追放投獄全部乗り越えて復讐を、執着無双の脱獄者〜夜だけ最強?いえ闇の中ならいつでも最強です〜

鮎川重

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第二章 ユギ村の災害

31.シャルルの疑問

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「シャルは正義の使者です。それ故に疑問を感じています。」

 凍龍とスノアスキュラ討伐後。すぐにユギ村を去ったハクア達と違い、ガジュ達『クリミナル』はダラの家で体を休めていた。といっても家にいるのはキュキュ、シャルル、ユンの三名のみ。ダラとガジュは凍龍解体のため、例の北西の山へ赴いている。

 そんな状況の中、極めて不服そうなシャルルから投げられた疑問に対し、ユンは素っ頓狂な声をあげる。

「ふぇ?どうしたのさシャルちゃん。僕のすべすべお肌の保ち方ならいくらでも教えてあげるよ。」
「そんなものに興味はありません。シャルが言っているのはガジュとハクアの関係性です。ガジュはあのハクアといいう人達から『役立たず』と呼ばれた上に冤罪を押し付けられアルカトラに入ったんですよね?」
「そうらしいね。まぁガジュはつい最近まで自分のスキルを誤解していたらしいし、そういうことがあってもおかしくはないんじゃない?」
「シャルもその点は理解しています。ですが実際にハクア、ひいては『カイオス』のメンバー達を見ているとどうも違和感を覚えます。シャルにはあの人達が七年連れ添った仲間を役立たずとして追放するような人に思えません。」

 シャルルの脳内には正しいか正しくないかという価値基準しか存在しない。彼女のある種狂気じみた物差しで今回の一件を考えた時、明らかに正しくないという結論に至ったのだろう。ガジュから「うるさい」と一喝されて使用を止めているメガホンを撫でまわし、シャルルは言葉を続けていく。

「実際スノアスキュラ百体のうちシャル達が倒したのは三十匹弱。倒した数で言えば負けているというのに、何だかんだと理由をつけてシャル達にその功績を譲ってくれたんですよ?これでガジュが本当に金剛等級になってしまえば、彼ら自身の首が締まるというのに。」
「まぁ確かにハクアの言い分は結構無理があったよね。どうにかして僕らに功績を譲りたいというか……なんかそんな感じ。」
「あの言い分がハクアの本心だろうとなかろうと、ハクア達はガジュを追放するような人間には見えません。あの人は多分割と心優しい人間です。」

 シャルルはそう断言し、いつも振り回している棍棒を机に置く。もしハクアが真に道徳的でスノアスキュラ討伐の功績はガジュにあると心から考えている場合、ガジュを追放するなどという不躾な行為は行わない。シャルルの言うようにハクアが意図的に功績を譲ったという場合でも、それはそれでガジュを追放したという行為と矛盾を起こすことになる。

 ガジュ追放はそう簡単な話ではない。

 シャルル達がある種の確信を抱いた時、横のキュキュから声がかかる。

「すみませんすみません口を挟んですみません。ハクアさんが優しい人だとして……他の人が悪人だという可能性はないんでしょうか。」
「ないと思います。シャルはあのレザという治癒士と共に村の人々の避難にあたりましたが、彼は何とも気弱で親切心に満ちた人でした。おまけに凄く聡明です。」
「ラナーナちゃんも口調は厳しかったけど別に悪い人じゃなさそうだったよ?というか何も知らなそうだった。」
「ガジュの代わりに誰か新しいメンバーが加入していればその人物が最も怪しいですが……ずっと三人でしたし『仲間が見つからない』とも言っていました。ハクアに限らず、『カイオス』のメンバーの中にシャルが裁くべき人物はいないと思います。」
「すみませんすみません犬ころ程度が人を疑ったことが間違いでしたすみません。ただ……ガジュさん達が凍龍を倒すのを待っている間、私は地上でハクアさんとお話ししたんですが、どこか不思議な気持ちになったんです。」

 普段怯えきってろくに話もしないキュキュが珍しく口を開く。

「不思議な気持ち?なになにもしかして恋とかしちゃった!?ユンちゃんウキウキしちゃうよ!?」
「黙ってくださいユン。キュキュ、どういう事ですか?」
「すみませんすみません、私はいわゆる犬っころなので嗅覚や聴覚などが鋭く、野生的感覚が冴えているのですが……ハクアさんから別の人の匂いがしました。」
「別の人の匂い……?」
「はい。多分ハクアさん、もしかしたら他の皆さんも。誰かに操られていると思います。」

 操られている。珍しく謝罪の言葉もなく述べられたその推察に、聞き手の二人は息を呑む。
 ガジュの追放は『カイオス』以外の何者かに仕組まれたものだとしたらーーその後に続く未来がシャルル達の冴え渡った頭を駆け抜けていき、しばしの沈黙の後にユンがようやく言葉を発する。

「どうする?これ、ガジュに言っておく?」
「シャルは反対です。というか絶対に駄目です。もしキュキュの言う事が本当だった場合、シャルには犯人の心当たりがあります。詳しい事は言えませんが……絶対に駄目です!」

 シャルルが何やら慌てたように立ち上がり、場に再びの沈黙が訪れる。そして次にそれを裂いたのは、他でもない渦中の男であった。

「三人ともそんな所で固まって何やってるんだ?早く支度を済ませないと数時間後にはこの村を出るからな。」
「けっ、お前らもハクアを見習ってとっとと出ていきやがれ。お前らが居ると蜂蜜だけ減ってこの村が食い尽くされちまう。」
「あー『ハクアも何も言わず出ていくしお前らももう出ていくのか?蜂蜜ならいくらでも食わせてやるからもっと長くいていいんだぞ。』か?最後ぐらい素直に喋ってくれよ。」

 部屋に流れていた神妙な雰囲気など意に介さず、ガジュとダラが軽口を叩き合いながら家の中へ。二人が両手に抱えている大きな袋にはスノアスキュラと凍龍の死体が詰まっているのだろう。    
 真面目に仕事をこなしてきた二人に対し、ユンもシャルルもキュキュも何も言うことは出来ず。ただ無言のまま出立の準備を進めていく。
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