追放投獄全部乗り越えて復讐を、執着無双の脱獄者〜夜だけ最強?いえ闇の中ならいつでも最強です〜

鮎川重

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第二章 ユギ村の災害

29.会心の一撃

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「いいか、結局火力さえあればどうにでもなる。二人はとにかく暗闇を作る事に集中しろ。」

 凍龍上空。小脇にラナーナ、背中にユンを担いだガジュは打ち倒すべき魔物の背中を睨みつけていた。『クリミナル』と『カイオス』両パーティ合計七名のうち、魔法が使えるのはこの二人。レザも治癒魔法は使えるが、今役に立つものではない。

「ラナーナちゃんだっけ?こっちの子を連れてくるのはわかるけど何で僕まで連れこられたのさ……。僕もシャルちゃん達と一緒に住民の避難に回りたかったよ!」
「あたしだって行きたくなかったわよ!ハクアやレザと違ってあたしは肝心な時大体倒れてるからあんた達のいざこざもほとんど把握してないのに……。結局ガジュは仲間なの!?」

 二人の魔道士が口々に文句を言い合うも、ガジュは二人の事を気にも止めず村がある方向へ目を向ける。

 凍龍にガジュの最大火力を叩き込み、一撃で撃破する。

 実にシンプルな作戦を実行するにおいて一番の懸念事項はユギ村だ。アルカトラで連発していたような攻撃を行えば、ここら一体の雪が吹き飛び地形改変が行われる可能性すらある。ガジュはそう考え、シャルルとレザに村の避難誘導を指示したが、見た所村に人影は見えない。真面目な二人のことだから手早く仕事をこなしたのだろう。

 安全は確保、後は暴れるだけだ。

「あれから色々と検証したが、俺の【闇の王ナイトメア】の正しい効果は『自分の肌、および服に当たっている光が少なければ少ないほど身体能力が向上する』ってものだ。だから二人にはとにかく俺の周りを何かで覆ってもらう。」
「言っておくけど闇の精霊は暴食で一回の魔法にかかる魔力量が多いし、そもそもさっきの炎盾で私の魔力は空っぽ。精々一発二発魔法を打つ力しか残ってないわよ。」
「それで大丈夫だ。基本的にはうちの愚か者が働くから、ラナーナはその隙間を埋める程度でいい。」
「愚か者……キュキュちゃんなら下でハクアと二人待機中だよ?」
「すっとぼけるな。お前以外に誰がいるんだ。」

 ガジュ、ユン、ラナーナは空中。レザ、シャルルは村の避難誘導に行かせ、キュキュとハクアには下で待機という指示を出している。【強化】の最大倍率の効果時間はわずか0.5秒程。ガジュにそれを完璧なタイミングでかけるには、多少の危険があろうとキュキュには凍龍の近くで空中組の動きを見ておいて貰わなければならない。

 ハクアが担っているのは全ての保険役である。ガジュの攻撃による被害からキュキュを守り、万が一ガジュの攻撃で凍龍が死ななかった場合のトドメを刺すという大役を任せられるのは何だかんだあの男しかいない。ガジュの【闇の王ナイトメア】が火力一点突破の非凡なスキルなのに対し、ハクアの【魔法剣】は技巧派で汎用性の高いスキル。攻めと守りのバランスにおいて彼に秀でるものはいない。

「よし、行くぞ。言っとくが殴った後どうなるか分からないからな。身を守る準備ぐらいはしておけよ。」
「無茶苦茶な事言わないでよね……。闇の精霊よ、その呪怨と混沌に満ちた悪き魂を呼び覚まし、我が魔力を糧として魔を放て!紫煙の咆哮バーンアウト!」
「長いしだっさい名前だなぁ……。魔法っていうのはこうやって使うんだよ!モヤモヤ!」

 対照的な二人が魔法を放ち、ガジュの周りが黒いもやと炎に包まれていく。
 ラナーナが放った炎は黒ずんだ光のない闇の炎。それらがガジュに降り掛かっていた太陽光を遮断し、体に段々と影が落ちていく。体の奥底から溢れてくる力、最早前など見えもしないがこれ程の力があれば関係ない。どれだけ大きな魔物だろうと、どれだけ強力な魔物だろうと、暗闇の中ではこちらが上だ。

「よく見とけよハクア……。これがお前の命を狙う人間の本気だ!」

 遠くから微かに聞こえるキュキュの【強化】の声。それと同時にガジュは拳を凍龍の元へ振り下ろし、古代の化物の硬い鱗が音を立てて弾け飛んでいく。辺りに広がる衝撃波と共に背後のユンとラナーナが吹き飛び、なんとか地上で耐えていたキュキュがそれを完璧にキャッチ。万事解決、ガジュがそう思った時、次に響いたのは凍龍の断末魔だった。

「キュォォォォォォン!!!」

 唸り声を上げた凍龍の巨大な体はとうの昔に抉れ、視界に入りきらなかった頭と尻尾は断裂されて空に舞う。いかなる強敵であろうと、完全な暗闇すらあればガジュは誰にも負けない。その事実を場にいる全員が理解し、ユギの雪は溶けていく。
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