追放投獄全部乗り越えて復讐を、執着無双の脱獄者〜夜だけ最強?いえ闇の中ならいつでも最強です〜

鮎川重

文字の大きさ
114 / 124
第六章 試練の迷宮

113.作り物の連携

しおりを挟む
「ゆ、ユンさん達は、大丈夫でしょうか。」

 試練の迷宮二層。魔物を蹴散らしながら、キュキュが不安げに呟く。試練の迷宮二層といえど、こちらは魔族契約者二人と黒曜等級冒険者二人、そして魔族が一匹。苦戦する要素などどこにもなく、戦いながら会話するぐらいは序の口である。

「大丈夫だと思いますよ。ユンはやる気さえ出せば強いですし、ハクアもガジュと同じく環境を選ぶタイプですがあれだけ魔物の死体があれば十分戦えるでしょう。」
「そうとは限らない。あの、ユノ様の紛い物、明らかに力を失ってる。」
「失ってる?どういうことだいジュノ。」

 魔物の死体を弄びながら放たれたジュノの呟きに、一同の足が止まる。

「さっき腕を掴まれた時に思った。ずっと紛い物からただよっていた魔族の匂いが消えてる。」
「魔族の匂い?何ですか、ユンってもしかして魔族と契約してるんですか?」
「知らない。けどそれは違うと思う。契約してる人はもっと匂いが薄い。なんていうか、私の匂い。」

 私の匂い。その言葉を聞き、更に頭の疑問符が増えていく。
 魔族であるジュノと同じ匂い。正確な意味はわからないが、多分彼女の直感は当たっている。シャルル達はそれだけを確信し、踵を返す。

「シャル達は一応ユンを助けに行きます。三人は三層に降りる階段の辺りで一度待って下さい。ガジュに加えてユンまで戦闘不能に陥るような事があれば流石に攻略続行は不可能です。シャルのスキルで一旦帰還しましょう。」
「分かった。任せたよ。」
「は、はい!い、行きましょうシャルルさん!」

 相手がユンとなるとキュキュのやる気も違う。二人は歩いて来た道を逆行し、仲間達の救援に向かっていく。

◇◇◇

「障壁。」
「おっ、ナイスハクア!」

 一方試練の迷宮一層。サンとムーンと対峙していたユン達は、苦戦を強いられていた。

「はっはっは!流石だぞ我が弟よ!俺達が二人集まれば無敵!」
「う~んめんどくさいなぁ……。時間があんまりないっていうのに。
「こいつらの連携力は凄まじいな。このままだとジリ貧だぞ。」

 神出鬼没、自分の幻影を出し続けてユン達の目を欺いているムーンと違い、サンは直立不動。奥にいるサンを殴ろうとしても、ムーンに邪魔をされ、ムーンを殴ろうとすると幻影で上手く躱される。それだけならただ疲労するだけだが、気を抜くとサンが高火力のレーザービームを放ってくるから回避も全力である。
 ユン達の身体能力とハクアの魔法があるから何とか耐えれているが、決定打はないままだ。

「よし、ここは定石通りに行こう。連携には連携。ハクア、僕のことをガジュだと思って戦ってよ。」
「確かに俺とガジュの連携ならこいつらの連携を上回れるだろうが、そんなこと出来るのか?君は身体能力こそ高そうだが、火力はガジュに劣るだろ。」
「本気を出すから大丈夫。まぁ、こいつを倒した後に僕がぶっ倒れてたら介抱して欲しいけどね。多分、僕はこれが最期だから。」
「最期……?」

 ハクアの問いかけなど気にも止めず、ユンは目の色を変えて突撃していく。その体からは煙が吹き出し、後ろ姿で分かる程の殺気を放っていた。

「まず一匹。」
「ぐふっ!」
「弟!?大丈夫か!」

 そしてその数秒後。ユンの拳はムーンの幻影に命中し、そこから暴風が吹き荒れる。発生した暴風は幻影を吹き飛ばし、奥で嘲笑っていたムーン本体の体をも打ち砕いていく。

 全てを制圧する圧倒的な力。ハクアは、ユンの小さな背中に幼少期にずっと追いかけていたガジュの面影を見出していた。

「何が何だかわからないが……これなら合わせられる。閃光。」

 ユギ村にいた頃はハクアが、村を出てからはガジュが。互いに雑魚同然の時期があったが故に、この二人がまともに連携を取って戦った事はほとんどない。だが経験がないからこそ、ずっと想定していた。
 ガジュはいい意味でも悪い意味でもパワーだけの存在。攻撃が当たりさえすえばどんな敵だろうと打ち砕けるし、攻撃を多少食らっても無傷で拳を振り抜ける。
 そんなガジュに最も必要なサポートは囮役。ハクアはそう思考し、体を高速化させて走り出す。

「あぁ嘆かわしい!我が弟を……!我が弟をぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」
「反射。」

 片割れを失ったことで狂乱し、レーザービームを乱射するサン。ハクアは咄嗟に魔法で反射してみたが、あまりにも無秩序な攻撃故に軌道はぐちゃぐちゃ。ありとあらゆる方向へと光線が飛び交い、狭い迷宮内は激しい光に包まれていく。
 ここまで視界がごちゃつけば、圧倒的パワーでゴリ押せる。

「二匹目っと!」

 乱反射するレーザービームを完璧に回避しながら、光に紛れて現れたユンがサンの腹部を殴り飛ばし、ハクアの前には二匹の魔族が瀕死で横たわる。

「はぁ……いい感じに二人ともボコれたね。よし、後はこいつとガジュを契約させよう。」
「あ、あぁ。それで、どっちと契約させるんだ。」
「う~んどっちでもいいけど、せっかくだし片方はハクアが契約したら?サンとムーンがニコイチ、ガジュとハクアもニコイチ。丁度いいじゃん。」

 とにかくガジュを連れてこなければ話は始まらない。ハクアが奥に寝かせていたガジュを拾い上げ、倒れた魔族の横に転がす。そしてその横では、いつになく息を荒げ、髪色より青ざめた顔のユンがヘラヘラと笑っていた。

「無事に契約出来るならそれでもいいが、本当に出来るのか?脅迫すると言っていたが、もうこいつらに意識はないぞ。」
「だいじょーぶだいじょーぶ。完全無欠な僕にかかれば余裕よ。おいサンとムーン、お前はガジュとハクアとそれぞれ契約しろ。言っておくが拒否権はない。これは……世界ワールドからの命令だ。」

 その言葉と共に二匹の魔族は煙と化し、ハクアとガジュと同化していく。

 そしてもう一つ。

 ユンの体からも煙が吹き出し、起き上がったガジュの代わりに一つの抜け殻が転がっていた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

酔っぱらったせいで、勇者パーティーを洗脳してしまった

透けてるブランディシュカ
ファンタジー
悪友のせいで酔ったら。(※重複投稿しています)仲仁へび

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話

桜井正宗@オートスキル第1巻発売中
青春
 ――結婚しています!  それは二人だけの秘密。  高校二年の遙と遥は結婚した。  近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。  キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。  ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。 *結婚要素あり *ヤンデレ要素あり

裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね

魚夢ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。 元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、 王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。 代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。 父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。 カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。 その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。 ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。 「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」 そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。 もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。 

無能なので辞めさせていただきます!

サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。 マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。 えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって? 残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、 無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって? はいはいわかりました。 辞めますよ。 退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。 自分無能なんで、なんにもわかりませんから。 カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。

最上級のパーティで最底辺の扱いを受けていたDランク錬金術師は新パーティで成り上がるようです(完)

みかん畑
ファンタジー
最上級のパーティで『荷物持ち』と嘲笑されていた僕は、パーティからクビを宣告されて抜けることにした。 在籍中は僕が色々肩代わりしてたけど、僕を荷物持ち扱いするくらい優秀な仲間たちなので、抜けても問題はないと思ってます。

ダンジョンでオーブを拾って『』を手に入れた。代償は体で払います

とみっしぇる
ファンタジー
スキルなし、魔力なし、1000人に1人の劣等人。 食っていくのがギリギリの冒険者ユリナは同じ境遇の友達3人と、先輩冒険者ジュリアから率のいい仕事に誘われる。それが罠と気づいたときには、絶対絶命のピンチに陥っていた。 もうあとがない。そのとき起死回生のスキルオーブを手に入れたはずなのにオーブは無反応。『』の中には何が入るのだ。 ギリギリの状況でユリアは瀕死の仲間のために叫ぶ。 ユリナはスキルを手に入れ、ささやかな幸せを手に入れられるのだろうか。

処理中です...