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第四章 犯罪者共は学をつける
83.チャリオット
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「おいガジュ!冷静になれ!そいつは魔族だ!」
「復讐、復讐……!!!」
犬……?だろうか。一匹一匹が人の倍はありそうな巨大な四足歩行の生物が二匹、そしてそこに乗る鎧の騎士が一人。『チャリオット』と名乗ったその男はガジュの手を掴み、ガジュの口の中へと消えていく。
「くっ、完全に入り込んだか……。まさかこんなタイミングで現れるとは……!」
「ハクア、ハクアを殺す。それだけ、たったそれだけだ。」
「すまないな……ガジュ。分かっていたのに止められなかった。安心しろ、責任を持って俺がお前を元に戻す。」
ハクアは再び剣を抜き、異形と化したガジュと向き合う。つい先ほどまでハクアの目の前にいた男と似たような鎧に身を包み、虚な目となったガジュ。誰がどう見ても、魔族に体を乗っ取られている。
そのまま凶暴化したガジュは拳を振り上げ、一直線にハクアへと突撃し始める。こうなれば本気を出すしかない。ハクアは素早く投射機のカメラを叩き壊し、剣の魔力を確認したが、そこには確かな異変が起きていた。
「魔力が……ない?そんなはずは!ジュノが遠隔で魔力を供給しているはずだろ!?」
この創立祭の為に、ハクアはしっかりと魔力の供給をジュノに命じておいた。ジュノを仲間に入れたのは、彼女の目的がハクアと合致していた上に、魔力というハクア最大の弱点をカバーできる力を持っていたから。あの力があったからこそ、『試練の迷宮』内部でもハクアは最後まで全力で戦うことが出来た。加えて彼女は近接戦闘にも長けているから、例の魔法耐性を持った竜の相手も容易。
そんなジュノからの魔力供給が止まっている。彼女がどうやって魔力を供給しているのか詳しく知りはしないが、確か特に意識することなく自動で行えると言っていたはずだ。それが止まっているとなれば、ジュノが意識的に魔力供給を止めているか、あるいはジュノ自身が瀕死に陥っているか。
今こうしてガジュとハクアが対面しているように、ジュノもガジュの仲間の誰かと対面しているはずだが、彼女が負けることなどあり得るのだろうか。ハクアが思考を巡らせていると、遠くから爆音が響き渡る。
「はっ、なるほどな……。この祭りには、化け物が集まってるってことか。」
山の反対側でいつの間にか巨大化していたジュノらしき物体。それがあろうことか仰向けに倒れていき、数秒後に大地が揺れる。ガジュに入り込んだ『チャリオット』と、ジュノ、そしてジュノを倒した何者か。ハクアは山を闊歩する三匹の化け物の存在を認識し、改めて剣を握る力を強くする。
「どう転ぶか分からないが、とにかく俺はお前と戦うべきだろうな。」
「死ねぇぇぇ!!!」
狂乱してこちらに殴りかかってくるガジュを必死で回避し、ハクアは冷や汗を流す。魔力の供給を失ったハクアは、極めて無力な存在だ。
【魔法剣】は魔力がなければ使えないし、辺りには魔力を供給できそうな魔物もいない。対するガジュはというと、まだ夕日に照らされているのにとんでもない身体能力を発揮している。恐らく魔族の影響を受けてスキルが強化されているのだろう。
無力な自分と、絶対的力を持った元仲間。
「なるほど、お前はいつもこういう気持ちで生きてきたんだな……。」
「死ね、死ね死ね死ね!俺を追放して、俺を牢屋にぶち込んだ腐れ野郎はすぐに死ね!」
「うがっ!ははっ、お前はいつでも語彙力が少ないな……。」
ただの剣士と化したハクアの腕をガジュが掴み、捻りあげる。やはりガジュの力は何倍にも増している。先ほど同じことをされた時は精々体を浮かされた程度だったはずだが、今回は抵抗の余地もなく骨を砕かれた。
左腕は粉砕、右手の剣はただの剣。ハクアは完全に成す術なく、そのやつれた体にガジュが連撃を叩き込んでいく。一発一発が凄まじく重く、これまでにガジュが溜め込んできた復讐心が詰まった拳。それが突き刺さる度ハクアの体が歪に曲がり、全身から血が噴き出していく。
「すまなかった、ガジュ。俺が、俺が悪いんだ。俺が哀れにも操られ、それを隠すという選択を取ってしまった。全部、俺が悪いんだ。」
「黙れ、黙れ黙れ黙れ!!!」
最早勝つことは不可能。ハクアは死を覚悟し、己の罪を悔いていく。思えば全てが選択ミスだった。ガジュを追放した事が自分達の意思ではないと分かった時点で素直に全てを打ち明け、ガジュと手を取り合って事の犯人と戦えば良かったのだろう。
こうなった責任は全て自分にある。
ハクアがそう思いながら口から血を吐くと、霞む視界の先で因縁の相手が暴れ始めていた。
「黙れ黙れ黙れ!黙れって言ってんだよクソがぁぁぁ!!!」
心底動きにくそうにしながらガジュが暴れ回り、罵声と共に己の喉へ手を突っ込んでいく。あそこから武器でも取り出すのだろうか。そんなハクアの想像を覆すようにガジュの口から金色の吐瀉物が吐き出され、ガジュの鎧は消えていった。
「あぁぁぁぁぁぁぁ!!!クソ魔族が!手握っただけで人の体に入り込みやがって!チャリオットだか何だかしらねぇがよく覚えとけ!ハクアを叩き殺すのは俺だ!テメェみたいなゴミの力なんざ、借りる気ねぇんだよ!!!」
復讐の化身の憎悪は魔族のそれすらも軽く凌駕し、己の体を自力で取り戻していた。
「復讐、復讐……!!!」
犬……?だろうか。一匹一匹が人の倍はありそうな巨大な四足歩行の生物が二匹、そしてそこに乗る鎧の騎士が一人。『チャリオット』と名乗ったその男はガジュの手を掴み、ガジュの口の中へと消えていく。
「くっ、完全に入り込んだか……。まさかこんなタイミングで現れるとは……!」
「ハクア、ハクアを殺す。それだけ、たったそれだけだ。」
「すまないな……ガジュ。分かっていたのに止められなかった。安心しろ、責任を持って俺がお前を元に戻す。」
ハクアは再び剣を抜き、異形と化したガジュと向き合う。つい先ほどまでハクアの目の前にいた男と似たような鎧に身を包み、虚な目となったガジュ。誰がどう見ても、魔族に体を乗っ取られている。
そのまま凶暴化したガジュは拳を振り上げ、一直線にハクアへと突撃し始める。こうなれば本気を出すしかない。ハクアは素早く投射機のカメラを叩き壊し、剣の魔力を確認したが、そこには確かな異変が起きていた。
「魔力が……ない?そんなはずは!ジュノが遠隔で魔力を供給しているはずだろ!?」
この創立祭の為に、ハクアはしっかりと魔力の供給をジュノに命じておいた。ジュノを仲間に入れたのは、彼女の目的がハクアと合致していた上に、魔力というハクア最大の弱点をカバーできる力を持っていたから。あの力があったからこそ、『試練の迷宮』内部でもハクアは最後まで全力で戦うことが出来た。加えて彼女は近接戦闘にも長けているから、例の魔法耐性を持った竜の相手も容易。
そんなジュノからの魔力供給が止まっている。彼女がどうやって魔力を供給しているのか詳しく知りはしないが、確か特に意識することなく自動で行えると言っていたはずだ。それが止まっているとなれば、ジュノが意識的に魔力供給を止めているか、あるいはジュノ自身が瀕死に陥っているか。
今こうしてガジュとハクアが対面しているように、ジュノもガジュの仲間の誰かと対面しているはずだが、彼女が負けることなどあり得るのだろうか。ハクアが思考を巡らせていると、遠くから爆音が響き渡る。
「はっ、なるほどな……。この祭りには、化け物が集まってるってことか。」
山の反対側でいつの間にか巨大化していたジュノらしき物体。それがあろうことか仰向けに倒れていき、数秒後に大地が揺れる。ガジュに入り込んだ『チャリオット』と、ジュノ、そしてジュノを倒した何者か。ハクアは山を闊歩する三匹の化け物の存在を認識し、改めて剣を握る力を強くする。
「どう転ぶか分からないが、とにかく俺はお前と戦うべきだろうな。」
「死ねぇぇぇ!!!」
狂乱してこちらに殴りかかってくるガジュを必死で回避し、ハクアは冷や汗を流す。魔力の供給を失ったハクアは、極めて無力な存在だ。
【魔法剣】は魔力がなければ使えないし、辺りには魔力を供給できそうな魔物もいない。対するガジュはというと、まだ夕日に照らされているのにとんでもない身体能力を発揮している。恐らく魔族の影響を受けてスキルが強化されているのだろう。
無力な自分と、絶対的力を持った元仲間。
「なるほど、お前はいつもこういう気持ちで生きてきたんだな……。」
「死ね、死ね死ね死ね!俺を追放して、俺を牢屋にぶち込んだ腐れ野郎はすぐに死ね!」
「うがっ!ははっ、お前はいつでも語彙力が少ないな……。」
ただの剣士と化したハクアの腕をガジュが掴み、捻りあげる。やはりガジュの力は何倍にも増している。先ほど同じことをされた時は精々体を浮かされた程度だったはずだが、今回は抵抗の余地もなく骨を砕かれた。
左腕は粉砕、右手の剣はただの剣。ハクアは完全に成す術なく、そのやつれた体にガジュが連撃を叩き込んでいく。一発一発が凄まじく重く、これまでにガジュが溜め込んできた復讐心が詰まった拳。それが突き刺さる度ハクアの体が歪に曲がり、全身から血が噴き出していく。
「すまなかった、ガジュ。俺が、俺が悪いんだ。俺が哀れにも操られ、それを隠すという選択を取ってしまった。全部、俺が悪いんだ。」
「黙れ、黙れ黙れ黙れ!!!」
最早勝つことは不可能。ハクアは死を覚悟し、己の罪を悔いていく。思えば全てが選択ミスだった。ガジュを追放した事が自分達の意思ではないと分かった時点で素直に全てを打ち明け、ガジュと手を取り合って事の犯人と戦えば良かったのだろう。
こうなった責任は全て自分にある。
ハクアがそう思いながら口から血を吐くと、霞む視界の先で因縁の相手が暴れ始めていた。
「黙れ黙れ黙れ!黙れって言ってんだよクソがぁぁぁ!!!」
心底動きにくそうにしながらガジュが暴れ回り、罵声と共に己の喉へ手を突っ込んでいく。あそこから武器でも取り出すのだろうか。そんなハクアの想像を覆すようにガジュの口から金色の吐瀉物が吐き出され、ガジュの鎧は消えていった。
「あぁぁぁぁぁぁぁ!!!クソ魔族が!手握っただけで人の体に入り込みやがって!チャリオットだか何だかしらねぇがよく覚えとけ!ハクアを叩き殺すのは俺だ!テメェみたいなゴミの力なんざ、借りる気ねぇんだよ!!!」
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