナーナの攻撃が全く効かないんじゃ戦いようがない!」
「それに関しては僕のミスだよ……。魔法耐性を持った魔物、聞いたこともなかったけどそれぐらい想定しておくべきだった。ここは人工ダンジョン、冒険者を倒す為に作られた場所。僕らに必要なのは固い盾じゃなくて強力な物理攻撃だったんだ……。」

 レザが顔を覆いながら天を仰ぐ。

 ハクアの攻撃力は同じ金剛等級の冒険者の中でも随一。精霊と特別仲がいい彼は【魔法剣】というスキルを持っており、普通指や杖からしか放てない魔法を剣に纏わせる事が出来、魔道士と剣士双方を上回る劇的な戦闘力を持っている。

 ラナーナにしても、火力こそイマイチなものの使える魔法の種類が多く、並の魔道士に比べれば圧倒的に優秀だ。少し決定力に欠ける面子だからこそ、彼らを守れる人がいれば更に上へいける。そう思ってレザは盾役を担える人間を採用したのだが……。

 レザもハクアも全てを見誤っていた。

 『試練の迷宮』は始祖の冒険者ユノによって作られた冒険者を試す為の場所。そこに足を踏み入れるという行為は相当な覚悟を必要とするものだ。一歩間違えば容赦なく命を奪われ、黒曜等級に昇格出来ないどころか冒険者として、いや人としての生活を絶たれてしまう。ここへの挑戦において……ハクア達には足りないものが多すぎた。

 絶望と苦痛に包まれ、レザの口から悲嘆の言葉が漏れる。

「ガジュさえいれば……。」
「それを言い出したらお終いだろ。俺達はあいつを追放してアルカトラにまでぶち込んだんだぞ?」
「そもそもそれがおかしいんだよ。どうして勝手にガジュを追放したんだ。僕らに断りも入れずパーティメンバーを追放するなんて正気の沙汰じゃない。彼が一体何をしたっていうんだ!」
「何もしてないから問題なんだろ!それに許可なら取った。というかむしろお前が言い出したんじゃないか。『ガジュは役立たずだ。黒曜等級を目指すには追放するしかない』、俺はそう聞いたから……!」
「はぁ!?僕がそんなこと言うわけないだろ!そもそも僕は黒曜等級なんて目指しちゃいない!四人である程度贅沢な暮らしが出来ればよかった!勿論昇格を夢見た事ぐらいはあるけど、ガジュを追放してまで叶えようと思った事なんて一度もない!」

 狭い通路の中に二人の大声が響き、責任を押し付けるように言い合い始める。

「別に荷物運びしか出来なくたっていいじゃないか……。夜の間のガジュは大事な戦力だったし、鍵開けも料理もパーティに必要な雑務を全部やってくれてたんだぞ!?」
「そんなことは分かってる!俺だってあいつを追放したくなんてなかったさ!生まれた時から一緒の幼馴染だぞ!?しかもあいつはいい奴だ!多少執着心が強い所はあるが、仲間思いで….…。年は同じだが俺はあいつを兄のように慕ってた!」

 怒りは涙へ変わり、ハクア達はガジュとの日々を思い返す。ガジュはいつだって仲間思いだった。ラナーナが疲れれば背負って歩くし、パーティメンバーの好みを把握してクエスト中は全員に毎食違う食事を提供していた。戦闘力が低いといえど彼は『カイオス』に必要な存在であったはずだ。

「俺達はどうかしてたんだ。思えばハクアを追放した日の記憶がほとんど無いし……何故あんな事をしたのか見当もつかない。レザからガジュの追放を進言された時もお前はやたら虚な目をしていた。多分俺達は……誰かに操られていたんだ。」
「そうかもなぁ……今から帰ってガジュに謝ったら、どうにかなったりしないかな。」
「無理だろ。俺達はあいつをアルカトラにぶち込んだんだぞ?そもそも会えもしない。俺達は業を背負って生きていくしかないんだ。まぁ、それもここから生きて帰れたらの話だけどな。」

 二人の罪人は項垂れ、己が犯した罪を悔い始める。こうして金剛等級パーティ『カイオス』の試練の迷宮挑戦は、失敗に終わったのであった。
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