112 / 124
第六章 試練の迷宮
111.残された仲間達
しおりを挟む
「おいガジュ!生きてるか!」
試練の迷宮二層入り口。階段を降りたばかりの場所なだけあって、少し広くなったその場所で、ハクア達はガジュを取り囲んでいた。
つい先ほどまで横にいたはずのガジュが突如姿を消したかと思えば、右肩から先を失ったボロボロの状態で現れた。どう見ても、異常な何かが働きかけている。
「一応息はしていそうですが、意識はなさそうですね。腕はこれ……切られたというより崩れたという表現の方が正しいでしょうか。」
「まぁ間違いなく魔族の仕業だろうねぇ。やっぱりここにも来てるのかぁ。」
白目を剥いてぶっ倒れているガジュにシャルルとユンが近づき、患部を確かめる。突如姿が消えたことも含め、明らかに人智を超えた傷。
普通なら困惑する所だろうが、一同の頭にはこうしたことを可能にする存在が深く刻み込まれている。
「ジュノ、ある程度魔族の気配は察せるんだろ?近くに魔族はいるのか。」
「いる、というかいっぱい良すぎていて気にも留めてなかった。そこの二人が契約してる魔族達は勿論、後四匹ぐらいは気配があったけどついさっき一つ消えた。丁度、この人がいなくなった時ぐらい。」
「ガジュは魔族に攫われ相打ちした、って考えるのが妥当かな。取り敢えず治癒をかけてみるよ。治癒の精霊、頑張ってくれ。」
他の精霊と違い、治癒の精霊は非常に従順で効率的。適性さえあれば、一等簡単に使うことが出来る。
レザはガジュの失われた腕に全力で治癒魔法をかけていく。これだけの治癒魔法であれば、通常の欠損であれば簡単に治癒できるだろう。だが、ガジュの腕は欠片も戻らない。
「ううん……これは無理だね。治癒魔法はあくまでも怪我を治す物。ガジュのこれは怪我のレベルを超えてるよ。」
「で、でも、諦めるんですか?ガ、ガジュさんは……だ、大事な仲間です。」
「この獣人の子の言う通りよ。何だかよく分からないけど、私達はガジュと色々イザコザを経てるのよ?こんな所で見捨てる事は出来ないわ。」
ラナーナの歯切れが妙に悪いのは、相変わらず何も教えられていないからだろう。知らぬ間にガジュと決別し、知らぬ間に和解して、知らぬ間にここに来ている。
そんな彼女であっても救おうと思うほど、ガジュは周囲から信頼されている人間だ。
それは冷淡な発言をしたレザにしても同じ事である。
「勿論僕も救うつもりだよ。ただ、治癒魔法に頼るのは無理ってだけだ。もっと他の方法を探そう。」
「他の方法……。治癒魔法が効かないとなると、シャル達がいつもやってた暗闇にガジュを投げ込んで【闇の王】を発動させて自然治癒って方法も意味をなさなそうですね。」
一同が手詰まり感を覚え、相変わらず目を覚さないガジュの体を見つめる。
そんな中、たった一人だけが平気な顔で解決策を考え続けていた。
「よし!じゃあこの生意気な子をお手本にしようよ。」
「くっ!離せ!腕が、千切れる!」」
横にいた歪な体の少女の腕を掴み、ユンはいつものニヤニヤした笑みを浮かべ始める。魔族は人の常識を超えてくる。ならばそれを利用してやれば良いだけだ。
「ジュノって元々首だけの状態で見つかったんでしょ?つまり魔族は核となる部分を壊されない限り四肢の欠損ぐらいは何ともないわけだよ。そしてその常識は多分、魔族と契約した人間にも適応される。違う?ジャスティス。」
「その通り!中には虚弱な魔族もいるが、概ねその認識で間違っていないはずだよ!」
シャルルの背後から突如姿を現したジャスティスがそう答え、ユンの口角が上がる。
「だ、そうだからさ。まずは僕らを襲おうとしている魔族から適当なのをとっ捕まえて、ガジュと契約させよう。そうすれば少なくともある程度は回復するはず。右腕まで戻るかはまた別の話だけれど、やらないよりはマシでしょ。」
「それはそうでしょうが、そんな事が出来るんですか?ジャスティスのように善良な魔族だからこそこうやって和解できていますが、シャル達を追って来ているような魔族が大人しくガジュと契約するとは思えません。」
ジャスティスを顕現させたシャルルから最もな指摘が飛び、一同がユンの顔を見つめる。その横ではキュキュが静かに俯き、ユンは相変わらず笑みを保っていた。
「世の中の契約ってものは半分が合理的な話し合いによるもの、そしてもう半分は力によって強制されたものだよ。魔族だって死にたくはないはず。ギタギタにぶん殴った後、このまま死ぬかガジュと契約するかを選ばせれば大人しくなると思わない?」
「無茶苦茶な発想だな……。」
「僕らはこういうことばかりやっているからね!なんせ僕らは犯罪者なんだもの!」
『クリミナル』の面々からすれば、これぐらいの非道な行いはいつものこと。だが『カイオス』からすれば驚くべき外道ぶりだったのだろう。可愛い顔をしながら暴力を示唆するユンを見て、気まずい空気が流れていく。
だが、感情と理論は別だ。数秒もしないうちにハクア達も提案を受け入れ、重い腰を上げる。
「分かった。その作戦で行こう。ただ全員で魔族を探すのはあまりにリスクが高い。あくまで目標は試練の迷宮第四層。一方は前に進みつつ、もう一方で魔族を捜索しよう。」
「うん、僕もそれで良いと思うよ。ジュノ、魔族の気配はどっちにあるの?」
「細かくは分からない。すぐ近くにあるのと、一層の方からするのと。」
「じゃあ僕とハクアで一層に引き返えそう。他の面子はこのまま迷宮を進んで道を切り開いておいてよ。」
「二人だけで良いのか?」
「うん。というか別に僕一人でも問題ないけど、ガジュを運ぶ役が居るからね。この中ならハクアが一番その役に向いてるでしょ。」
ガジュのような大柄の男を運ぶとなると、ラナーナやキュキュ、ジュノでは少し無理がある。レザは一応男だが貧弱だし、シャルルのスキルはダンジョン攻略組の緊急避難用として確保しておくべきだ。そうなると残るのは一人だけ。
ガジュの元相棒と現相棒が手を組み、ただ一人の仲間を救うべく歩みを進めていく。
試練の迷宮二層入り口。階段を降りたばかりの場所なだけあって、少し広くなったその場所で、ハクア達はガジュを取り囲んでいた。
つい先ほどまで横にいたはずのガジュが突如姿を消したかと思えば、右肩から先を失ったボロボロの状態で現れた。どう見ても、異常な何かが働きかけている。
「一応息はしていそうですが、意識はなさそうですね。腕はこれ……切られたというより崩れたという表現の方が正しいでしょうか。」
「まぁ間違いなく魔族の仕業だろうねぇ。やっぱりここにも来てるのかぁ。」
白目を剥いてぶっ倒れているガジュにシャルルとユンが近づき、患部を確かめる。突如姿が消えたことも含め、明らかに人智を超えた傷。
普通なら困惑する所だろうが、一同の頭にはこうしたことを可能にする存在が深く刻み込まれている。
「ジュノ、ある程度魔族の気配は察せるんだろ?近くに魔族はいるのか。」
「いる、というかいっぱい良すぎていて気にも留めてなかった。そこの二人が契約してる魔族達は勿論、後四匹ぐらいは気配があったけどついさっき一つ消えた。丁度、この人がいなくなった時ぐらい。」
「ガジュは魔族に攫われ相打ちした、って考えるのが妥当かな。取り敢えず治癒をかけてみるよ。治癒の精霊、頑張ってくれ。」
他の精霊と違い、治癒の精霊は非常に従順で効率的。適性さえあれば、一等簡単に使うことが出来る。
レザはガジュの失われた腕に全力で治癒魔法をかけていく。これだけの治癒魔法であれば、通常の欠損であれば簡単に治癒できるだろう。だが、ガジュの腕は欠片も戻らない。
「ううん……これは無理だね。治癒魔法はあくまでも怪我を治す物。ガジュのこれは怪我のレベルを超えてるよ。」
「で、でも、諦めるんですか?ガ、ガジュさんは……だ、大事な仲間です。」
「この獣人の子の言う通りよ。何だかよく分からないけど、私達はガジュと色々イザコザを経てるのよ?こんな所で見捨てる事は出来ないわ。」
ラナーナの歯切れが妙に悪いのは、相変わらず何も教えられていないからだろう。知らぬ間にガジュと決別し、知らぬ間に和解して、知らぬ間にここに来ている。
そんな彼女であっても救おうと思うほど、ガジュは周囲から信頼されている人間だ。
それは冷淡な発言をしたレザにしても同じ事である。
「勿論僕も救うつもりだよ。ただ、治癒魔法に頼るのは無理ってだけだ。もっと他の方法を探そう。」
「他の方法……。治癒魔法が効かないとなると、シャル達がいつもやってた暗闇にガジュを投げ込んで【闇の王】を発動させて自然治癒って方法も意味をなさなそうですね。」
一同が手詰まり感を覚え、相変わらず目を覚さないガジュの体を見つめる。
そんな中、たった一人だけが平気な顔で解決策を考え続けていた。
「よし!じゃあこの生意気な子をお手本にしようよ。」
「くっ!離せ!腕が、千切れる!」」
横にいた歪な体の少女の腕を掴み、ユンはいつものニヤニヤした笑みを浮かべ始める。魔族は人の常識を超えてくる。ならばそれを利用してやれば良いだけだ。
「ジュノって元々首だけの状態で見つかったんでしょ?つまり魔族は核となる部分を壊されない限り四肢の欠損ぐらいは何ともないわけだよ。そしてその常識は多分、魔族と契約した人間にも適応される。違う?ジャスティス。」
「その通り!中には虚弱な魔族もいるが、概ねその認識で間違っていないはずだよ!」
シャルルの背後から突如姿を現したジャスティスがそう答え、ユンの口角が上がる。
「だ、そうだからさ。まずは僕らを襲おうとしている魔族から適当なのをとっ捕まえて、ガジュと契約させよう。そうすれば少なくともある程度は回復するはず。右腕まで戻るかはまた別の話だけれど、やらないよりはマシでしょ。」
「それはそうでしょうが、そんな事が出来るんですか?ジャスティスのように善良な魔族だからこそこうやって和解できていますが、シャル達を追って来ているような魔族が大人しくガジュと契約するとは思えません。」
ジャスティスを顕現させたシャルルから最もな指摘が飛び、一同がユンの顔を見つめる。その横ではキュキュが静かに俯き、ユンは相変わらず笑みを保っていた。
「世の中の契約ってものは半分が合理的な話し合いによるもの、そしてもう半分は力によって強制されたものだよ。魔族だって死にたくはないはず。ギタギタにぶん殴った後、このまま死ぬかガジュと契約するかを選ばせれば大人しくなると思わない?」
「無茶苦茶な発想だな……。」
「僕らはこういうことばかりやっているからね!なんせ僕らは犯罪者なんだもの!」
『クリミナル』の面々からすれば、これぐらいの非道な行いはいつものこと。だが『カイオス』からすれば驚くべき外道ぶりだったのだろう。可愛い顔をしながら暴力を示唆するユンを見て、気まずい空気が流れていく。
だが、感情と理論は別だ。数秒もしないうちにハクア達も提案を受け入れ、重い腰を上げる。
「分かった。その作戦で行こう。ただ全員で魔族を探すのはあまりにリスクが高い。あくまで目標は試練の迷宮第四層。一方は前に進みつつ、もう一方で魔族を捜索しよう。」
「うん、僕もそれで良いと思うよ。ジュノ、魔族の気配はどっちにあるの?」
「細かくは分からない。すぐ近くにあるのと、一層の方からするのと。」
「じゃあ僕とハクアで一層に引き返えそう。他の面子はこのまま迷宮を進んで道を切り開いておいてよ。」
「二人だけで良いのか?」
「うん。というか別に僕一人でも問題ないけど、ガジュを運ぶ役が居るからね。この中ならハクアが一番その役に向いてるでしょ。」
ガジュのような大柄の男を運ぶとなると、ラナーナやキュキュ、ジュノでは少し無理がある。レザは一応男だが貧弱だし、シャルルのスキルはダンジョン攻略組の緊急避難用として確保しておくべきだ。そうなると残るのは一人だけ。
ガジュの元相棒と現相棒が手を組み、ただ一人の仲間を救うべく歩みを進めていく。
3
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話
桜井正宗@オートスキル第1巻発売中
青春
――結婚しています!
それは二人だけの秘密。
高校二年の遙と遥は結婚した。
近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。
キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。
ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。
*結婚要素あり
*ヤンデレ要素あり
裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね
魚夢ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。
元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、
王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。
代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。
父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。
カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。
その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。
ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。
「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」
そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。
もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。
無能なので辞めさせていただきます!
サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。
マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。
えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって?
残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、
無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって?
はいはいわかりました。
辞めますよ。
退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。
自分無能なんで、なんにもわかりませんから。
カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。
最上級のパーティで最底辺の扱いを受けていたDランク錬金術師は新パーティで成り上がるようです(完)
みかん畑
ファンタジー
最上級のパーティで『荷物持ち』と嘲笑されていた僕は、パーティからクビを宣告されて抜けることにした。
在籍中は僕が色々肩代わりしてたけど、僕を荷物持ち扱いするくらい優秀な仲間たちなので、抜けても問題はないと思ってます。
ダンジョンでオーブを拾って『』を手に入れた。代償は体で払います
とみっしぇる
ファンタジー
スキルなし、魔力なし、1000人に1人の劣等人。
食っていくのがギリギリの冒険者ユリナは同じ境遇の友達3人と、先輩冒険者ジュリアから率のいい仕事に誘われる。それが罠と気づいたときには、絶対絶命のピンチに陥っていた。
もうあとがない。そのとき起死回生のスキルオーブを手に入れたはずなのにオーブは無反応。『』の中には何が入るのだ。
ギリギリの状況でユリアは瀕死の仲間のために叫ぶ。
ユリナはスキルを手に入れ、ささやかな幸せを手に入れられるのだろうか。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる