追放投獄全部乗り越えて復讐を、執着無双の脱獄者〜夜だけ最強?いえ闇の中ならいつでも最強です〜

鮎川重

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第六章 試練の迷宮

111.残された仲間達

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「おいガジュ!生きてるか!」

 試練の迷宮二層入り口。階段を降りたばかりの場所なだけあって、少し広くなったその場所で、ハクア達はガジュを取り囲んでいた。
 つい先ほどまで横にいたはずのガジュが突如姿を消したかと思えば、右肩から先を失ったボロボロの状態で現れた。どう見ても、異常な何かが働きかけている。

「一応息はしていそうですが、意識はなさそうですね。腕はこれ……切られたというより崩れたという表現の方が正しいでしょうか。」
「まぁ間違いなく魔族の仕業だろうねぇ。やっぱりここにも来てるのかぁ。」

 白目を剥いてぶっ倒れているガジュにシャルルとユンが近づき、患部を確かめる。突如姿が消えたことも含め、明らかに人智を超えた傷。
 普通なら困惑する所だろうが、一同の頭にはこうしたことを可能にする存在が深く刻み込まれている。

「ジュノ、ある程度魔族の気配は察せるんだろ?近くに魔族はいるのか。」
「いる、というかいっぱい良すぎていて気にも留めてなかった。そこの二人が契約してる魔族達は勿論、後四匹ぐらいは気配があったけどついさっき一つ消えた。丁度、この人がいなくなった時ぐらい。」
「ガジュは魔族に攫われ相打ちした、って考えるのが妥当かな。取り敢えず治癒をかけてみるよ。治癒の精霊、頑張ってくれ。」

 他の精霊と違い、治癒の精霊は非常に従順で効率的。適性さえあれば、一等簡単に使うことが出来る。
 レザはガジュの失われた腕に全力で治癒魔法をかけていく。これだけの治癒魔法であれば、通常の欠損であれば簡単に治癒できるだろう。だが、ガジュの腕は欠片も戻らない。

「ううん……これは無理だね。治癒魔法はあくまでも怪我を治す物。ガジュのこれは怪我のレベルを超えてるよ。」
「で、でも、諦めるんですか?ガ、ガジュさんは……だ、大事な仲間です。」
「この獣人の子の言う通りよ。何だかよく分からないけど、私達はガジュと色々イザコザを経てるのよ?こんな所で見捨てる事は出来ないわ。」

 ラナーナの歯切れが妙に悪いのは、相変わらず何も教えられていないからだろう。知らぬ間にガジュと決別し、知らぬ間に和解して、知らぬ間にここに来ている。
 そんな彼女であっても救おうと思うほど、ガジュは周囲から信頼されている人間だ。
 それは冷淡な発言をしたレザにしても同じ事である。

「勿論僕も救うつもりだよ。ただ、治癒魔法に頼るのは無理ってだけだ。もっと他の方法を探そう。」
「他の方法……。治癒魔法が効かないとなると、シャル達がいつもやってた暗闇にガジュを投げ込んで【闇の王ナイトメア】を発動させて自然治癒って方法も意味をなさなそうですね。」

 一同が手詰まり感を覚え、相変わらず目を覚さないガジュの体を見つめる。
 そんな中、たった一人だけが平気な顔で解決策を考え続けていた。

「よし!じゃあこの生意気な子をお手本にしようよ。」
「くっ!離せ!腕が、千切れる!」」

 横にいた歪な体の少女の腕を掴み、ユンはいつものニヤニヤした笑みを浮かべ始める。魔族は人の常識を超えてくる。ならばそれを利用してやれば良いだけだ。

「ジュノって元々首だけの状態で見つかったんでしょ?つまり魔族は核となる部分を壊されない限り四肢の欠損ぐらいは何ともないわけだよ。そしてその常識は多分、魔族と契約した人間にも適応される。違う?ジャスティス。」
「その通り!中には虚弱な魔族もいるが、概ねその認識で間違っていないはずだよ!」
 
 シャルルの背後から突如姿を現したジャスティスがそう答え、ユンの口角が上がる。

「だ、そうだからさ。まずは僕らを襲おうとしている魔族から適当なのをとっ捕まえて、ガジュと契約させよう。そうすれば少なくともある程度は回復するはず。右腕まで戻るかはまた別の話だけれど、やらないよりはマシでしょ。」
「それはそうでしょうが、そんな事が出来るんですか?ジャスティスのように善良な魔族だからこそこうやって和解できていますが、シャル達を追って来ているような魔族が大人しくガジュと契約するとは思えません。」

 ジャスティスを顕現させたシャルルから最もな指摘が飛び、一同がユンの顔を見つめる。その横ではキュキュが静かに俯き、ユンは相変わらず笑みを保っていた。

「世の中の契約ってものは半分が合理的な話し合いによるもの、そしてもう半分は力によって強制されたものだよ。魔族だって死にたくはないはず。ギタギタにぶん殴った後、このまま死ぬかガジュと契約するかを選ばせれば大人しくなると思わない?」
「無茶苦茶な発想だな……。」
「僕らはこういうことばかりやっているからね!なんせ僕らは犯罪者クリミナルなんだもの!」

『クリミナル』の面々からすれば、これぐらいの非道な行いはいつものこと。だが『カイオス』からすれば驚くべき外道ぶりだったのだろう。可愛い顔をしながら暴力を示唆するユンを見て、気まずい空気が流れていく。
 だが、感情と理論は別だ。数秒もしないうちにハクア達も提案を受け入れ、重い腰を上げる。

「分かった。その作戦で行こう。ただ全員で魔族を探すのはあまりにリスクが高い。あくまで目標は試練の迷宮第四層。一方は前に進みつつ、もう一方で魔族を捜索しよう。」
「うん、僕もそれで良いと思うよ。ジュノ、魔族の気配はどっちにあるの?」
「細かくは分からない。すぐ近くにあるのと、一層の方からするのと。」
「じゃあ僕とハクアで一層に引き返えそう。他の面子はこのまま迷宮を進んで道を切り開いておいてよ。」
「二人だけで良いのか?」
「うん。というか別に僕一人でも問題ないけど、ガジュを運ぶ役が居るからね。この中ならハクアが一番その役に向いてるでしょ。」

 ガジュのような大柄の男を運ぶとなると、ラナーナやキュキュ、ジュノでは少し無理がある。レザは一応男だが貧弱だし、シャルルのスキルはダンジョン攻略組の緊急避難用として確保しておくべきだ。そうなると残るのは一人だけ。

 ガジュの元相棒と現相棒が手を組み、ただ一人の仲間を救うべく歩みを進めていく。
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