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第六章 試練の迷宮
114.ユンを守ろう
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「あぁ?なんでこいつがぶっ倒れてるんだ?俺、お前らに助けられたんじゃないのかよ。」
サンと契約し、生気を取り戻したガジュ。右腕も元に戻り、完全にいつもの調子を取り戻したガジュは、横に転がる仲間を眺めいた。
思えば寝ている所はよく見るものの、こうやって死んだように倒れているユンを見るのは初めて。ガジュはユンのアホヅラに近づき、呼吸を確認する。
「息は……してるな。外傷もないし疲れて寝てるだけか?おいハクア、いい加減に状況を説明してくれ。」
「あ、あぁ……。」
「何だよ口籠もって。お前とこいつがここにいるってことは、二人が俺を助けてくれたんだろ?一体何が起きたんだよ。」
「魔族と、契約したんだ。俺がムーン、お前はサンという魔族と。」
「なるほど、この体の違和感は魔族か。」
ガジュがタワーを殴りつけた時、自分の体が崩壊するであろうことはなんとなく理解していた。タワーの崩壊能力は布程度で防げない、だがどうなろうと仲間達が助けてくれると確信していたから拳を振り抜いたのである。
しかし、まさか魔族と契約させられるとは。随分と無茶苦茶な方法で救われたものだが、まぁユンが考えたのであれば納得のいく話だ。
しかしここでユンがぶっ倒れている理由はわからない。魔族は二匹居たようだが、ユンとハクアが組んだとなれば苦戦する理由はないはずだ。現に二人に傷などないし、あるのはただ無傷で倒れたユンだけだ。
放っておけば起きて来そうなものだが、もしこれが魔族の攻撃による影響であれば対策を考えなければならない。ガジュがそう思ってユンの顔をペシペシと叩いていると、背後から剣が降りかかる。
咄嗟に受け止めはしたが、この剣圧は本気の殺意だ。
「何しやがるハクア!魔族の影響か!?」
「違う……。これは100%俺の意志だ。そしてその子は、殺さなければならない存在だ!」
「はぁ……?何なんだよ一体、病み上がりに意味わかんねぇこと言うんじゃねぇよ。」
「そこをどけガジュ。そいつの正体は世界。俺達が……ずっと追い求めていた存在だ。」
容赦なく剣を振り回し、ユンを殺そうとするハクア。その目はいつも通りの澄んだ色で、ガジュが追放されたあの日とは違う。ハクアはあくまでも正気のまま、この凶行に至っているのだろう。
ワールド。
ガジュ達が追い求めていた存在であり、出会う魔族がことごとく名を挙げる魔族の祖。
ユンがそれだというのであればまぁ確かに問題だが、とても信じられる話ではない。ガジュはハクアの剣を素手で受け止め、左手で殴り飛ばす。
「よく分からんがこいつは俺の仲間であり、たった今恩人になったんだ。それに俺はこいつから助けを求められてる。俺が息を吹き返した以上、手出しはさせねぇぞ。」
「お前は仲間を信じすぎだ!俺達は、そいつのせいで!」
互いに自分の体から溢れる新たな力を使いこなせていないのだろう。【魔法剣】も【闇の王】も発動されず、ただ純粋な力のみでの殺し合いが幕を開け、狭い一層に爆音が鳴り響き始める。
それを聞きつけてか、ガジュ達の近くには足音が二つ増えていた。
「ユ、ユンさん……?だ、大丈夫ですかユンさん!」
「ガジューーー!!!ハクアー!!!止めなさーーーい!!!」
常人ならともかく。シャルルの手にかかればガジュとハクアの喧嘩を止めることなど朝飯前。二層の方から現れたシャルルの【転移】によってガジュとハクアは天井に叩きつけられる。
数秒後、一瞬のうちに鎮圧された二人はユンの横に正座させられていた。
「何があったんですか一体。どういう理由があろうと、仲間内での殺し合いは正義に反しますよ。」
「ハクアが急に暴れ出したんだ。なんでもユンの正体がワールドだとかなんとか……。」
「ガジュを起こす寸前に彼女が自分の口で言ったことだ。『これはワールドからの命令だ』と。」
「ただの戯言だろ。お前が操られた時ユンはアルカトラにいたし、それからも散々魔族と戦闘してるんだぞ?こいつがワールドなら俺達の脱獄生活は何になるんだ!」
正座しながらも言い合いを続ける両名。その姿を見ながら、聡明なシャルルは天を仰いでいた。
「……シャル達が引き返してきたのは、ジュノから『ユンの力が弱まっている』と聞いたからです。加えて、魔族である彼女曰く、ユンからは自分と同じ匂いがするとも聞いています。ですから……その、ありえない話ではないかと。」
「なっ!シャルルまでそっち派かよ!こいつがワールドなんてあり得る訳ないだろ!キュキュ!お前ユンと仲いいだろ!こいつは、そんな奴じゃないよな!」
「う、え、あ、その……。わ、私がジャッジメントと契約した時、ユンさんは魔族に契約を強制させてました。さ、最初はただの脅迫なのかと思いましたけど……も、もしかしたらそういう能力なのかもしれません。」
「は、はぁ……?あいつ脅迫したなんて言ってなかったぞ。もっと気軽なノリだったんじゃ……。」
「う、嘘です……。ゆ、ユンさんはちょくちょく嘘を付いてます。」
ユンは間違いなく仲間だ。ハクアがどれだけ世迷言を言おうと、シャルルとキュキュだけはこちらの味方をすると思っていた。
そんなガジュの想像は軽く打ち砕かれ、疑念に満ちた瞳がユンに向けられる。
この小さな頭では、この四面楚歌な状況を受け入れられない。
「知るか!こいつが魔族だろうと何だろうと、こいつは俺を助け、俺に助けを求めてる!お前らがこいつを殺したいなら好きにしやがれ!俺は全力で、こいつを守る!」
「殺そうだなんて言っていません!シャルはただ……!」
ユンが何を予見して自分に助けを求めたのかは分からない。だがこの状況はどう見ても窮地であり、救えるのはガジュしかいない。
ガジュはユンの体を担ぎ上げ、拳を握る。怠惰なユンはよくガジュの背中に乗っていたが、ここまで体重が軽いのは初めてだろう。
そしてその軽い体は、ゆっくりと動き出す。
「ふぇ……。皆何やってんの?うわ、シャルちゃん泣きそうじゃん。駄目だよガジュ、女の子には優しくしないと。」
仲間達の葛藤も、疑念も。その全てを気にも止めず、ユンはガジュの背中でヘラヘラと笑っていた。
サンと契約し、生気を取り戻したガジュ。右腕も元に戻り、完全にいつもの調子を取り戻したガジュは、横に転がる仲間を眺めいた。
思えば寝ている所はよく見るものの、こうやって死んだように倒れているユンを見るのは初めて。ガジュはユンのアホヅラに近づき、呼吸を確認する。
「息は……してるな。外傷もないし疲れて寝てるだけか?おいハクア、いい加減に状況を説明してくれ。」
「あ、あぁ……。」
「何だよ口籠もって。お前とこいつがここにいるってことは、二人が俺を助けてくれたんだろ?一体何が起きたんだよ。」
「魔族と、契約したんだ。俺がムーン、お前はサンという魔族と。」
「なるほど、この体の違和感は魔族か。」
ガジュがタワーを殴りつけた時、自分の体が崩壊するであろうことはなんとなく理解していた。タワーの崩壊能力は布程度で防げない、だがどうなろうと仲間達が助けてくれると確信していたから拳を振り抜いたのである。
しかし、まさか魔族と契約させられるとは。随分と無茶苦茶な方法で救われたものだが、まぁユンが考えたのであれば納得のいく話だ。
しかしここでユンがぶっ倒れている理由はわからない。魔族は二匹居たようだが、ユンとハクアが組んだとなれば苦戦する理由はないはずだ。現に二人に傷などないし、あるのはただ無傷で倒れたユンだけだ。
放っておけば起きて来そうなものだが、もしこれが魔族の攻撃による影響であれば対策を考えなければならない。ガジュがそう思ってユンの顔をペシペシと叩いていると、背後から剣が降りかかる。
咄嗟に受け止めはしたが、この剣圧は本気の殺意だ。
「何しやがるハクア!魔族の影響か!?」
「違う……。これは100%俺の意志だ。そしてその子は、殺さなければならない存在だ!」
「はぁ……?何なんだよ一体、病み上がりに意味わかんねぇこと言うんじゃねぇよ。」
「そこをどけガジュ。そいつの正体は世界。俺達が……ずっと追い求めていた存在だ。」
容赦なく剣を振り回し、ユンを殺そうとするハクア。その目はいつも通りの澄んだ色で、ガジュが追放されたあの日とは違う。ハクアはあくまでも正気のまま、この凶行に至っているのだろう。
ワールド。
ガジュ達が追い求めていた存在であり、出会う魔族がことごとく名を挙げる魔族の祖。
ユンがそれだというのであればまぁ確かに問題だが、とても信じられる話ではない。ガジュはハクアの剣を素手で受け止め、左手で殴り飛ばす。
「よく分からんがこいつは俺の仲間であり、たった今恩人になったんだ。それに俺はこいつから助けを求められてる。俺が息を吹き返した以上、手出しはさせねぇぞ。」
「お前は仲間を信じすぎだ!俺達は、そいつのせいで!」
互いに自分の体から溢れる新たな力を使いこなせていないのだろう。【魔法剣】も【闇の王】も発動されず、ただ純粋な力のみでの殺し合いが幕を開け、狭い一層に爆音が鳴り響き始める。
それを聞きつけてか、ガジュ達の近くには足音が二つ増えていた。
「ユ、ユンさん……?だ、大丈夫ですかユンさん!」
「ガジューーー!!!ハクアー!!!止めなさーーーい!!!」
常人ならともかく。シャルルの手にかかればガジュとハクアの喧嘩を止めることなど朝飯前。二層の方から現れたシャルルの【転移】によってガジュとハクアは天井に叩きつけられる。
数秒後、一瞬のうちに鎮圧された二人はユンの横に正座させられていた。
「何があったんですか一体。どういう理由があろうと、仲間内での殺し合いは正義に反しますよ。」
「ハクアが急に暴れ出したんだ。なんでもユンの正体がワールドだとかなんとか……。」
「ガジュを起こす寸前に彼女が自分の口で言ったことだ。『これはワールドからの命令だ』と。」
「ただの戯言だろ。お前が操られた時ユンはアルカトラにいたし、それからも散々魔族と戦闘してるんだぞ?こいつがワールドなら俺達の脱獄生活は何になるんだ!」
正座しながらも言い合いを続ける両名。その姿を見ながら、聡明なシャルルは天を仰いでいた。
「……シャル達が引き返してきたのは、ジュノから『ユンの力が弱まっている』と聞いたからです。加えて、魔族である彼女曰く、ユンからは自分と同じ匂いがするとも聞いています。ですから……その、ありえない話ではないかと。」
「なっ!シャルルまでそっち派かよ!こいつがワールドなんてあり得る訳ないだろ!キュキュ!お前ユンと仲いいだろ!こいつは、そんな奴じゃないよな!」
「う、え、あ、その……。わ、私がジャッジメントと契約した時、ユンさんは魔族に契約を強制させてました。さ、最初はただの脅迫なのかと思いましたけど……も、もしかしたらそういう能力なのかもしれません。」
「は、はぁ……?あいつ脅迫したなんて言ってなかったぞ。もっと気軽なノリだったんじゃ……。」
「う、嘘です……。ゆ、ユンさんはちょくちょく嘘を付いてます。」
ユンは間違いなく仲間だ。ハクアがどれだけ世迷言を言おうと、シャルルとキュキュだけはこちらの味方をすると思っていた。
そんなガジュの想像は軽く打ち砕かれ、疑念に満ちた瞳がユンに向けられる。
この小さな頭では、この四面楚歌な状況を受け入れられない。
「知るか!こいつが魔族だろうと何だろうと、こいつは俺を助け、俺に助けを求めてる!お前らがこいつを殺したいなら好きにしやがれ!俺は全力で、こいつを守る!」
「殺そうだなんて言っていません!シャルはただ……!」
ユンが何を予見して自分に助けを求めたのかは分からない。だがこの状況はどう見ても窮地であり、救えるのはガジュしかいない。
ガジュはユンの体を担ぎ上げ、拳を握る。怠惰なユンはよくガジュの背中に乗っていたが、ここまで体重が軽いのは初めてだろう。
そしてその軽い体は、ゆっくりと動き出す。
「ふぇ……。皆何やってんの?うわ、シャルちゃん泣きそうじゃん。駄目だよガジュ、女の子には優しくしないと。」
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