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第四章 犯罪者共は学をつける
74.亜人と獣人
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「あぁ……!小賢しく逃げ惑う暗愚の輩よ!この槍で貫いて見せましょう!!!」
「ふむふむ。ガジュからある程度聞いてはいたけど、本当にあのモヤが色んな武器になるんだなぁ……。おっと危ない。バリバリ!」
いつの間にか完治した腕を振り回し、ちょこまかと動きながら攻撃を回避していたユンの足元に槍が伸び、咄嗟にシールドを張って防御する。戦闘時においてユンの詠唱省略は極めて強力だ。
そのままユンは荒ぶるキュキュに接近し、例の黒いモヤを不躾に触り始める。
「へ~なんか不思議な感触だね。ヘサから魔族は実態を持たないって話を聞いたからもしやと思ったけど、この煙にはちゃんと実体があるみたいだ。なんて言うんだろうな、スライムをもっとドロドロにした感じ!」
「よくそんな度胸がありますね……。言っておきますが、シャルはあまり印を書いていませんからね。キュキュと戦うなら一人でやってください。シャルは腕立て伏せをします。」
「はいは~い。大丈夫大丈夫。ユンちゃんにお任せあれ!」
「あぁぁぁぁぁ!!!!!私の忌まわしき体に触れる愚か者よ!あまりに無秩序なその行いに、裁きの鉄槌を!」
シャルルが少し離れたところで何百回目かの腕立てをすると同時に、今度はモヤが大槌へと姿を変え、ユンへと襲い掛かる。
だがこの程度の鈍重な攻撃、ユンにとっては何の脅威でもない。『魔拳』の本質は魔力を全身で素早く行き来させ、部分的に肉体を強化すること。足に魔力を込めれば、高速で振り下ろされる大槌を回避する事など容易である。
空を切った後、地面にめり込んだ大槌。それを眺めながら、ユンはただ思索に暮れていた。
「ねぇシャルちゃん。僕思ったんだけどさ、キュキュちゃんの別人格って割と意識があるよね。」
「えぇ?シャルは第二人格も第三人格も今日初めて見たのでよく分かりませんが……確かに多少考えて戦っていそうですね。今大槌に武器を変えたのも、槍ではユンの魔法の盾を崩せないと踏んだからでしょうし。」
「けどキュキュちゃんに記憶はない。そして三つある異能体……。確かキュキュちゃんの両親って生後すぐに亡くなったから、キュキュちゃん自身もほとんど覚えていないって言ってたよなぁ。」
「ユン?何を考えているのか知りませんが、そんなに呑気にしていて大丈夫なんですか?」
「遍く悪虐の輩に撃鉄を!それこそが私の、唯一の贖罪である!」
ブツブツと呟いている間に、キュキュのモヤは再び変容し、銃弾となってユンに飛来する。これまでであればその瞬間に足が動くのだろうが、ユンは微動だにしない。
こうなると流石に助けに行こうかとシャルルが思った時、ユンの体はいつの間にかキュキュの間近に迫っていた。
上半身にしがみつきながら顔を抑え、無理やりキュキュと目を合わせるユン。その頭には一つの推論が詰まっている。
「ねぇねぇ君さぁ。キュキュちゃんじゃないよね?名前はあるの?」
「私はキュキュを償うもの。それ以上でもそれ以外でもない!」
「う~ん。やっぱお話しするならキュキュちゃんに戻さなきゃダメかなぁ。戻す方法チョココロネしかないらしいけど……まぁボコボコにすればなんとかなるでしょ!」
対話に失敗したユンはそのままの勢いでキュキュの頭を地面に叩きつけ、一切の躊躇なく後頭部を踏みつける。チョココロネがないからといってユンは躊躇するような人間ではない。仲間だろうと何だろうと、ただ戦うのみだ。
「おーいキュキュちゃーん!元に戻ってよ~!僕、心が痛いって!」
「ユン!明らかにやりすぎです!それ以上は正義に反します!」
「いやいや仕方なくない?こうでもしないとキュキュちゃんずっとこのままだよ?クルちゃん最近見かけないし、チョココロネもないんだからさぁ。」
「う、あぁ……。恨めしき邪悪の徒よ……この憎しみはいつかきっと……。其方の命を奪う事こそが私の贖罪……。」
「お、ほらほら。なんか元に戻ってきた。」
シャルルと口論しながらも、ユンはキュキュの大きな体をボロ雑巾のように振り回し、校庭の土を血で染め上げていく。このままいくとキュキュが本当に死ぬのではないか。そう判断し、シャルルがユンとの戦闘を覚悟した頃、ようやくキュキュの目の色が戻っていく。
「うぅ……すみませんすみません……。私はまた暴れたんですね。申し訳ありません……。」
「いやいや気にしないでよ。それよりさ、質問に答えて欲しいんだけど。キュキュちゃんって自分のこと何の獣人、いや亜人だと思ってる?」
「へ?い、犬だと思っていますが……。も、もしかしてドブネズミとか何でしょうか。そうですよね、私のようなゴミカスが犬の血を継いでいるだなんて有り得ませんよね。お犬様は賢いですし、飼い主の手も噛みません。度々暴れて皆さんのお手を煩わせる私とは大違いです。」
血だらけのまま正気を取り戻したキュキュが真っ赤な地面に頭を擦り付けていく。その頭をゆっくりと撫で、キュキュは確信へと変わった推察を口にする。
「僕の蓄えた知識によれば、ずばり!キュキュちゃんは犬の獣人ではない!」
「じゃ、じゃあ私は一体何者なんでしょうか……。」
「三つ頭の凶暴な魔物、ケルベロスの亜人!それが君の正体です!!!」
自慢げに胸を張り、ユンは仲間の亜人に指を指す。
「ふむふむ。ガジュからある程度聞いてはいたけど、本当にあのモヤが色んな武器になるんだなぁ……。おっと危ない。バリバリ!」
いつの間にか完治した腕を振り回し、ちょこまかと動きながら攻撃を回避していたユンの足元に槍が伸び、咄嗟にシールドを張って防御する。戦闘時においてユンの詠唱省略は極めて強力だ。
そのままユンは荒ぶるキュキュに接近し、例の黒いモヤを不躾に触り始める。
「へ~なんか不思議な感触だね。ヘサから魔族は実態を持たないって話を聞いたからもしやと思ったけど、この煙にはちゃんと実体があるみたいだ。なんて言うんだろうな、スライムをもっとドロドロにした感じ!」
「よくそんな度胸がありますね……。言っておきますが、シャルはあまり印を書いていませんからね。キュキュと戦うなら一人でやってください。シャルは腕立て伏せをします。」
「はいは~い。大丈夫大丈夫。ユンちゃんにお任せあれ!」
「あぁぁぁぁぁ!!!!!私の忌まわしき体に触れる愚か者よ!あまりに無秩序なその行いに、裁きの鉄槌を!」
シャルルが少し離れたところで何百回目かの腕立てをすると同時に、今度はモヤが大槌へと姿を変え、ユンへと襲い掛かる。
だがこの程度の鈍重な攻撃、ユンにとっては何の脅威でもない。『魔拳』の本質は魔力を全身で素早く行き来させ、部分的に肉体を強化すること。足に魔力を込めれば、高速で振り下ろされる大槌を回避する事など容易である。
空を切った後、地面にめり込んだ大槌。それを眺めながら、ユンはただ思索に暮れていた。
「ねぇシャルちゃん。僕思ったんだけどさ、キュキュちゃんの別人格って割と意識があるよね。」
「えぇ?シャルは第二人格も第三人格も今日初めて見たのでよく分かりませんが……確かに多少考えて戦っていそうですね。今大槌に武器を変えたのも、槍ではユンの魔法の盾を崩せないと踏んだからでしょうし。」
「けどキュキュちゃんに記憶はない。そして三つある異能体……。確かキュキュちゃんの両親って生後すぐに亡くなったから、キュキュちゃん自身もほとんど覚えていないって言ってたよなぁ。」
「ユン?何を考えているのか知りませんが、そんなに呑気にしていて大丈夫なんですか?」
「遍く悪虐の輩に撃鉄を!それこそが私の、唯一の贖罪である!」
ブツブツと呟いている間に、キュキュのモヤは再び変容し、銃弾となってユンに飛来する。これまでであればその瞬間に足が動くのだろうが、ユンは微動だにしない。
こうなると流石に助けに行こうかとシャルルが思った時、ユンの体はいつの間にかキュキュの間近に迫っていた。
上半身にしがみつきながら顔を抑え、無理やりキュキュと目を合わせるユン。その頭には一つの推論が詰まっている。
「ねぇねぇ君さぁ。キュキュちゃんじゃないよね?名前はあるの?」
「私はキュキュを償うもの。それ以上でもそれ以外でもない!」
「う~ん。やっぱお話しするならキュキュちゃんに戻さなきゃダメかなぁ。戻す方法チョココロネしかないらしいけど……まぁボコボコにすればなんとかなるでしょ!」
対話に失敗したユンはそのままの勢いでキュキュの頭を地面に叩きつけ、一切の躊躇なく後頭部を踏みつける。チョココロネがないからといってユンは躊躇するような人間ではない。仲間だろうと何だろうと、ただ戦うのみだ。
「おーいキュキュちゃーん!元に戻ってよ~!僕、心が痛いって!」
「ユン!明らかにやりすぎです!それ以上は正義に反します!」
「いやいや仕方なくない?こうでもしないとキュキュちゃんずっとこのままだよ?クルちゃん最近見かけないし、チョココロネもないんだからさぁ。」
「う、あぁ……。恨めしき邪悪の徒よ……この憎しみはいつかきっと……。其方の命を奪う事こそが私の贖罪……。」
「お、ほらほら。なんか元に戻ってきた。」
シャルルと口論しながらも、ユンはキュキュの大きな体をボロ雑巾のように振り回し、校庭の土を血で染め上げていく。このままいくとキュキュが本当に死ぬのではないか。そう判断し、シャルルがユンとの戦闘を覚悟した頃、ようやくキュキュの目の色が戻っていく。
「うぅ……すみませんすみません……。私はまた暴れたんですね。申し訳ありません……。」
「いやいや気にしないでよ。それよりさ、質問に答えて欲しいんだけど。キュキュちゃんって自分のこと何の獣人、いや亜人だと思ってる?」
「へ?い、犬だと思っていますが……。も、もしかしてドブネズミとか何でしょうか。そうですよね、私のようなゴミカスが犬の血を継いでいるだなんて有り得ませんよね。お犬様は賢いですし、飼い主の手も噛みません。度々暴れて皆さんのお手を煩わせる私とは大違いです。」
血だらけのまま正気を取り戻したキュキュが真っ赤な地面に頭を擦り付けていく。その頭をゆっくりと撫で、キュキュは確信へと変わった推察を口にする。
「僕の蓄えた知識によれば、ずばり!キュキュちゃんは犬の獣人ではない!」
「じゃ、じゃあ私は一体何者なんでしょうか……。」
「三つ頭の凶暴な魔物、ケルベロスの亜人!それが君の正体です!!!」
自慢げに胸を張り、ユンは仲間の亜人に指を指す。
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