追放投獄全部乗り越えて復讐を、執着無双の脱獄者〜夜だけ最強?いえ闇の中ならいつでも最強です〜

鮎川重

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第六章 試練の迷宮

110.ガジュの破滅

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「どいつもこいつも似たような喋り方しやがって。もう少し個性を出しやがれ個性を。」
「我々はワールドに続くもの。個性などは不要であり、左様なものは滅びに通じるだけだ。」

 タワーとか名乗っただろうか。この魔族を見た瞬間から、ガジュのメンタルはより一層暗くなっている。恐らくこいつが先ほどからガジュの心を曇らせていた元凶だろう。常に抗い、拳を天に向け続けてきたガジュがあの程度の事で悲しむようなことはあり得ない。

「ユン達をどこにやりやがった。そもそもここどこだよ。」
「ここは我が生み出した隔絶空間。安心しろ、我を倒せば元の場所に戻り、お前の大好きなお仲間とも再会出来るぞ。」
「なるほどな。至って簡単な話だ。」
「まぁ、そんなことが出来ればだがな。我は破滅の象徴。貴様は我に触れることすら、叶わない。」

 そう言ってタワーが壁に手を触れ、凄まじい音と共に壁が崩落していく。

「我の体に触れることは即ち、滅びを意味する。死ね、凡俗よ。」
「はぁ?何だ、お前もデスと似たような性質かよ。」
「あのような偏屈と一緒にするでない。生ける者も、死せる者も、あるいは物すらも。滅びは万物へ平等に降り注ぐ。」

 タワーの拳が迫り来り、ガジュは軽く回避する。どんな能力を持っていようと、相手は所詮魔族。パンチ一つ避けることなど造作もない。
 が、しかし。体に命中するのは避けたものの、服の端にでも拳が触れたのだろうか。ガジュ愛用のボロ切れのような上着がたちまち綻びていき、一枚の布は数秒のうちに塵と化してしまった。

「比喩表現なしに触ったところが滅んでいくのかよ……。こいつだけ次元が違いすぎるだろ。」

 正直言って、相性は最悪だ。ガジュがこれまでに戦った魔族は比較的倒しやすい相手だった。チャリオットはただの力自慢。デビルはただ幻影を作り出すだけの相手。バーゼが契約していたテンパランスも然程脅威ではなかった。
 だが、こいつに関しては絶望的とも言える相手である。触れるだけで滅ぶ。となれば近距離攻撃以外選択肢のないガジュに勝機はないだろう。
 瓦礫でも投げつけてみればまだ勝機があるかもしれないが、今適当に投げつけている石がタワーに当たった瞬間朽ちているあたり、奴の能力は拳に起因したものではなく体全身によるものなのだろう。

「いいか、貴様は無能な男なのだ。周りを見てみろ。ここは試練の迷宮内部にある、万物から隔絶された空間。暗く沈んだこの場所は貴様にとって最高の環境であろう?だが、成す術もなく、こうやって我に石を投げている。所詮貴様など仲間がいなければ何も出来ない愚図なのだ。」
「うるせぇな。そんなことは俺も分かってんだよ。何回似たようなことを言われてきたと思ってやがる。」

 先ほどまでの泣き言はタワーの影響だろうが、同様のことをガジュ自身ずっと思ってきている。何だかんだと立ちはだかる壁を打ち砕いてきたが、自分一人の力で全てを穿ったことなど一度もない。アルカトラを脱獄した時からずっと、誰かの力を借りて歩んできている。

「今も昔も、俺は仲間に恵まれてるだけの無能だ。だがな、無能ってのは不能の理由にはならない。全てを賭けてぶん殴れば、結果は後から付いてくるものなんだよ。」

 今回もまた、仲間の力を借りなければならない。それがガジュの生き様であって、運命だ。

 ただタイミングが違うだけ。

 タワーに勝つために力を借りるのではなく、勝った後の後始末を仲間に任せるだけだ。

「仲間のことなら散々助けてるし、この後にも助ける予定が控えてるんだ。悪いがここで滅びるつもりは、毛頭ない!」

 触れた側から滅びていくなら、直接触れなければいいだけである。ガジュはかろうじて残っていたズボンの裾を引きちぎり、拳に巻き付けた後、タワーの腹部を殴りつける。
 部屋はほぼ暗闇。【闇の王ナイトメア】のフルパワーをモロに喰らったタワーは一瞬で煙と化し、瓦礫のような物を残してその場から消えていった。
 能力が強力な分、耐久力に欠けているのだろう。倒すの自体は楽な相手だ。だが、代償は計り知れない。

「やっぱりこうなるか……。ほんと、情けない限りだ。」

 間に物を介した程度で無効化できる能力であれば、魔族など名乗れない。あくまでも効果を薄められただけ。間に介した布は勿論、タワーを殴ったガジュの右腕もバラバラになり、肩の辺りまでを失ったガジュはその場に倒れ込んでいた。
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