追放投獄全部乗り越えて復讐を、執着無双の脱獄者〜夜だけ最強?いえ闇の中ならいつでも最強です〜

鮎川重

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第六章 試練の迷宮

109.不自然な無力感

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「おい、後ろだガジュ!」

 ハクアが声をかけ、背後に迫っていた狼の魔物をキュキュが蹴り飛ばす。

 試練の迷宮一層。八人は団子状になって細い一本道を進んでいた。襲い来る大量の魔物とそれを手早く一掃していく仲間達。それに囲まれながら、ガジュは妙な無力感を覚えていた。

「くそ……。これ俺が来た意味あったのかよ。」
「んーないかもねぇ。回復はレザ、遠距離はラナーナとシャルちゃん、近距離は僕とハクアがいるし。サポート役も身軽なキュキュちゃんとジュノがいれば事足りてる。」
「そんなこと言わないでくださいよユン。ガジュは比較的メンタルが弱めなんですから。」

 ガジュに出来ることはパワーによる一点突破のみである。スキルの応用は効かないし、魔法も使えない。幸いなことにここ試練の迷宮は室内ということもあって中々の暗さではあるが、結局それだけだ。
 少し前まではシャルルとキュキュという比較的戦闘力の低い二人組がいたが、彼女達はいつの間にか魔族と契約し圧倒的な力を手にしてしまっている。
 そんな中、ガジュを擁護してくれるのはかつての因縁の相手だけだ。

「構造は違えど、中にいる魔物は概ね同じみたいだからな。ガジュにも出番があるはずーーって、言ってたら現れたな。ガジュ、あの竜は魔法耐性を持ってる。お前が暴れるのに打ってつけの相手だぞ。」

 細い通路の上から降りかかった一匹の竜。凍龍を見た経験のあるガジュ達からすれば、龍と言うよりトカゲに近い存在に見えるが、そんなことはどうでもいい。
 魔法が効かない相手。それならばハクアの言う通りガジュの出る幕だろう。
 ユンは『魔拳』で拳に魔力を込めているし、ハクアのスキルも【魔法剣】、ラナーナとレザに関しては言うまでもないが、この八人は半数が魔力に依存した戦闘スタイルを確立している。
 キュキュとシャルルは物理突破力こそあれど、龍を倒すほどの火力を出すことが出来ない。物理一点特化の自分こそが今最も求められている駒。
 ガジュが胸を高鳴らせながら龍に突撃すると、横からもう一人の物理型が素早くガジュを追い越していった。

「私も、負けてない。」
「なっ!この化け物が……。」

 ジュノが龍に向かって勇ましく突撃し、龍の体が瞬く間に砕け散る。
 ユンからジュノは魔法を無詠唱で唱える格闘型、つまりユンとほぼ同じ戦闘スタイルだと聞いていたが、一度体をボロボロに破壊されたことで戦闘スタイルにも変化が生じたのだろう。
 ジュノの体は所詮全て作り物。前回はそれこそユンのような細い腕をしていたが、今回新調された肉体は見た目こそそのままだが、かなりの筋肉質だ。この肉体に魔族の身体能力が合わされば、いよいよガジュの存在意義は皆無である。

 龍を撃破し、ガジュ達の元へと帰還したジュノは精一杯胸を張り、いつも通りユンを睨みつけ始める。

「見てた?私はまた強くなった。君なんかよりずっとユノ様に近い。」
「まだそんなこと言ってるの?一回ボコボコにされたのに元気なものだねぇ。」
「うるさい。私は絶対に君を認めない。」

 ジュノとしてはただユンに力を示したかっただけなのだろう。だがそのあまりの暴れっぷりにガジュの精神はどんどんと痛ぶられていく。
 自分が役に立たないのはいつものことだ。だがそれは明るい場所であったり、敵との相性が悪かったりと明確な要因があってのこと。今回はただ純粋に自分の力が及んでいない。
 その事実がガジュの傍若無人さを奪い去り、メンタルが不自然なほどに削られる。

「一回目に来た時はここまで辿り着くことも出来なかったが……やはり八人もいると容易だな。」
「まぁ約一名役に立ってないのはいるけどね。ガジュ~しょげてないで二層に降りるよー!」
「あ、あぁ。」
「本当に暗くなってるじゃないですか。らしくないですよ。いつものように馬鹿みたいに無鉄砲でいてください。」

 階段を降りながらシャルル達がガジュの曲がった背中を叩き、励ましの言葉をかけてくる。
 大丈夫、自分がどれだけ役に立たなくとも、もう自分を追放するような奴はいない。仲間は無条件に助け合うもの。長い旅路で培った信頼がガジュの心を癒やし始めた頃、辺りから足音が減っているのに気づく。

「なんかさっきから人数少なくないか?八人いるはずだよな。」
「え?あぁそういえば確かに。キュキュちゃんとかレザとか居ないねぇ。あれ?シャルちゃんもだ。さっき喋ってなかったっけ?」

 辺りを見渡した時、ガジュの視界にいたのはユンだけ。迷宮の名を冠している以上、道に迷うという可能性はあるだろうが、これまで通ってきた道に分かれ道は一切なかった。暗いといえば暗いが別に視界を奪われるほどでもないし、八人中六人もいなくなる、いやガジュ達二人だけが逸れたのかもしれないが、どちらにせよそんな事はあり得ないはずだ。

 ガジュがそう思った時、横にいたはずのユンすらも姿を消し、代わりに一体の化け物が姿を現していた。

「待ち侘びたぞガジュ・アザット。我はタワー。破滅を齎すもの。世界ワールドに近づくものには、滅びをもたらそう。」
「はっ、こんなとこにまで現れんのかよお前ら……。上等だ、叩きのめしてやる。」

 何度目かの魔族との対面。孤立無縁の状況での遭遇に、ガジュは冷や汗を流していた。
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