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第三章 冒険者になろう
44.洞窟探検with覇王
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「いやー吾輩初めて来たぞこんなとこ。中々良い雰囲気だしここを第二の拠点にしたいぐらいだな!」
イリシテア付近にある洞窟。ガジュは『秩序と混沌の鬼ごっこ作戦』を実行するために、その場所を訪れていた。クルトの情報によるとイリシテアの周辺で魔物が頻繁に出現するのはニ箇所。北西の洞窟と東の沼。このニ箇所を全員で分担することになり、【闇の王】の効果を考慮した結果ガジュは洞窟を担当とした。そしてもう一人、ガジュの横に頼りない着ぐるみの少女が並ぶ。
「はぁ……何で俺がこいつのお守りをしなきゃならないんだ……。」
「仕方ないではないか。キュキュは獣人なのであろう?別に差別するつもりはないが、あの卑屈さだと吾輩のような新参者と共に行動するのは辛いはずだ。知らない人は須く自分を差別する、そう思っていてもおかしくないからな。吾輩は気遣いの出来る覇王だ!」
「それはそうだが……。ユン、キュキュ、クルトで一緒に行動すればなんとかなるだろ。俺は別に一人で構わない。」
「思い上がるでない。聞いたぞ?ガジュは暗いところ以外ではクソ雑魚らしいな!心配するな、吾輩がしっかりサポートしてやるからな!ほれ、パン食うか?」
「いらねぇよ……。とにかく、相手はゴブリンだ。出来る限り俺の後にへばりついて歩けよ。」
長年の研究を経ても魔物の生態は未だ明確にわかっていないが、魔物は大きく分けて二種類あることは周知されている。スノアスキュラなど通常の動物や虫から進化した魔物と、凍龍やゴブリンなど独立した分類の魔物。当初魔物というのは前者、通常の動物が持っていた生命エネルギーが魔力に変化し、特殊な力を持つようになったものとされていた。人間の生命エネルギーが魔力に変化すると魔道士に、動物の生命エネルギーが変化すると魔物に、何故生命エネルギーが魔力に変化するのは依然謎のままだが、長い間そういった認識が為されてきたのである。
しかし、そんな中現れたのがゴブリンなど動物を起源としない魔物達である。これらの出現が今までの学説をひっくり返し、凍龍などのお伽噺の生物が実在したことやそれらが他の魔物よりずっと前から生存している事など、研究すれば研究するほど事態は迷宮入り。それは数百年の時が流れた現代においても、変わっていない。
「ゴブリンなんて本当に居るんだなぁ。取り敢えずパンだけはいっぱい持ってきたんだが、食べてくれるだろうか。」
「村を襲って女を孕ませるしか脳のない輩に飯を与えてどうするんだよ。あいつらの嫁にでもなりたいのか?」
「よ、嫁!?ふざけるでない!吾輩はシャルル以外にこの身を捧げないからな!」
ツカツカと洞窟の中を歩きながら、クルトが照れを込めてガジュの背中を殴打する。
「そういえば……お前は何故シャルルが操られてることを知ってたんだ?父母殺害事件を盗み見してたからといって、シャルルが操られてるって話にはならないだろ。」
「吾輩はシャルルを知り尽くしているからな!正気を失ってるのなんて一瞬で分かったぞ!要は勘だ、勘!」
「はぁ!?お、お前、あんなに偉そうに話をしておきながら肝心なところは無根拠だったのか!?」
「無根拠ではない。吾輩は悪の覇王だぞ?僕もシャルルももちろんお前達も、同胞に変化があれば一瞬で気づける。ガジュ、お主今日は腰の調子が悪いだろ!」
そういってクルトがガジュの腰を指で突き、ガジュの体に激痛が走る。クルトの言う通り、ガジュは本日腰を軽く痛めている。原因は間違いなく昨晩の寝床だろう。クルトの家に住んでいるのはクルト含め小柄な少女達。ガジュの体にあった布団なんてものはもちろん無く、狭い空間で必死に体を丸めて眠った為、今日のガジュのコンディションは最悪である。
「観察眼が凄いのは分かったが……こっから先はそれだけじゃ生きていけないぞ。見ろ。」
「ん?何だこれ、なんかの肉か?」
「人間の指だ。俺達の鬼ごっこ相手はすぐそこにいる。」
床に転がった汚らしい肉片にガジュが気づいて声をかけると、クルトが無遠慮にそれを突く。そしてその正体を告げられ、クルトがウサギのように飛び跳ねる。魔物を引きつけて街を襲わせる、などとふざけたことを言っているが、相手は結局魔物。羽虫を殺すように人を蹂躙し、獣のようにその死体を弄ぶ。
「こんな奴らを誘き出すなんて出来るのか……?」
「安心しろ。俺は元金剛等級冒険者。ゴブリン相手の知識も経験も十分に有してる。加えて、俺はこの洞窟で最強だ。」
人間の匂いを嗅ぎつけたのだろう。洞窟の最奥からゾロゾロと緑色の小人達が現れ、クルトが腰を抜かす。それと対照的に、ガジュは激る力に震えていた。一切の光の差さない暗闇の洞窟。唯一の灯りであった松明を投げ捨て、ガジュはクルトを背負って走り出す。
「待ってろよバーゼ!!!陰湿な引きこもり野郎に!最悪の恐怖をお届けしてやるぜ!」
「あぁこら!吾輩より悪の覇王っぽいことを言うんじゃない!」
背中で喚くクルトと、二人を追いかける無数のゴブリン達。こうして二対数百の地獄の鬼ごっこが幕を開けたのであった。
イリシテア付近にある洞窟。ガジュは『秩序と混沌の鬼ごっこ作戦』を実行するために、その場所を訪れていた。クルトの情報によるとイリシテアの周辺で魔物が頻繁に出現するのはニ箇所。北西の洞窟と東の沼。このニ箇所を全員で分担することになり、【闇の王】の効果を考慮した結果ガジュは洞窟を担当とした。そしてもう一人、ガジュの横に頼りない着ぐるみの少女が並ぶ。
「はぁ……何で俺がこいつのお守りをしなきゃならないんだ……。」
「仕方ないではないか。キュキュは獣人なのであろう?別に差別するつもりはないが、あの卑屈さだと吾輩のような新参者と共に行動するのは辛いはずだ。知らない人は須く自分を差別する、そう思っていてもおかしくないからな。吾輩は気遣いの出来る覇王だ!」
「それはそうだが……。ユン、キュキュ、クルトで一緒に行動すればなんとかなるだろ。俺は別に一人で構わない。」
「思い上がるでない。聞いたぞ?ガジュは暗いところ以外ではクソ雑魚らしいな!心配するな、吾輩がしっかりサポートしてやるからな!ほれ、パン食うか?」
「いらねぇよ……。とにかく、相手はゴブリンだ。出来る限り俺の後にへばりついて歩けよ。」
長年の研究を経ても魔物の生態は未だ明確にわかっていないが、魔物は大きく分けて二種類あることは周知されている。スノアスキュラなど通常の動物や虫から進化した魔物と、凍龍やゴブリンなど独立した分類の魔物。当初魔物というのは前者、通常の動物が持っていた生命エネルギーが魔力に変化し、特殊な力を持つようになったものとされていた。人間の生命エネルギーが魔力に変化すると魔道士に、動物の生命エネルギーが変化すると魔物に、何故生命エネルギーが魔力に変化するのは依然謎のままだが、長い間そういった認識が為されてきたのである。
しかし、そんな中現れたのがゴブリンなど動物を起源としない魔物達である。これらの出現が今までの学説をひっくり返し、凍龍などのお伽噺の生物が実在したことやそれらが他の魔物よりずっと前から生存している事など、研究すれば研究するほど事態は迷宮入り。それは数百年の時が流れた現代においても、変わっていない。
「ゴブリンなんて本当に居るんだなぁ。取り敢えずパンだけはいっぱい持ってきたんだが、食べてくれるだろうか。」
「村を襲って女を孕ませるしか脳のない輩に飯を与えてどうするんだよ。あいつらの嫁にでもなりたいのか?」
「よ、嫁!?ふざけるでない!吾輩はシャルル以外にこの身を捧げないからな!」
ツカツカと洞窟の中を歩きながら、クルトが照れを込めてガジュの背中を殴打する。
「そういえば……お前は何故シャルルが操られてることを知ってたんだ?父母殺害事件を盗み見してたからといって、シャルルが操られてるって話にはならないだろ。」
「吾輩はシャルルを知り尽くしているからな!正気を失ってるのなんて一瞬で分かったぞ!要は勘だ、勘!」
「はぁ!?お、お前、あんなに偉そうに話をしておきながら肝心なところは無根拠だったのか!?」
「無根拠ではない。吾輩は悪の覇王だぞ?僕もシャルルももちろんお前達も、同胞に変化があれば一瞬で気づける。ガジュ、お主今日は腰の調子が悪いだろ!」
そういってクルトがガジュの腰を指で突き、ガジュの体に激痛が走る。クルトの言う通り、ガジュは本日腰を軽く痛めている。原因は間違いなく昨晩の寝床だろう。クルトの家に住んでいるのはクルト含め小柄な少女達。ガジュの体にあった布団なんてものはもちろん無く、狭い空間で必死に体を丸めて眠った為、今日のガジュのコンディションは最悪である。
「観察眼が凄いのは分かったが……こっから先はそれだけじゃ生きていけないぞ。見ろ。」
「ん?何だこれ、なんかの肉か?」
「人間の指だ。俺達の鬼ごっこ相手はすぐそこにいる。」
床に転がった汚らしい肉片にガジュが気づいて声をかけると、クルトが無遠慮にそれを突く。そしてその正体を告げられ、クルトがウサギのように飛び跳ねる。魔物を引きつけて街を襲わせる、などとふざけたことを言っているが、相手は結局魔物。羽虫を殺すように人を蹂躙し、獣のようにその死体を弄ぶ。
「こんな奴らを誘き出すなんて出来るのか……?」
「安心しろ。俺は元金剛等級冒険者。ゴブリン相手の知識も経験も十分に有してる。加えて、俺はこの洞窟で最強だ。」
人間の匂いを嗅ぎつけたのだろう。洞窟の最奥からゾロゾロと緑色の小人達が現れ、クルトが腰を抜かす。それと対照的に、ガジュは激る力に震えていた。一切の光の差さない暗闇の洞窟。唯一の灯りであった松明を投げ捨て、ガジュはクルトを背負って走り出す。
「待ってろよバーゼ!!!陰湿な引きこもり野郎に!最悪の恐怖をお届けしてやるぜ!」
「あぁこら!吾輩より悪の覇王っぽいことを言うんじゃない!」
背中で喚くクルトと、二人を追いかける無数のゴブリン達。こうして二対数百の地獄の鬼ごっこが幕を開けたのであった。
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