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第六章 試練の迷宮
112.月と太陽
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「君は一体……何者なんだ。」
試練の迷宮一層。つい先ほど魔物の死体を積み上げたその場所で、ガジュを背負ったハクアは何気ない疑問をぶつけていた。
一層に引き返した途端に襲ってきた大量の魔物達を、全部まとめて瞬殺したユン。あろうことか彼女の体には一つの傷もついていない。
「最近よく聞かれるんだよねぇその質問。別に何者でもないよ、ただガジュに助けられただけの囚人。」
「そうか……君達は皆ガジュに助けられたんだよな。」
「うん。檻から出して貰った事もそうだけど、シャルちゃんはガジュのお陰で自分を取り戻せたし、キュキュちゃんがあそこまで落ち着きを持てるようになったのもガジュの力だよ。まぁそのせいでシャルちゃんはより一層口煩くなったし、キュキュちゃんは静と騒のギャップが激しくなったから……一長一短だけどね。」
イリシテアでの一件も、キュキュの人格の件も。全てはガジュの無茶苦茶な思考とパワーがもたらした結果だ。その事を理解し、深く感謝しているからこそ、シャルルとキュキュはここまで共に戦っている。元々は臆病な囚人と無垢な看守の関係でしかないあの二人が今二層で共に肩を並べられているのは、ガジュの努力の賜物でしかないだろう。
「君は何か助けられていないのか?」
「僕はまだだね。これからガジュに救ってもらう予定だったのに、こんな無残な姿になっちゃったからちょっと焦ってる。」
「それなら尚更もっとこっちに人を割くべきだったんじゃないか。これだけの死体が転がっていれば俺は十分戦えるが、それでもそっちの仲間の方が優秀だろう。」
「う~ん。これは完全なる直感だけど、ハクアだけを連れてくるべきだと思ったんだよね。冷静に考えてみれば、確かにキュキュちゃんとかも連れてくれば良かったや。」
ユンはたった今片付けた魔物の死体を蹴り飛ばし、追想する。ハクアの火力は間違いなく魅力的だが、言って終えばそれだけだ。三つのスキルを自在に操り、魔族の力まで手にしたキュキュの方がよっぽど役に立つ。
そんなことを思いながら、話はハクアとガジュの関係性へと変わっていく。
「そっちだってガジュとは関係深いんでしょ?僕らは精々数ヶ月の付き合いだけど、そっちは二十五年もあるじゃん。」
「まぁそうだな。昔から頼りになる奴だった。どんな暗闇でも拳を掲げ、何が起ころうと屈せず立ち向かい続ける。」
「それだけ聞くとただの馬鹿だね。まぁそこがガジュのいい所だけど。」
「だというのに俺はあいつに数え切れない程の非道を働いた。操られていたとはいえ、あってはならない事態だ。」
「本当、嫌になるぐらい真面目だね。時には怠惰なぐらいが物事上手くいくよ?いや、今僕怠惰だから困ってるのか。」
「そうなのか?何か困っているなら言ってくれ。ガジュの仲間なら俺はいくらでも力を貸す。ガジュに頼ると、破壊で全てを解決しようとするからな。」
「それは重々承知だよ。冒険者協会にバーゼ邸にアルカトラに……挙げ始めたキリないもの。って、そんな事を言ってる場合じゃなさそうだ。」
ガジュに救われた者同士、悪口とも称賛とも取れる会話で盛り上がっていると、二人の前に見慣れた煙が現れる。
煙は徐々に形をなし、二つの人影となってユン達の前へと立ちはだかった。
「あぁ……どうしよう兄さん。背後から一思いに殺すつもりだったのにバレてしまったよ!このままじゃ、このままじゃぁぁぁ!
「落ち着け弟よ。俺達は月と太陽。この程度のイレギュラーは受け入れるんだ。その先に、勝利が待っている!」
長い髪を無造作に垂らした黒髪の暗い男と、短い金髪をツンツンに立てた男。実によく似た顔の二匹がユン達の目の前でわちゃわちゃと戯れ、そこに向かってユンが容赦なく殴りかかる。
が、空振り。狙ったはずの黒髪はユンの視界から消え、背後から笑い声が響く。
「はっはっは!やってやった、華麗に騙してやったよ兄さん!僕は失敗の象徴、ムーン。そう簡単に攻撃を当てられると思わない事だね!」
「ふむ。流石にそう簡単に事は運ばないかぁ。ふぐっ!」
完全に戦闘モードに入っていたユンの腹部が音もなく凹み、ただ鮮血だけが口から噴出される。
やはり……魔族は理外の存在だ。
「流石だぞ弟よ!俺は成功の象徴、サン!俺が思い描く全ては、つつがなく成功する!」
今度は金髪が高らかに叫び、血を拭ったユンの眉間に皺が寄る。
そしてその横には、剣を抜いたハクアが並んでいた。遥か遠くガジュを寝かせ、素早く戦闘に参加しにきたのだろう。こちらはこちらで、判断が早い。
「あぁ、ムカつく。意味不明な攻撃しないでくれるかなぁ。ユンちゃん、ただでさえガジュがやられて気が立ってるんだからさぁ。」
「全部倒せば解決だ。さっさと片付けて、ガジュを救うぞ。」
「そうしよう。こいつらも可哀想だね。僕らが相手な時点で、負けは確定だ。」
「「はっはっは!僕(俺)達は月と太陽!二者同一となりて、世界に尽くすんだ!!!」」
裏切った側と、裏切られた男に救われた側。最強の二人は後方で寝転がった仲間を救うべく、牙を剥く。
試練の迷宮一層。つい先ほど魔物の死体を積み上げたその場所で、ガジュを背負ったハクアは何気ない疑問をぶつけていた。
一層に引き返した途端に襲ってきた大量の魔物達を、全部まとめて瞬殺したユン。あろうことか彼女の体には一つの傷もついていない。
「最近よく聞かれるんだよねぇその質問。別に何者でもないよ、ただガジュに助けられただけの囚人。」
「そうか……君達は皆ガジュに助けられたんだよな。」
「うん。檻から出して貰った事もそうだけど、シャルちゃんはガジュのお陰で自分を取り戻せたし、キュキュちゃんがあそこまで落ち着きを持てるようになったのもガジュの力だよ。まぁそのせいでシャルちゃんはより一層口煩くなったし、キュキュちゃんは静と騒のギャップが激しくなったから……一長一短だけどね。」
イリシテアでの一件も、キュキュの人格の件も。全てはガジュの無茶苦茶な思考とパワーがもたらした結果だ。その事を理解し、深く感謝しているからこそ、シャルルとキュキュはここまで共に戦っている。元々は臆病な囚人と無垢な看守の関係でしかないあの二人が今二層で共に肩を並べられているのは、ガジュの努力の賜物でしかないだろう。
「君は何か助けられていないのか?」
「僕はまだだね。これからガジュに救ってもらう予定だったのに、こんな無残な姿になっちゃったからちょっと焦ってる。」
「それなら尚更もっとこっちに人を割くべきだったんじゃないか。これだけの死体が転がっていれば俺は十分戦えるが、それでもそっちの仲間の方が優秀だろう。」
「う~ん。これは完全なる直感だけど、ハクアだけを連れてくるべきだと思ったんだよね。冷静に考えてみれば、確かにキュキュちゃんとかも連れてくれば良かったや。」
ユンはたった今片付けた魔物の死体を蹴り飛ばし、追想する。ハクアの火力は間違いなく魅力的だが、言って終えばそれだけだ。三つのスキルを自在に操り、魔族の力まで手にしたキュキュの方がよっぽど役に立つ。
そんなことを思いながら、話はハクアとガジュの関係性へと変わっていく。
「そっちだってガジュとは関係深いんでしょ?僕らは精々数ヶ月の付き合いだけど、そっちは二十五年もあるじゃん。」
「まぁそうだな。昔から頼りになる奴だった。どんな暗闇でも拳を掲げ、何が起ころうと屈せず立ち向かい続ける。」
「それだけ聞くとただの馬鹿だね。まぁそこがガジュのいい所だけど。」
「だというのに俺はあいつに数え切れない程の非道を働いた。操られていたとはいえ、あってはならない事態だ。」
「本当、嫌になるぐらい真面目だね。時には怠惰なぐらいが物事上手くいくよ?いや、今僕怠惰だから困ってるのか。」
「そうなのか?何か困っているなら言ってくれ。ガジュの仲間なら俺はいくらでも力を貸す。ガジュに頼ると、破壊で全てを解決しようとするからな。」
「それは重々承知だよ。冒険者協会にバーゼ邸にアルカトラに……挙げ始めたキリないもの。って、そんな事を言ってる場合じゃなさそうだ。」
ガジュに救われた者同士、悪口とも称賛とも取れる会話で盛り上がっていると、二人の前に見慣れた煙が現れる。
煙は徐々に形をなし、二つの人影となってユン達の前へと立ちはだかった。
「あぁ……どうしよう兄さん。背後から一思いに殺すつもりだったのにバレてしまったよ!このままじゃ、このままじゃぁぁぁ!
「落ち着け弟よ。俺達は月と太陽。この程度のイレギュラーは受け入れるんだ。その先に、勝利が待っている!」
長い髪を無造作に垂らした黒髪の暗い男と、短い金髪をツンツンに立てた男。実によく似た顔の二匹がユン達の目の前でわちゃわちゃと戯れ、そこに向かってユンが容赦なく殴りかかる。
が、空振り。狙ったはずの黒髪はユンの視界から消え、背後から笑い声が響く。
「はっはっは!やってやった、華麗に騙してやったよ兄さん!僕は失敗の象徴、ムーン。そう簡単に攻撃を当てられると思わない事だね!」
「ふむ。流石にそう簡単に事は運ばないかぁ。ふぐっ!」
完全に戦闘モードに入っていたユンの腹部が音もなく凹み、ただ鮮血だけが口から噴出される。
やはり……魔族は理外の存在だ。
「流石だぞ弟よ!俺は成功の象徴、サン!俺が思い描く全ては、つつがなく成功する!」
今度は金髪が高らかに叫び、血を拭ったユンの眉間に皺が寄る。
そしてその横には、剣を抜いたハクアが並んでいた。遥か遠くガジュを寝かせ、素早く戦闘に参加しにきたのだろう。こちらはこちらで、判断が早い。
「あぁ、ムカつく。意味不明な攻撃しないでくれるかなぁ。ユンちゃん、ただでさえガジュがやられて気が立ってるんだからさぁ。」
「全部倒せば解決だ。さっさと片付けて、ガジュを救うぞ。」
「そうしよう。こいつらも可哀想だね。僕らが相手な時点で、負けは確定だ。」
「「はっはっは!僕(俺)達は月と太陽!二者同一となりて、世界に尽くすんだ!!!」」
裏切った側と、裏切られた男に救われた側。最強の二人は後方で寝転がった仲間を救うべく、牙を剥く。
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