追放投獄全部乗り越えて復讐を、執着無双の脱獄者〜夜だけ最強?いえ闇の中ならいつでも最強です〜

鮎川重

文字の大きさ
84 / 124
第四章 犯罪者共は学をつける

83.チャリオット

しおりを挟む
「おいガジュ!冷静になれ!そいつは魔族だ!」
「復讐、復讐……!!!」

 犬……?だろうか。一匹一匹が人の倍はありそうな巨大な四足歩行の生物が二匹、そしてそこに乗る鎧の騎士が一人。『チャリオット』と名乗ったその男はガジュの手を掴み、ガジュの口の中へと消えていく。

「くっ、完全に入り込んだか……。まさかこんなタイミングで現れるとは……!」
「ハクア、ハクアを殺す。それだけ、たったそれだけだ。」
「すまないな……ガジュ。分かっていたのに止められなかった。安心しろ、責任を持って俺がお前を元に戻す。」

 ハクアは再び剣を抜き、異形と化したガジュと向き合う。つい先ほどまでハクアの目の前にいた男と似たような鎧に身を包み、虚な目となったガジュ。誰がどう見ても、魔族に体を乗っ取られている。
 そのまま凶暴化したガジュは拳を振り上げ、一直線にハクアへと突撃し始める。こうなれば本気を出すしかない。ハクアは素早く投射機のカメラを叩き壊し、剣の魔力を確認したが、そこには確かな異変が起きていた。

「魔力が……ない?そんなはずは!ジュノが遠隔で魔力を供給しているはずだろ!?」

 この創立祭の為に、ハクアはしっかりと魔力の供給をジュノに命じておいた。ジュノを仲間に入れたのは、彼女の目的がハクアと合致していた上に、魔力というハクア最大の弱点をカバーできる力を持っていたから。あの力があったからこそ、『試練の迷宮』内部でもハクアは最後まで全力で戦うことが出来た。加えて彼女は近接戦闘にも長けているから、例の魔法耐性を持った竜の相手も容易。

 そんなジュノからの魔力供給が止まっている。彼女がどうやって魔力を供給しているのか詳しく知りはしないが、確か特に意識することなく自動で行えると言っていたはずだ。それが止まっているとなれば、ジュノが意識的に魔力供給を止めているか、あるいはジュノ自身が瀕死に陥っているか。

 今こうしてガジュとハクアが対面しているように、ジュノもガジュの仲間の誰かと対面しているはずだが、彼女が負けることなどあり得るのだろうか。ハクアが思考を巡らせていると、遠くから爆音が響き渡る。

「はっ、なるほどな……。この祭りには、化け物が集まってるってことか。」

 山の反対側でいつの間にか巨大化していたジュノらしき物体。それがあろうことか仰向けに倒れていき、数秒後に大地が揺れる。ガジュに入り込んだ『チャリオット』と、ジュノ、そしてジュノを倒した何者か。ハクアは山を闊歩する三匹の化け物の存在を認識し、改めて剣を握る力を強くする。

「どう転ぶか分からないが、とにかく俺はお前と戦うべきだろうな。」
「死ねぇぇぇ!!!」

 狂乱してこちらに殴りかかってくるガジュを必死で回避し、ハクアは冷や汗を流す。魔力の供給を失ったハクアは、極めて無力な存在だ。
 【魔法剣】は魔力がなければ使えないし、辺りには魔力を供給できそうな魔物もいない。対するガジュはというと、まだ夕日に照らされているのにとんでもない身体能力を発揮している。恐らく魔族の影響を受けてスキルが強化されているのだろう。

 無力な自分と、絶対的力を持った元仲間。

「なるほど、お前はいつもこういう気持ちで生きてきたんだな……。」
「死ね、死ね死ね死ね!俺を追放して、俺を牢屋にぶち込んだ腐れ野郎はすぐに死ね!」
「うがっ!ははっ、お前はいつでも語彙力が少ないな……。」

 ただの剣士と化したハクアの腕をガジュが掴み、捻りあげる。やはりガジュの力は何倍にも増している。先ほど同じことをされた時は精々体を浮かされた程度だったはずだが、今回は抵抗の余地もなく骨を砕かれた。
 左腕は粉砕、右手の剣はただの剣。ハクアは完全に成す術なく、そのやつれた体にガジュが連撃を叩き込んでいく。一発一発が凄まじく重く、これまでにガジュが溜め込んできた復讐心が詰まった拳。それが突き刺さる度ハクアの体が歪に曲がり、全身から血が噴き出していく。

「すまなかった、ガジュ。俺が、俺が悪いんだ。俺が哀れにも操られ、それを隠すという選択を取ってしまった。全部、俺が悪いんだ。」
「黙れ、黙れ黙れ黙れ!!!」

 最早勝つことは不可能。ハクアは死を覚悟し、己の罪を悔いていく。思えば全てが選択ミスだった。ガジュを追放した事が自分達の意思ではないと分かった時点で素直に全てを打ち明け、ガジュと手を取り合って事の犯人と戦えば良かったのだろう。
 こうなった責任は全て自分にある。
 ハクアがそう思いながら口から血を吐くと、霞む視界の先で因縁の相手が暴れ始めていた。

「黙れ黙れ黙れ!黙れって言ってんだよクソがぁぁぁ!!!」

 心底動きにくそうにしながらガジュが暴れ回り、罵声と共に己の喉へ手を突っ込んでいく。あそこから武器でも取り出すのだろうか。そんなハクアの想像を覆すようにガジュの口から金色の吐瀉物が吐き出され、ガジュの鎧は消えていった。

「あぁぁぁぁぁぁぁ!!!クソ魔族が!手握っただけで人の体に入り込みやがって!チャリオットだか何だかしらねぇがよく覚えとけ!ハクアを叩き殺すのは俺だ!テメェみたいなゴミの力なんざ、借りる気ねぇんだよ!!!」

 復讐の化身の憎悪は魔族のそれすらも軽く凌駕し、己の体を自力で取り戻していた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

酔っぱらったせいで、勇者パーティーを洗脳してしまった

透けてるブランディシュカ
ファンタジー
悪友のせいで酔ったら。(※重複投稿しています)仲仁へび

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話

桜井正宗@オートスキル第1巻発売中
青春
 ――結婚しています!  それは二人だけの秘密。  高校二年の遙と遥は結婚した。  近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。  キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。  ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。 *結婚要素あり *ヤンデレ要素あり

裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね

魚夢ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。 元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、 王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。 代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。 父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。 カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。 その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。 ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。 「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」 そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。 もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。 

無能なので辞めさせていただきます!

サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。 マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。 えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって? 残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、 無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって? はいはいわかりました。 辞めますよ。 退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。 自分無能なんで、なんにもわかりませんから。 カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。

最上級のパーティで最底辺の扱いを受けていたDランク錬金術師は新パーティで成り上がるようです(完)

みかん畑
ファンタジー
最上級のパーティで『荷物持ち』と嘲笑されていた僕は、パーティからクビを宣告されて抜けることにした。 在籍中は僕が色々肩代わりしてたけど、僕を荷物持ち扱いするくらい優秀な仲間たちなので、抜けても問題はないと思ってます。

ダンジョンでオーブを拾って『』を手に入れた。代償は体で払います

とみっしぇる
ファンタジー
スキルなし、魔力なし、1000人に1人の劣等人。 食っていくのがギリギリの冒険者ユリナは同じ境遇の友達3人と、先輩冒険者ジュリアから率のいい仕事に誘われる。それが罠と気づいたときには、絶対絶命のピンチに陥っていた。 もうあとがない。そのとき起死回生のスキルオーブを手に入れたはずなのにオーブは無反応。『』の中には何が入るのだ。 ギリギリの状況でユリアは瀕死の仲間のために叫ぶ。 ユリナはスキルを手に入れ、ささやかな幸せを手に入れられるのだろうか。

処理中です...