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第三章 冒険者になろう
32.世間の風当たりは厳しい
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「はぁーーーーーー!!!おかしい、おかしいだろ!」
所変わってユギ村から数十キロ離れた都市、アンラ。雪とボロ家しかないユギとは違い、アンラは大都市中の大都市。立ち並ぶ建物はどれもこれも三階建ては最低条件、道に関してもしっかりと舗装され、ここであればキュキュが転けることもないだろう。
そんな大都市にある宿屋の一室で、ガジュは憤慨していた。
「俺達は災害種を倒したんだぞ?それにお伽噺の化け物、凍龍もだ!なのに、なのに何故冒険者協会は俺達を認めてくれないんだ!」
「いやー捕まらなかっただけ良い方だと思うよ?僕らはともかく、冒険者協会のお姉さんガジュを見るなり恐れ慄いてたし。」
数時間前。長い馬車の旅を終えてアンラに辿り着いた一行は、冒険者協会を訪れていた。両手には倒した魔物の素材がこれでもかと詰まった袋。ガジュが冒険者をやっていた頃の常識で言えば、等級の一つや二つ上がって当然の量だろう。
だがしかし、結果は実に残酷だった。ガジュ達は所詮脱獄囚。冒険者になる事すら許されず、門前払いを食らってしまったのである。
「そもそもさ、僕らって今どういう扱いなの?看守長のカナンがクソ野郎だったからといって僕らが脱獄囚な事に違いはないわけだし。呑気に街をぶらついてたら捕まっちゃうんじゃないの?」
「あーそうか。よく考えれば俺以外の三人は全員社会常識というものを知らないのか……。よし、全員そこに座れ!腹いせに講釈を垂れてやる!」
キュキュは生まれてすぐ、シャルルは五歳、ユンはーーまぁ知らないがかなりの期間獄中にいたのは間違いない。冒険者の常識はおろか社会の常識すら知らなくて当然。ガジュはそう思考し、話し始めた。
「まずそもそもの話をするとだな、数百年前一般的な動物の一部が魔物という存在へと変化し、人々を襲い始めた。当時存在した国家達はこれに対応としようとしたが……魔法もなければスキルの使い方もよくわかっていなかったかつての兵士達は惨敗。ほとんどの国家が機能を失っていたところ、始祖の冒険者ユノが現れた。」
「そこら辺まではシャルも知っています。ユノが魔物達を掃討し、スキルや魔法の理論を説明したことによって従来の国家体制は大きく変化。国家というシステムが撤廃され各地域ごとの有力者が政治を行いながら、世界全体で協力して魔物と戦うという現在の状況が誕生したんですよね。」
「あぁそうだ。ユギにもアンラにも王はいないし、法律もないからその地域の有力者の裁量でほとんどの事は決まる。ユギで言えばダラだな。アンラには冒険者協会の支部があるからそこの支部長が全てを握ってる。」
「よくそんな感じで世界が回ってるよねぇ。一歩間違えば有力者のやりたい放題な気がするんだけど。」
「魔物という共通の脅威がいるからな。戦争なんて愚かなことやってる暇はないし、魔物が毎日大量の人間を殺しているのに、人間が一人二人殺したことなんて誰も気にしない。適当にムショにぶちこんでおけば尚更だ。」
この世界の秩序は、ある種崩壊していると言っても良いだろう。何か事件が発生すれば直ちに兵士やら何やらが駆けつけ、翌日には檻に入れられる。どちらが悪いかとか、本当に悪事を働いたのかとかそういった事は誰も気にしていないのだ。
恐るべきは魔物だけであり、人類の輪を乱す存在の話になど耳を傾けない。地方によっても異なるが、大都市は概ねそういった方針で運営されている。
「そういった馬鹿げた世界だからこそ俺達のような人間が山のように出るわけだが……逆に言えば誰も脱獄囚を気にしていないって話でもある。脱獄囚が街を歩いていても誰も捕まえようとはしないし、ただ『あの人脱獄囚らしいわよ』って噂が流布されて冷ややかな目を貰うだけ。何か良い事をして市民からの評価を得さえすれば、割と普通に生きていけるんだ。」
「だから凍龍とスノアスキュラを討伐してユギ村を救った僕らは、例え脱獄囚でも大丈夫!ってことになるわけか。」
「そう、そのはず、というかそうあるべきなんだよ。だがあいつらは!」
ガジュが持ってきた功績は間違いなく巨大なものだ。人口百人にも満たない小さな村ではあるもののユギという一つの地域を救い、冒険者が束になって狩猟する災害種スノアスキュラと、金剛等級のハクア達でも及ばなかった凍龍を撃破した。ガジュが背負っている『強盗殺人』という罪と天秤にかけたとしても、この世界であれば簡単に跳ね飛ばせる成果量だ。
「そもそも、シャル達が本当に凍龍討伐の成果をあげたと思われてないんじゃないでしょうか。ガジュはこの街の誰もが知る犯罪者。シャルはまだ十三歳の子供、キュキュはフードを深く被った正体不明の寡黙な少女、ユンに関しては意味がわかりません。こんな四人が『強い魔物を倒した!』と言ってきても、信用する人が馬鹿だと思います。」
「相変わらず辛辣だなぁシャルちゃんは。けどまぁ言ってる事はまともだね。僕ら、どう見ても弱そうだもん。」
ユンが極めてどうでも良さそうにベッドに寝転がり、あくびをしながら目を閉じる。今はあくまで話し合いのためにガジュの部屋に集まっているのであって、ユン達は隣に三人部屋を取っているのに何故こいつはここで寝ようとしているのか。
ガジュが素早く眠り始めたユンをつまみ出そうとした時、部屋の扉が開き綺麗な制服に身を包んだ男が現れた。
「お前達が『クリミナル』か。冒険者協会上層部での協議の結果、お前達の対応が決定された。お前達には新人冒険者と共に適性検査を受けて貰う。」
いかにも役人らしいぶっきらぼうな言葉だけを告げ、男は一瞬で部屋を去っていく。
所変わってユギ村から数十キロ離れた都市、アンラ。雪とボロ家しかないユギとは違い、アンラは大都市中の大都市。立ち並ぶ建物はどれもこれも三階建ては最低条件、道に関してもしっかりと舗装され、ここであればキュキュが転けることもないだろう。
そんな大都市にある宿屋の一室で、ガジュは憤慨していた。
「俺達は災害種を倒したんだぞ?それにお伽噺の化け物、凍龍もだ!なのに、なのに何故冒険者協会は俺達を認めてくれないんだ!」
「いやー捕まらなかっただけ良い方だと思うよ?僕らはともかく、冒険者協会のお姉さんガジュを見るなり恐れ慄いてたし。」
数時間前。長い馬車の旅を終えてアンラに辿り着いた一行は、冒険者協会を訪れていた。両手には倒した魔物の素材がこれでもかと詰まった袋。ガジュが冒険者をやっていた頃の常識で言えば、等級の一つや二つ上がって当然の量だろう。
だがしかし、結果は実に残酷だった。ガジュ達は所詮脱獄囚。冒険者になる事すら許されず、門前払いを食らってしまったのである。
「そもそもさ、僕らって今どういう扱いなの?看守長のカナンがクソ野郎だったからといって僕らが脱獄囚な事に違いはないわけだし。呑気に街をぶらついてたら捕まっちゃうんじゃないの?」
「あーそうか。よく考えれば俺以外の三人は全員社会常識というものを知らないのか……。よし、全員そこに座れ!腹いせに講釈を垂れてやる!」
キュキュは生まれてすぐ、シャルルは五歳、ユンはーーまぁ知らないがかなりの期間獄中にいたのは間違いない。冒険者の常識はおろか社会の常識すら知らなくて当然。ガジュはそう思考し、話し始めた。
「まずそもそもの話をするとだな、数百年前一般的な動物の一部が魔物という存在へと変化し、人々を襲い始めた。当時存在した国家達はこれに対応としようとしたが……魔法もなければスキルの使い方もよくわかっていなかったかつての兵士達は惨敗。ほとんどの国家が機能を失っていたところ、始祖の冒険者ユノが現れた。」
「そこら辺まではシャルも知っています。ユノが魔物達を掃討し、スキルや魔法の理論を説明したことによって従来の国家体制は大きく変化。国家というシステムが撤廃され各地域ごとの有力者が政治を行いながら、世界全体で協力して魔物と戦うという現在の状況が誕生したんですよね。」
「あぁそうだ。ユギにもアンラにも王はいないし、法律もないからその地域の有力者の裁量でほとんどの事は決まる。ユギで言えばダラだな。アンラには冒険者協会の支部があるからそこの支部長が全てを握ってる。」
「よくそんな感じで世界が回ってるよねぇ。一歩間違えば有力者のやりたい放題な気がするんだけど。」
「魔物という共通の脅威がいるからな。戦争なんて愚かなことやってる暇はないし、魔物が毎日大量の人間を殺しているのに、人間が一人二人殺したことなんて誰も気にしない。適当にムショにぶちこんでおけば尚更だ。」
この世界の秩序は、ある種崩壊していると言っても良いだろう。何か事件が発生すれば直ちに兵士やら何やらが駆けつけ、翌日には檻に入れられる。どちらが悪いかとか、本当に悪事を働いたのかとかそういった事は誰も気にしていないのだ。
恐るべきは魔物だけであり、人類の輪を乱す存在の話になど耳を傾けない。地方によっても異なるが、大都市は概ねそういった方針で運営されている。
「そういった馬鹿げた世界だからこそ俺達のような人間が山のように出るわけだが……逆に言えば誰も脱獄囚を気にしていないって話でもある。脱獄囚が街を歩いていても誰も捕まえようとはしないし、ただ『あの人脱獄囚らしいわよ』って噂が流布されて冷ややかな目を貰うだけ。何か良い事をして市民からの評価を得さえすれば、割と普通に生きていけるんだ。」
「だから凍龍とスノアスキュラを討伐してユギ村を救った僕らは、例え脱獄囚でも大丈夫!ってことになるわけか。」
「そう、そのはず、というかそうあるべきなんだよ。だがあいつらは!」
ガジュが持ってきた功績は間違いなく巨大なものだ。人口百人にも満たない小さな村ではあるもののユギという一つの地域を救い、冒険者が束になって狩猟する災害種スノアスキュラと、金剛等級のハクア達でも及ばなかった凍龍を撃破した。ガジュが背負っている『強盗殺人』という罪と天秤にかけたとしても、この世界であれば簡単に跳ね飛ばせる成果量だ。
「そもそも、シャル達が本当に凍龍討伐の成果をあげたと思われてないんじゃないでしょうか。ガジュはこの街の誰もが知る犯罪者。シャルはまだ十三歳の子供、キュキュはフードを深く被った正体不明の寡黙な少女、ユンに関しては意味がわかりません。こんな四人が『強い魔物を倒した!』と言ってきても、信用する人が馬鹿だと思います。」
「相変わらず辛辣だなぁシャルちゃんは。けどまぁ言ってる事はまともだね。僕ら、どう見ても弱そうだもん。」
ユンが極めてどうでも良さそうにベッドに寝転がり、あくびをしながら目を閉じる。今はあくまで話し合いのためにガジュの部屋に集まっているのであって、ユン達は隣に三人部屋を取っているのに何故こいつはここで寝ようとしているのか。
ガジュが素早く眠り始めたユンをつまみ出そうとした時、部屋の扉が開き綺麗な制服に身を包んだ男が現れた。
「お前達が『クリミナル』か。冒険者協会上層部での協議の結果、お前達の対応が決定された。お前達には新人冒険者と共に適性検査を受けて貰う。」
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