追放投獄全部乗り越えて復讐を、執着無双の脱獄者〜夜だけ最強?いえ闇の中ならいつでも最強です〜

鮎川重

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第三章 冒険者になろう

59.老人はいつも一方的

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「ガジューーー!!!大丈夫ですかーーー!!!」
「うるせぇ!メガホンを置けメガホンを!」

 激戦が繰り広げられた塔、その付近にある森でガジュがユン達に囲まれて傷の治療をされていると、シャルルが【投獄】でどこからともなく現れる。その手には例のメガホンが握られており、そのあまりの声量に思わずガジュは手に持っていた包帯を投げつけていた。

「す、すみません。傷は大丈夫ですか?」
「問題ない。俺の【闇の王ナイトメア】は治癒力も強化されるからな。暗いところでじっとしいればどうにかなる。それより、そっちは片付けたのか?」
「はい。ここへ来る前にイリシテア中央の砦にある牢屋に印を描いておきました。奴は今頃その中です。」
「奴に筋肉はないから脱獄なんて不可能だと思うが、スキルの件があるからな。操った住民を使って逃げられたら困る。一応見にいくか。」
「そう思って牢屋の前にも印を描いてあります。早く行きましょう。」
「両親のことはいいのか。上で縛られたままだろ。」
「どうせ屍ですから急ぐ必要はありません。後でしっかりと弔います。何よりも優先すべきは正義ですから。」

 シャルルの言葉に反応し、キュキュが肩に体を入れてガジュを担ぎ上げる。強がってはいるものの全身から血を流してボロボロのガジュに対し、手を差し伸べるのは結局彼女だけだ。ユンとクルトはわちゃわちゃと戯れながらシャルルにしがみつき、五人は順にテレポートしていく。

「さてさて~散々俺らを弄んでくれたクソ野郎はっと。て、お前らは……。」
「おや、ガジュ君にユン君。それに残りのお二人も。」

 ケネ、とかそういう名前だっただろうか。たどり着いた場所では、誰がどう見ても偉そうな容姿の老人が檻の前に立ち、それを護衛するかのように兵士達が剣を構えていた。
 最早その向こうにいるはずのバーゼすら確認できない。明らかに異常なその状況を目にし、事情を知るガジュとユンは眉間に皺を寄せていく。

「そういえば僕らこんな人と会ってたねぇって感じだけど。どれだけ記憶を思い返しても、このおじいさんがここにいる理由には思い至らないなぁ。」
「同じくだ。説明を貰おうか。その檻にいる男は、俺達が頑張って倒した奴なんだが。」

 何とも歯切れ悪く、二人はケネを睨みつける。完全に忘れていたが、ガジュ達は「シャルル達にバレることなくバーゼの情報を探れ」という密命を受けてイリシテアを訪れている。
 それ故に今ここでどれぐらいの情報を明かしていいのか、ケネをどの程度問い詰めていいのか。ガジュ達がそれを推し測っている内に、ケネ本人が笑いながら話し始める。

「まぁこうなればもう隠す必要もありませんから。気にして頂かなくても構いませんよ。お仲間の方々には後で事情を話してあげてください。」
「そうかよ。で、お前は何故ここにいるんだ。バーゼはお前らの手に余る存在なんじゃなかったのか?」
「イリシテアに派遣しているこちらの手のものから連絡があったのですよ。街に魔物が攻め込み、ガジュ君達がバーゼと争っている、とね。」
「うんうん。正しい情報だけどそれが何か?バーゼの情報を探ろうとしたらあっちが絡んできて、超が付くほどの悪人だったから頑張って討伐した。それだけだよ。」

 何となく嫌な気配を感じ、ユンが必死に取り繕う。

「私は情報を集めろと指示を出したはずです。討伐しろなどとは一言も言っていません。」
「はぁ……?俺達は仲間であるシャルルをこいつに操られ、檻にまで入れられたんだぞ?しかもそいつは自分の妹を操って両親を殺し、挙句その屍を弄んだんだ。そんな奴を放置してノコノコお家に帰り、お前らに報告すりゃ良かったのかよ。」
「端的に言うとそうなりますね。私達はこの男の情報が欲しかっただけです。だというのにイリシテア全体を巻き込んで暴れるなど……。これでは例の見返りも与えられませんね。貴方達は精々銀等級からのスタートです。」
「なっ!そんな無茶苦茶な!見返りの件を抜きにしても僕らはバーゼという大犯罪者を倒したんだよ!?その功績だけでもう少し上の等級に行けるでしょ!」
「冒険者協会が評価するのは魔物の討伐だけです。犯罪者を罰したというなら、刑務官にでもなればいかかですかな。」

 完全にこちらを侮った態度のケネに対し、ユンの語気が荒くあんる。『クリミナル』一同、ガジュに影響されて気は短くなっているのだ。こんな仕打ちを受けて黙っていられるような善人は、ここにいない。

「そんなことよりも貴方達には尋ねたいことがあります。バーゼのこの様子は一体何でしょうか。服装に背中の翼、私達の知るバーゼとは大きく見た目が異なります。」
「言うわけねぇだろ。ふざけた理屈振りかざしておきながら聞きたいことだけ聞くとか舐めてんのか。」
「ふむ。まぁいいでしょう。【共有コンタクト】。」

 スキル名と思しき声と共にケネがガジュの頭に指を当てる。その途端、ガジュは脳から何かが吸い上げられるような感覚を覚え、気づいた時にはケネが目の前で小首を傾げていた。

「魔族、【秩序の管理者テンパランス】、スキルの強化、契約。ふむ、なるほど。事は分かりました。それでは、私はこれで。行きましょうか皆さん。」
「いやいや、待った待った。このまま帰すわけがなくない!?」

 ケネはあらゆることに合点がいった様な表情で踵を返し、その場を後にしようとする。そしてそこに続く兵士達の背中には、バーゼが抱えられていた。

 いくら何でもこんなに説明不足なまま、記憶もバーゼも奪われてはたまらない。そう判断してユンが兵士達の行手を阻むが、あまりにも多勢に無勢だ。兵士達は素早く魔法を詠唱し、ケネ達の姿が光に包まれていく。

「これからも頑張ってくださいね、ガジュ君。私達冒険者協会は、君達の活躍を祈っています。」

 それだけを言い残し、消えていくケネ一行。そのあまりのスピード感に、ガジュ達は呆然としていた。
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